3号機使用済み燃料プールの燃料体取り出し作業

燃料取扱設備等全体配置   燃料取り出し用カバーの概要
3号機のプールには、強い放射線を出す使用済み燃料514体と、未使用燃料52体、合わせて566体の燃料が保存されている。
3号機は水素爆発で建屋上部が破壊され、燃料取り出しを行うオペレーティングフロアーは強い放射線を出すガレキで埋まり、3号機の放射線量は、1~3号機の中でも特に高い状態であった。
プールがある建屋5階中央では2013年7月24日、最大で毎時約2.17シーベルトと極めて高い線量が確認された。

これまでの主な作業
2013年 10月11日:原子炉建屋オペフロ床面の大きなガレキ撤去完了
2015年 11月21日:クローラクレーンを用いて、使用済燃料プール内の大きなガレキ撤去完
2016年 6月10日:原子炉建屋オペフロ床面の除染完了
    12月 2日:原子炉建屋オペフロ床面に遮へい体設置完了
2017年 1月17日:燃料取り出し用カバーの設置開始
   (7月31日~2018年2月21日:ドーム屋根の吊り上げ)
2018年 2月23日:燃料取り出し用カバーの設置完了
2019年 4月15日:燃料取り出し作業開始

●オペレーティングフロアーのがれき撤去
2011年9月にがれき撤去が開始され、600t吊りクローラークレーンや解体用重機など合計10台を遠隔操作し、放射線量が高い現場で被ばくを避けつつ作業が進められた。
・2013年9月22日に、撤去していた鉄骨のがれき(長さ約7メートル、約470キロ)を使用済み燃料プールに落としてしまう事故が発生した。

●使用済燃料プール内のがれき撤去
東電の試算では、プールには、長さ約10メートルの鉄筋180本、板状の鋼材100枚、人の頭部ほど大きい コンクリートなどが無数に入っていた。
2013年12月にプール内大型ガレキ撤去作業が開始された。
・2014年8月29日,プールから引き上げ作業中の燃料交換機の操作卓(約400kg)及び張出架台(約170kg)がプールに落下する事故が発生した。
・2015年8月2日、使用済燃料プール内 に存在する最も大きなガレキ(燃料交換機、重さ20トン)が撤去された。この作業は、プールの水位低下や燃料破損につながる恐れがあり、福島第一原発の全作業を中断して、最大級の厳戒態勢で行われた。
使用済燃料プール内の大型ガレキ撤去は2015年11月に完了した。

●設備・機器の設置、点検、修理などで有人作業が必要
燃料取り出しに向けて、オペレーティングフロアーのがれき撤去、燃料プールのがれき撤去、線量低減対策(オペレーティングフロアーの除染および遮へい)、燃料取り出し用カバー・燃料取扱機の設置などの行程が進められている。
東京電力によると、3号機プール燃料取り出し作業は、建屋を覆う巨大なカバー(内部に燃料取扱い設備を設置)を建設し、遠隔操作の燃料取扱い機及びクレーンを用いて実施され、原則、オペレーティングフロアでの有人作業はない。
しかし、「設備・機器の設置、点検及びトラブル時修理等には、オペフロでの有人作業が必要であり、作業員安全のためには、時間をかけ線量低減対策を実施する必要がある」(東京電力、2014年11月27日)。
政府と東電は、プールからの燃料取り出し開始時期は、これまでの目標(29年度中)から2018年度半ばにずれ込むと発表している(2017年1月26日)。原子炉建屋上部の放射線量が除染後も想定通りに下がらないことが主な原因。

●オペレーティングフロアーの除染など線量低減措置
東電は設備・機器の設置、点検及びトラブル時の修理等で必要な有人作業が可能な環境として、1mSv/hを目安としている。
がれき撤去の完了後、2013年10月15日から オペレーティングフロアの除染(小がれきの 収集・吸引、切削)、遮へいなどの線量低減対策が進められてきた。
しかし、線量が思うように下がらず、追加対策が迫られ(2014年11月27日 )、工程に遅れが生じた。
オペレーティングフロアーの除染は2016年6月に完了した。

