福島第一原発では多数の被曝労働者が危険な環境での事故処理作業に動員され、新たな労働者も入域しています。また除染作業にも被曝労働者が従事しています。被曝の低減と国の責任による長期健康管理のための「手帳」交付および健康診断と医療保障・被害補償が喫緊の課題となっています。
厚労省は、食道がん、胃がん、結腸がんの労災認定指針を公表しました。これを機に、改めて、労規則35条別表の例示疾病の拡大、認定基準の引き下げ、労働者や遺族への労災補償情報の通知、遺族補償の5年の時効の「撤廃」などの課題が浮かび上がっています。
1.厚労省が胃がん、食道がん、結腸がんの労災認定指針を公表
労災補償の対象疾病に追加させ、認定線量基準を100ミリシーベルトから大幅に引き下げさせよう
厚労省は2012年9月28日、2009年と2011年に労災申請された胃・食道・結腸のガンについての業務上外の検討における医学的知見を公表し、これら三つのガンに対する「当面の労災補償の考え方」を示しました。 → 厚労省HP
労災認定の指針が示されたという点では労災対象疾病を拡大するものとなっています。厚労省にこのことを認めさせ、労規則35条別表の労災補償対象疾病の例示リストに追加させましょう。
厚労省は、被ばく線量が100mSv以上で線量の増加とともにこれら3つのガンの発症との関連が高まるとしています。放射線によるがんの閾値がないことが明らかにされているにもかかわらず、厚労省はこのような指針(基準値)を決定したのです。この認定線量基準値を引き下げ(注)、すべてのガンを労災の対象疾病とするように拡大していく闘いを前進させましょう。
(注:既に100mSvが認定指針の線量基準として運用されている肺がんについても同様です。)
疾病 | 線量基準 | ||
基発810号 | 白血病 | 5ミリシーベルト × 従事年数 以上 | |
現在運用されている「指針」 | 悪性リンパ腫 | 5ミリシーベルト × 従事年数 以上 | |
多発性骨髄腫 | 50ミリシーベルト 以上 | ||
肺がん | 100ミリシーベルト 以上 | ||
今回示された「労災補償の考え方」 | 食堂がん | 100ミリシーベルト 以上 | 被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まる |
胃がん | 100ミリシーベルト 以上 | ||
結腸がん | 100ミリシーベルト 以上 |
疾病 | 白血病 | 多発性骨髄腫 | 悪性リンパ腫 | ||||||||
線量(mSv) | 40 | 72.1 | 50 | 129.8 | 74.9 | 5.2 | 70 | 65 | 99.8 | 78.9 | 不明 |
認定年 | 1991 | 1994 | 1994 | 1999 | 2000 | 2011 | 2004 | 2010 | 2008 | 2010 | 2011 |
労働局 | 福島 | 兵庫 | 静岡 | 茨城 | 福島 | 福岡 | 福島 | 福岡 | 大阪 | 長崎 | 神奈川 |
申請時の 生死状況 |
死亡 | (注) | 死亡 | 生存 | 死亡 | 生存 | 生存 | 生存 | 死亡 | 死亡 | 不明 |
(注)元作業員2人(うち1人死亡)が92年12月に神戸西労基署に申請(中国新聞1993/5/6) |
被ばく線量の区分(mSv) | 労災認定の線量基準該当者 (表の太字) |
|||||
疾 病 | 10< | 10- | 20- | 50- | 100+ | |
食道がん | 200 | 29 | 32 | 20 | 8 | 8 |
胃がん | 669 | 85 | 85 | 41 | 18 | 18 |
結腸がん | 251 | 24 | 29 | 13 | 4 | 4 |
肺がん | 801 | 102 | 118 | 56 | 33 | 33 |
多発性骨髄腫 | 22 | 3 | 2 | 1 | 3 | 4 |
悪性リンパ腫 | 69 | 9 | 14 | 7 | 4 | 累積線量と従事年数によるため該当者数不明 |
白血病 | 99 | 12 | 16 | 4 | 2 |