イチエフと除染現場で労働災害が頻発

イチエフの労働現場と福島原発事故で汚染された福島県と周辺県の除染労働現場で労働災害が頻発している。また、様々な搾取や違法行為が多発している。
企業の利潤追求、雇用の多重構造、原発重大事故の現場における労働、が根本にある。

労働災害の多発
・イチエフでは発災当時、休業日4日以上の死傷として、地震・津波による死亡2名、負傷1名、水素爆発による負傷1名の被害が出ている。
・その後、固体廃棄物貯蔵庫の基礎杭補修作業中の生き埋め事故(2014年3月28日)【東電発表資料】、雨水受けタンク点検中の落下事故(2015年1月19日)【東電発表資料】、凍土遮水壁工事現場でのバキュームカー清掃中の後部タンク蓋挟まれ事故(2015年8月8日)【鹿島建設・東電発表資料】により3名が死亡している。
・それ以外に、休業日4日以上の負傷が2019年2月末までで、39件生じている。
・その他に福島第2原発で、死亡事故1件が発生している。
・除染作業では、2019年2月末までに、死亡事故10件、休業日4日以上の負傷324件の労働災害が生じている。

軽傷でも内部被ばくの危険
・原発や除染労働現場は放射能汚染されているため、軽傷でも内部被ばくの危険性がある。
・イチエフでは休業1~3日、当日休業のみ、の労働災害が2019年2月末までで、176件生じている。

熱中症の多発
・放射線防護服を着用して作業に従事する現場で熱中症が多発している。
・イチエフでは、2019年2月末までで、85件の熱中症が発生している。

原発、除染で福島県における東日本大震災復旧・復興工事の労働災害の半分
これらの労働災害は、福島県における東日本大震災復旧・復興工事の労働災害の半分を占めている。

労働災害多発の原因
利潤追求による安全確保の手抜き以外に、福島原発事故固有の原因としては、事故現場の危険な状況、複数の企業が関与するあいまいな現場責任、未熟練労働者の増加、防護の重装備で転倒しやすくなっていること、などがある。


表1 福島県における東日本大震災復旧・復興工事の労働災害発生状況(休業日4日以上の死傷)
  全数 うち除染等業務分 うち原発廃炉作業分
死亡負傷 死亡負傷 死亡負傷
H2361130008
H240920907
H25611647004
H264110280 18
H27311518626
H2827425003
H2914001702
H3013011201
合計2369010324339
  出典:平成31年度 福島労働局行政運営方針 ~働く人たちとともに~
  注)厚生労働省によると、23年度死亡災害は1件(福島労働局外で労災認定)。
  出典:「東電福島第一原発廃炉作業等における安全衛生管理対策の実施状況等について」

表2 イチエフにおける労働災害の発生状況
期間負傷・体調不良熱中症
死亡重症軽症Ⅱ軽症Ⅰ不休重症軽症Ⅱ軽症Ⅰ不休
2011.03.11~2011.03.31221360001
2011.04.01~2012.03.3103103402318
2012.04.01~2013.03.310302130034
2013.04.01~2014.03.311310180018
2014.04.01~2015.03.3116153600015
2015.04.01~2016.03.3111102300111
2016.04.01~2017.03.310210170004
2017.04.01~2018.03.31003080006
2018.04.01~2019.03.310201100116
合計52291116503973
  元資料:東京電力公表資料  2011~13年度2014年度2015年度2016年度
2017年度2018年度

表3 イチエフにおける労働災害の発生状況(休業日4日以上の死傷)
発生日発生状況備考
2011.03.143号機水素爆発で飛来した瓦礫が当たり負傷重傷
2011.03.22共用プール付近において仮設電源設置作業中、足をひねり転倒軽症Ⅱ
2011.06.04油分分離処理水タンク廻りでの工事監督業務にお いて、体調不良者の発生軽症Ⅱ
2011.06.05 屋外タンヤードでの淡水化装置ケーブル敷設作業 において、熱中症体調不良軽症Ⅱ
2011.06.06 焼却工作建屋において通訳対応中、転倒し脇腹に配管を当て負傷重症
2011.07.18正門付近での電柱上の中継ボックス内にある光ケーブルの接続作業中、転落。重症
2011.10.29大型クレーン解体作業中に、クレーンのワイヤー 束が落下し作業員に当たる。重症
2012.08.23瓦礫一次保管エリア内において、小石につまずき転倒。重症
2012.08.29ガントリークレーン解体用受架台の設定作業中、 架台上から墜落。重症
2012.09.20長机をトラック荷台への積み込み作業中、荷台周辺の枠に足を引っかけ転倒。重症
2013.04.15配電盤上部の清掃中、移動のため安全帯を親綱から外したところ、足を滑らせ墜落。重症
2013.09.30セシウム吸着塔一次保管施設において、固定・移動クレーンが接触し、運転手が負傷。軽症Ⅱ
2013.12.27タンク周辺土の置換作業において、大型土のう空袋運搬中、つまずき負傷。重症
2014.02.05事務所から免震重要棟への移動中、凍結した階段で足を滑らせた。重症
2014.03.28固体廃棄物貯蔵倉庫の基礎杭補修工事において、土砂が崩壊して生き埋め。死亡
2014.05.19タンク堰内を移動中に足を滑らせ転倒。重傷
2014.05.27足場パイプを取りに行くため移動した際、足を滑らせ転倒。重傷
2014.05.31ハシゴを降りる際ハシゴが揺れたため転落。重傷
2014.06.28仮設昇降階段を下りていた際、足を滑らせ転落し足をひねった。重傷
2014.09.30高圧ケーブル末端処理作業で感電。重傷
2014.11.07旋回梯子レール落下。重傷2名
2015.01.13つり上げた鉄板に頭をぶつけた。重傷
2015.01.19タンク上部のマンホールから墜落。死亡
2015.06.16多核種除去設備の点検作業において,資機材を運搬中に躓き転倒。足を負傷重症
2015.08.08陸側遮水壁設置工事において、バキューム車清掃作業中にタンク蓋に挟まれた。死亡
2016.01.18陸側遮水壁設置工事において,ガードレールと土嚢袋との間に指を挟まれた。軽傷Ⅱ
2016.04.22大型機器点検建屋改修工事における測量作業中、体勢を崩し鋼管杭で負傷 軽傷Ⅱ
2016.06.22雨水移送設備・雨水処理設備PE管設置工事の作業員がタンクエリア側路面で歩行中転倒。重症
2017.04.19横置きタンク仮置場整備工事において,資材荷下ろし作業 中、トラックの荷台に置かれた資材(H形鋼)の上を移動の際に足を踏み外して転倒し、足の付け根を負傷軽傷Ⅱ
2017.09.01固体廃棄物貯蔵庫第9棟新設工事において、隣室への移 動方法として間仕切壁の開口部内を通る経路としたため、開 口部から降りた際に足を負傷軽傷Ⅱ
2017.12.22発電所周辺防護区域内のパトロールにおいて、ゴムマット上の霜で足を滑らせ負傷軽傷Ⅱ
2018.07.02廃棄物処理建屋の火災警報を受けて現場確認を実施した自衛消防隊員が熱中症体調不良軽傷Ⅱ
2018.10.02タンク設置工事の非破壊検査で、回転足場の車輪とレールの間に指をはさまれ負傷重傷
2018.12.14構内水路復旧工事の型枠解体作業中に倒れてきた型枠に足が当たり負傷重傷
注1)東京電力公表の労働災害一覧表(表2の脚注)から抜粋・簡略化した。

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