緊急作業従事者、甲状腺がんで労災認定

2016年12月16日、福島第一原発で緊急時作業に従事した労働者(男性)の甲状腺がんが労災認定された。
男性は1992年から原子炉の運転・監視業務に従事し、福島第一3、4号機の運転員を勤めたことがあり、事故までの期間の被ばく線量は10.5mSvであった。
2011年3月からは福島第1の緊急時作業と収束作業に従事し、水素爆発にも遭遇した。
2014年4月に甲状腺がんと診断され、既に切断手術を受け職場復帰し、現在も通院を続けている。(2016年12月17日報道)
2011年3月~2014年4月の被ばく線量は139.12mSvであった。
1992年から2012年4月までの20年間の被ばく線量は計149.6mSvに達する。
2011年3月以降の被ばくのうち、約40mSvは放射性物質を体内に取り込んで起きる内部被ばくだった。
東電は甲状腺等価線量と全身実効線量の換算係数として1/20を使っているので、この男性の甲状腺等価線量は800mSvとなる。
緊急時作業従事者の甲状腺被ばくは、等価線量が1000mSvを超えた労働者が74人、500超え~1000mSvの労働者が196人、100超え~500mSvの労働者が1437人などとなっていることから、今後も甲状腺がんの発生が続くと考えられる。

表 緊急時作業者の甲状腺被ばく線量
線量区分(mSv) 東電社員 協力企業
15,000超え 0 0
10,000超え~15,000以下 2 0
2,000超え~10,000以下 15 0
1,000超え~2,000以下 44 13
500超え~1,000以下 129 67
200超え~500以下 236 305
100超え~200以下 416 480
100以下 2391 15413
合計 3283 16278

甲状腺がんに関する厚生労働省の「当面の労災補償の考え方」
 厚生労働省は甲状腺がんの労災認定に関して、「当面の労災補償の考え方」を公表しました。
 参考:甲状腺がんの労災認定に関する厚生労働省のホームページ
 参考:「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」報告書(甲状腺がんと放射線被ばくとの関連)
 厚生労働省の「当面の労災補償の考え方」
 1 放射線業務従事者に発症した甲状腺がんの労災補償に当たっては、当面、検討会報告書を踏まえ、以下の3項目を総合的に判断する。
 (1)被ばく線量
    甲状腺がんは、被ばく線量が100mSv以上から放射線被ばくとがん発症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まること。  (2)潜伏期間
   放射線被ばくからがん発症までの期間が5年以上であること。
 (3)リスクファクター
   放射線被ばく以外の要因についても考慮する必要があること。
 2 判断に当たっては、検討会で個別事案ごとに検討する。

 しかし、厚生労働省は「甲状腺がんの発生が統計的に有意に増加する最小被ばく線量を示す文献はなかった」と認めており、労災認定を100mSv以上に限定すべきではありません。
 国に対して、すべての被曝労働者への健康管理手帳の交付と健康・生活保障を求めます。

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