福島原発緊急作業者の長期健康管理の問題点

 50ミリシーベルト以下の作業者は「手帳交付」と「離職後の健康診断」の対象外
 50~100ミリシーベルトの作業者は「甲状腺検査」と「がん検診」の対象外

 厚労省は10月11日、「東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」を公表しました。
 これによれば、緊急作業従事者のほとんどを占める50ミリシーベルト以下の人は、
  ①被ばく線量等が記載された手帳の交付を受けることができず、
  ②離職後の健康診断の対象外に置かれます。
  注)①の手帳は「手帳」は労安法66条に基づくもので、労安法66条の「健康管理手帳」と異なり、在職中から有効です。被ばく線量や健康診断の結果が記録されます。
 また、100ミリシーベルト以下の作業従事者は「甲状腺検査」と「がん検診」の対象外です。
 作業従事者の被曝状況から放射線被曝による「がん」は約90%が100ミリシーベルト以下の作業従事者に生じると推定されます。
厚労省が行うとしているこの「長期健康管理」は緊急作業者に生じるであろう被害のほとんどを制度的に切り捨てるものです。

資料:「東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」の概略
長期的健康管理のための取組
1 事業場の規模に応じた事業場内管理体制を確立し、健康診断を適切に実施する。
2 緊急作業に従事した間の被ばく線量(実効線量)が、
 ・50mSvを超える者に対して、1年に1回、白内障の検査を実施する。
 ・100mSvを超える者に対して、1年に1回、がん検診等を実施する。
3 緊急作業従事者等の全員に対して、保健指導等を実施する。
緊急作業従事者等のデータベースの整備
1 緊急作業従事者等を緊急作業又は放射線業務に従事させる事業者は、健康診断結果や、線量等管理実施状況報告書等を、国に報告する。緊急作業従事者等が転職後に新たに放射線業務に従事する場合も同様とする。
2 緊急作業従事者等には、国が設置するデータベースへの登録証が送付され、国の支援窓口に登録証を提示することにより、被ばく線量や健康診断結果等の記録の写しを受け取ることができる。
3 緊急作業における被ばく線量が50mSvを超える者は、被ばく線量等が記載された手帳の交付を受けることができる。
国が行う必要な援助等
1 緊急作業従事者等に対する、がん検診等の受診勧奨。
2 支援窓口での、緊急作業従事者等に対する健康相談や保健指導。
3 緊急作業従事者等に対する、検査の費用の全部または一部の援助。

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