労働者と住民の健康と安全を守り、生じた健康被害を補償することを求めて、
第3回交渉(2012/1/30)の報告
2012年1月30日、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止国民会議、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、反原子力茨城共同行動、原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーンの6団体が呼び掛けた第3回政府交渉に、福島(双葉地方原発反対同盟、平和フォーラム、県教組、福島市内医療機関、まげねど飯舘)、宮城(平和フォーラム、原子力発電を考える石巻市民の会)、東京、大阪、兵庫、奈良、長崎などから約60名が結集しました。政府から、内閣府(生活支援チーム、復興対策本部)、厚労省、環境省、農水省、文科省、消費者庁が出席しました。
18歳以下の医療費無料化の支援見送りに抗議し、撤回を求める
冒頭に、国が「福島県の18歳以下の医療費無料化」対して最終的に支援を見送る方針を県に伝えたことに対する「抗議と支援見送り撤回要求」を行いました。双葉地方反対同盟の石丸氏が交渉団(6団体)を代表して「抗議・要求文」を読み上げ、同時に原発事故による福島県民の被害について国が責任を持って真摯に対応すること、特に、放射線被曝に敏感な子供達が、放射線管理区域レベル以上の所で生活せざるをえなくなっていること、外で遊ぶこともままならない現状を切々と訴え、国の責任で「医療費無料化」を実施するよう重ねて要求しました。集会参加者は全員、この抗議と支援見送り撤回を要求する文章を野田首相にも届けるよう要求しました。
私たちの要請6項目(要約)
1.国の責任による健康手帳の交付、生涯にわたる県民健康管理と医療費の無料化、生活保障
2.県民の継続的な健康管理、健康被害が発生した場合の保健・医療及び福祉にわたる「総合的な援護法」の制定
3.放射線管理区域相当地域の早急な除染、特に妊婦や子供達の生活環境の除染など被曝低減策の早急な実施
4.放射線感受性が高い妊婦や子供達をベースとするより厳しい食品基準の設定、食品の検査強化・表示、学校給
食に汚染のない食品の提供
5.全ての緊急時の原発被曝労働者及び全ての原発労働者への健康管理手帳の交付
6.被曝の強要を正当化するICRP2007年勧告の国内制度への取り入れを中止
質問と回答 → PDFファイル
交渉全体を通じ、「国が責任を取るのではなく、県市町村に任せ、一定の財政援助はする」という、福島現地或いはその他の汚染地域の現状を理解せず、まるで人ごとのような回答でした。交渉参加者は、徹底して「国の責任」を明確にするよう要求しました。交渉の後、今後も引き続き福島県民及び周辺地域住民と連帯して闘っていくことを確認しあいました。
私たちは国に補償して頂きたいのです。国ですよ
「県民健康管理は福島県が主体となって実施しているので国の責任を明記することを求めない。」、「国の医療制度の根幹に影響を与えるので18歳以下の医療費無料化の支援は出来ない。」との回答に、多くの参加者から抗議と反論の声が上がりました。福島市内医療機関からの参加者は、福島市住民の放射線被曝が尚高いこと、医療機関が苦労している現状を訴えた上で、「国策としてこの原発を推進してきたわけだから、事故に対する県民の健康管理の責任をどういう考えでやられるのか?どういう課題を持って健康管理をするのか聴きたい」と政府側出席者に迫りました。また飯舘村からの参加者は、「県の健康調査は回収され手元に残らない。独自の健康手帳を作っている。」と指摘しました。双葉郡からの参加者は「福島県独自の18歳以下の医療費無料化実施で、一体いつまでそれをやれるのか解らない状況なのです。私たちは国に補償して頂きたいのです。国ですよ。県は窓口に過ぎないと思っています」と国の無責任な姿勢に抗議しました。
住んでいるだけでも被曝しているのに、私たちがやることなのでしょうか
除染については、人が生活している環境について優先し、年1ミリシーベルトを長期目標とせず、早急に実現する行程表を示すよう求めましたが、環境省は、年1ミリシーベルトの早期実現には言及せず、「警戒区域とか計画避難区域になっているところは国が直接事業をしましょう、それ以外については市町村の皆様方に除染をして頂く」と国の決めた役割分担のみ問題にしました。
福島の教員は「学校では教職員、PTAで除染をやっている。マスクと手袋程度の簡単な服装でやっている。これでよいのでしょうか?住んでいるだけでも被曝しているのに、私たちがやることなんでしょうか?是非国にやっていただきたいのです」との強く要望しました。飯舘村の参加者は「仮置き場の問題も住民が賛成していないのに、既にもう運ばれている。運ばれたところは下になにも敷かれていない、水が染み通る所に置かれているのですよ。住民は大変怒っています」と現状を突き付けました。
別の福島からの参加者は、「農家の方々は、はぎ取りの表層が毎時1万マイクロシーベルトもなっており、そのはぎ取りのためにお金を支給されアルバイトとして除染している。その後、戻って測ってみると体が汚染していることが解る、それで医療機関に相談に来る。一番聴きたいのは、国が本気になって除染に向けてどうゆうことをするのか?きれいな計画書は出ているのだが何時までに? 全く県民にはその発信がないのです」「被曝地の除染に通常でも被曝値が高い被災県に押しつけると言うことは二重の災害を国はやらせているのじゃないか」と指摘しました。
差別や風評被害を生まないよう、国の役目を果たせ
食品への測定値の表示義務を求める質問に、消費者庁は「表示するということに当たっては慎重に検討して行く必要がある」と回答しました。これに対し参加者は、「あらゆる食品に表示するということは確かに難しいけれど、慎重にすると言うことは何もしないと言うことに通ずるのではないか?測定値の数字が上がれば、それは生産者の責任ではないわけですよね、数字が上がった場合は政府が責任を取ると、その値段が下げられた後の正常価格を自分の収入としてもらえると言うことを補償すると言うのが政治のありようではないのですか?」「国の責任という一番の回答がないものですから、食品についても国の責任を明示して、必ず差別や風評被害を生まないような形で、国民自身が一人一人自立出来るような道をつけるというのが国の役目である」など、国と政府のありようにまで及び指摘しました。
全ての被曝労働者に健康管理手帳を交付せよ
国は、通常の年限度50ミリシーベルトを超えた緊急作業者に「手帳」を交付し、離職後も健康管理を行うとしています。緊急作業に動員された約2万人のうち手帳を交付されるのは約900人。大腸がんなど3種のがん検診を受けられるのは更に少ない、福島事故以前の緊急作業被曝限度100ミリシーベルトを超えた作業者に限られます。
交渉では、厚労省の「線量限度以下でも健康影響の可能性は否定できない」とするこれまでの見解に反すると指摘し、全ての作業者に「手帳」を交付し離職後も国が責任をもって健康管理を行えと追及しました。「健康診断」の線引きをした理由が経済的なものなのか質しましたが、厚労省はあいまいな回答に終始しました。
被曝労働者の健康影響はがん白血病など致死性の疾病を含み、生涯にわたる健康診断、早期発見、治療が重要です。原発が稼働して40年を経過し、晩発障害は今以上に増加していくと考えられます。すでにその兆候は表れています。今後も全ての原発被曝労働者への健康管理手帳交付を求めていきましょう。