HOME > 脱原発と結び福島原発事故被災者支援 > 2011/08/23第2回政府交渉報告

労働者と住民の健康と安全を守り、生じた健康被害を補償することを求めて
第2回政府交渉(2011/8/23)の報告

今回の交渉の狙い
県民健康管理については、
(1)県が発行する健康記録ファイルに「国策として原発を推進してきた国が責任をもって生涯にわたり県民全員の健康保証を行う」と明記すること、(2)避難区域等を対象として2012年2月までとされている医療費の個人負担全額無料化の対象を全県民に期間を生涯に拡大すること、(3)被爆者援護法を参考に上記の(1)・(2)を包括する法的整備を行うこと、の3点を柱に、県民健康管理の問題点を追及しました。
20ミリシーベルト基準については、
健康影響についての国の見解を確認し、私たちから集団線量による危険性評価を対置し、撤回を求めました。
緊急作業従事者の被曝限度の引き下げと長期健康管理については、
被曝限度を元に戻すこと、全員に健康管理手帳を交付し国の責任で長期健康管理することを求めました。

第2回交渉の概要 政府からは内閣府被災者生活支援チーム、原子力安全委員会、文科省、厚労省の担当者が出席しました。

(1)福島県民の健康管理調査と健康管理について
◆明らかになった問題点
@県民健康管理の最大の目的は安心のためであり、将来にわたる健康保証からは程遠い。
 検診は一般検診を利用する。健康診査対象は避難区域等住民20万人に限定される。治療の位置づけがあいまい。
A国の責任を明言せず
 国が責任をもって健康管理を行うことを明言・明記しないで、県を支援する形で進められている。
B国側は原発推進の部署である経産省主導の支援チームが担当している。
 厚労省が担当すべきと第1回交渉から問題にしているが、政府から適切な回答がなされず、第2回交渉においては厚労省が欠席する形でこの質問に対する回答は拒否された。
C健康管理調査の予算は原発推進のためのエネルギー特別会計から出ている。
 原発推進体系の予算であり、事故を起こした責任を認め、さらに、事故で被曝した福島県民に将来も被曝させることが無いことを保証するにはふさわしくない。
D健康影響の過少評価
 先行的調査の結果(線量)から考えるとがん等の確率的な影響の発生率これが大きく増加する可能性は低いと考えているとの回答。具体的根拠は「100mSv以下の被曝」という一般的な説明を出ず。
E積極的でない立法措置
 立法措置の必要性には言及せず、一番安心できる実効性あるシステム作りを目指すとの回答に終始。
◆後日に回答する、持ち帰り検討する、県に伝えると等の回答があった事項
@国の責任に関しては、回答者が自分のレベルでは責任ある発言ができないと拒み続け、多くの時間を費やした後に支援チーム制度班から「国の責任を明記した文書」が示され、回答は後日となりました。
A医療費無料化の拡大、健康管理検討会の公開(議事録の公開、検討会の公開、住民が選んだ委員の参加)について、要望が出たことを県と検討会に伝えることを約束させました。
B健康診査を20万人に絞る根拠、検診は無料なのか、治療に対する考え等、時間切れで未回答で残りました。

(2)20ミリシーベルト基準について
◆原子力安全委員会は直線仮説による防護措置を求め、対策本部、文科省、厚労省を批判
 原子力安全委員会事務局は直線仮説を採用し、100mSvの被曝は0.55%、20mSvの被曝は0.11%のがん死を上乗せすると表明しました。
 100ミリシーベルト以下の被曝の影響をあくまで直線仮説とする考え方はICRPの見解に沿ったもので、原子力推進の中で低線量被曝の健康影響切り捨てに利用されてきたものですが、一定のリスクを認めているという点では福島事故に際して100mSv以下の被曝による健康影響を具体的に認めようとしない政府に対する一定の批判になります。
◆原子力安全委員会はまた、
・計画的避難区域外の生活圏は現存被曝状況で1〜20ミリシーベルトの下方を取れと主張し、原子力災害対策本部は間違っていると指摘しました。
・子供の20mSvの被曝はあってはならないことと再表明しました。
しかしこれらの批判を最後まで徹底することについては、原子力安全委員会は対策本部、文科省、厚労省などが具体的に判断することとして逃げました。
◆安全委員会の考えと現実に行われている政策の矛盾
 委員会事務局に対して政府や県の施策に反映するよう働きかけるべきだとの多数の要請意見が出ました。
◆妊婦・幼児の放射線危険性が成人の3倍以上高いことをはっきりと示せとの要求も出ました。
◆防護措置に集団線量を用いる考えはあるのか
 現在用いていないが出された質問や意見を持ち帰り委員とよく検討したいとの回答でした。
◆がん等の被害がおきれば文科省はどう対応するのか。
 原子力安全委員会は直線関係があると考えて防護措置をとれと表明したが、実際にがん等の被害が起きれば文科省はどう対応するのか。この質問の回答は後日となりました。
◆3.8マイクロシーベルト通達は8月下旬で失効するので新たな考えを検討中。
◆20mSv基準の撤回に対しては、文科省は最後まで認めず

3. 緊急作業従事者の長期健康管理について
◆100mSv以下の健康影響を切り捨てる方針が緊急作業従事者の長期健康管理にも貫徹しつつある。
 厚労省は最近5.2mSvで白血病を労災認定しています。ところが、緊急作業従事者の長期健康管理では離職後の健康診断を50mSv超の作業者に、甲状腺検査とがん検診は100mSv超の作業者に限定する方針を検討会に提案しています。既に1万6000人を超える従事者のうち、50mSv超の440人、100mSv超の103人にしか離職後の健康診断、がん検診を認めません。
 厚労省は健康会員のせいにする回答をしていますが実際には厚労省が原案を提案しているのです。少なくとも通常の業務では1年に20mSvが上限の状況であることさえ無視しています。
 東電が公表している被曝データによれば全体の集団線量は110人・Svであるのに対して、100ミリシーベルト超の作業者の集団線量は20人・Sv以下(15人・Sv程度)であり、がん等の被曝影響は集団線量に比例して生じると考えれば、大多数が検査対象外に置かれることになります。
◆立法措置の必要性には積極的な見解を示さず。
 事故により生じた大量高線量の緊急被曝作業者被曝について、国が責任を持って健康管理することを明記した特別立法が必要です。当日の厚労省担当者は、自分たちは立法とは別の役割であるとして立法措置の必要性に対する明確な見解を表明せず、持ち帰り伝えるとのみ回答しました。
◆100mSvから250mSvに引き上げられた緊急被曝限度、福島第一原発の緊急作業者について取り払われた年50mSv限度をそれぞれ元に戻すことについて、厚労省は具体的な時期を示しませんでした。
◆2重に被曝する地元で生活する労働者
 地元で生活する労働者の場合、被曝線量がデータベースにどのように登録されるのか聞き出すことができませんでした。

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