労働者と住民の健康と安全を守り、生じた健康被害を補償することを求めて、
取り組みの到達点と課題
私たちヒバク反対キャンペーンは、5月2日に、双葉地方原発反対同盟、原水禁、原発はごめんだヒロシマ市民の会、反原子力茨城共同行動、原子力資料情報室と共同で、政府に「住民の健康と安全を守り、生じた健康被害は補償することを求める要請書」を提出しました。
要請は政府に@国の責任による県民の健康保証と健康手帳の交付、A住民に被曝を強要する被曝基準の撤回と除染等の住民の被曝低減措置、B緊急作業の被曝限度の引き下げと全従事者への健康管理手帳の交付を求めています。
この要請書に対する2912名の個人と88団体の賛同を背景に6月20日、8月23日と2度の政府交渉を行ってきました。
原子力事故被災者の健康確保について、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいる所存です(内閣府原子力被災者支援チームの回答)
私たちは交渉の中で、福島の県民健康管理は、国策として原発を推進し事故を招き人々を被曝させた国の責任を明らかにして、国が責任をもって行う生涯にわたる健康保証として取り組まれるべきものだと主張しました。
9月30日、内閣府原子力被災者支援チームは文書で上記の回答を表明しました。
これは原子力事故対策本部の「原子力被災者への対応に関する当面の取り組み方針(5月17日)」に沿ったものです。
そこには、「原子力政策は、資源が乏しい我が国が国策として進めてきたものであり、今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。」と明記されています。
今回の回答は、福島県民の健康管理を国の責任で行うことを改めて認めたものです。新内閣にも、5月17日の文書、及び、今回の9月30日回答にある、国の責任を全うさせねばなりません。
国の責任で生涯にわたる健康保障を、全ての県民に健康手帳を
現在県が実施主体となって進められている県民健康管理の取り組みは、「安心のため」を最大の目的とし、調査しようとするもので、将来にわたる健康保障からは程遠いものです。健康診査対象は避難区域等住民20万人に限定され、検診は一般検診を利用し、健康診断についての新たな自己負担はないが治療費については無料化の予定はないなど問題点が山積しています。調査を目的とし治療は行わない原爆被爆者に対する「ABCC調査」は広島・長崎の被爆者から「モルモット扱いだ」と怒りを買いました。福島で同じようなことを繰り返させてはなりません。
福島の人々の切実な要求である、「国が責任をもって行う健康保障の実現、すなわち、長期間継続する被曝を含めた被曝線量の評価、生涯にわたる健康管理・診断、発症した場合の治療や生活の保障、そのための特別法の制定、健康保障を受けられることを明記した健康手帳の交付」の実現を目指して取り組みの輪を広めましょう。9月30日政府回答を踏まえて、福島の人々と連帯して運動を進めましょう。
住民に被曝を強要する被曝基準の撤回と除染等の住民の被曝低減措置
政府は1〜20ミリシーベルトの範囲で1ミリを目指すとする新たな基準を作ろうとしています。これは放射線の被曝の危険が高い妊婦や乳児をはじめ住民に引き続き被曝を強要するものです。土壌除染について国は当初年5ミリシーベルト以上のみ責任を持つとしていましたが、福島の人々の力で年1ミリシーベルト以上の土壌の汚染除去も国が責任を持つことになりました。
被曝を強要する基準に反対し、除染等の被曝低減を早急に徹底して実施させましょう。
全ての緊急作業者の被曝限度の引き下げと全従事者への健康管理手帳の交付を
3月14日に緊急作業の線量限度が福島原発について100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げられました。11月1日、この特令が改められ、250ミリシーベルトは線量率が毎時100マイクロシーベルト以上の特定の緊急作業に限定されました。新しい特令は11月以降の新規就業開始者に適用され、10月末までに就業済みであった作業者は依然として250ミリシーベルト限度が適用されます。9月末で132名に達している100ミリシーベルトを超える作業者は今後も増加することが避けられません。また、緊急作業者の他の原発での通常作業については依然として年50ミリシーベルト限度が取り払われたままです。
全ての緊急作業者に対する被曝限度の引き下げと緊急作業者の他原発作業への年50ミリシーベルト限度の不適用の早急撤回を求めましょう。
緊急作業労働者の長期健康管理について、厚労は「指針」を作成し、在職中の健康診断は目の検査(50ミリシーベルト以上の人)と甲状腺検査及びがん検診(100ミリシーベルト以上の人)以外は職場での通常の検診とし、離職後の健康診断については被曝が50ミリシーベルトより低い人は対象外としました。50ミリシーベルト以上の人に限定して在職中から「手帳」が交付されます。
全ての従事者に健康管理手帳を交付し離職後も国の責任で生涯にわたり健康管理を行うこと、がん検診をごく一部の労働者に限定することの撤回、などを求めていきましょう。
取り組みの成果を引き継ぎ、福島の人々と連帯して対政府の取組を前進させましょう。
福島事故の放射能汚染による健康影響の切り捨てを許さず、住民と労働者の健康と安全を守り、生じた被害の健康保証を求めていきましょう。その取り組みを脱原発の運動と結んで全国に広げましょう。
要請書へに賛同して下さった2891名の個人と98団体の皆様、ありがとうございました。これまでの取り組みの成果を引き継ぎ、現在具体的に問題となっている事項を整理した「新たな要請書」を6団体で検討し、より広範な人々のご協力を得て、福島の人々と連帯して対政府の取り組みを前進させたいと考えています。