●燃料取り出し用カバー・燃料取扱機の設置工事・試運転
むき出しになっている建屋5階に放射線を遮るため金属板などの「遮蔽体」を敷く作業が遠隔操作で行われた。
・ステップⅠ:遮蔽体の設置
1mSv/hの環境が達成されたとして、2016年12月から有人作業を伴う工程に移った。
屋根および門型架構の部材は小名浜でユニット別に組み立てられ、構内に輸送し、組み立てられた。
・ステップⅡ:移送容器支持架台設置(吊り込み作業)
・ステップⅢ:ス トッパ受ボックス設置、ストッパ本体をストッパ受ボックスに挿入
・ステップⅣ:門型架構の設置
・ステップⅤ:作業床および走行レールの設置
・ステップⅥ:スライド架台を用いてドーム屋根設置(1~5)
・ステップⅦ:燃料取扱機及びクレーンの設置
・ステップⅧ:ドーム屋根設置(8)、スライド架台搬出、ドーム屋根設置(6、7)
ドーム屋根の設置作業は、2018年2月23日に完了した。
2018年3月から燃料取扱機やクレーンなどの試運転が始まった。
・ステップⅨ:試運転

主な有人作業(オペフロア床面または約6m高い作業床での作業)
・ユニットの設置位置合わせ
・ユニットの玉掛け外し
・ユニット接合部のボルト締め
・ユニットのタッチアップ塗装
・ケーブル,耐圧ホース等の敷設・接続
・試運転調整

表 燃料取り出し用カバー・燃料取扱機の設置工事の被ばく
作業内容 作業期間 作業体制 作業時間※ 空間線量率 計画線量 実績線量 個人最大線量
ステップⅡ
移送容器支持架台設置
2016.11.28
(1日間)
11人
×(1班/日)
約60
分/(班・日)
約0.05~30
mSv/h
17.18
人・mSv
4.98
人・mSv
0.70mSv
ステップⅢ
ストッパ設置
2017.01.17
~2.23
6~12人/班
×(2班/日)
約50~140
分/(班・日)
0.2~8.4
mSv/h
0.90
人・Sv
0.26人・Sv
2月8日迄
1.45mSv/日
2017.01.20
ステップⅥ、Ⅷ
ドーム屋根設置
2017.2.22
~18.2.23
(8人/班)
×(1班/日)
約50~140
分/(班・日)
0.1~1.6
mSv/h
0.42
人・Sv
0.13人・Sv 0.54mSv/日
2017.8.26
ステップⅦ
燃料取扱機・クレーン設置
2017.11.8
(5人/班)
×(5班/日)
約60~120
分/(班・日)
0.1~1.2
mSv/h
1.7
人・Sv
0.42人・Sv
2月25日時点
1.21mSv/日
(9月23日)
ステップⅨ
試運転
オペフロ 2018.3.15~ (7人/班)
×(2班/日)
約60~120
分/(班・日)
約0.1~1.2
mSv/h
0.30
人・Sv
0.11人・Sv
5月25日時点
0.63mSv/日
(4月27日)
遠隔操作室 (4人/班)
×(2班/日)
約300
分/(班・日)
※作業時間は移動時間等を含む
※燃料取扱機・クレーン関連設備の設置については
 9月11日より開始。
 個人最大被ばく線量は、関連設備の設置作業被ばくを含む。

燃料取扱機及びクレーン他設置は、2018年度の廃炉作業で最も被ばくした作業であった。

表 3号機 燃料取扱機及びクレーン他設置作業(2017.6.12~19.8.31予定)による被ばく
年度   総被ばく線量(人・mSv) 個人最大線量(mSv/年)
2017 758.41 12.87
2018 1249.58 14.78mSv
2019 72.66 3.65
 注)このうち、不具合対応に伴う被ばく:770.48人・mSv(2018.8.9~2019.4.14現在)
 注)2019年度は2019.4.1~2019.5.31の集計値

燃料プールから燃料体の取り出し作業
2019年4月15日に燃料体の運び出し作業が開始された。
扱いやすい未使用燃料体(7体)の搬出が先行して行われた。
・水深が12メートルあるプールに遠隔操作で燃料取扱機を下ろし、燃料体1体(約250kg)をつかむ。
 持ち上げた後、プール内を10メートル弱移動させて専用の輸送容器に収める。
 一連の作業時間は約1時間。
・輸送容器の蓋を閉め、洗浄した後、クレーンを使って地上階まで吊り下ろし、トレーラーに載せる。
・構内にある共用プールへ輸送する。
・燃料を共用プールに移し、保管する。
搬出作業は、未使用燃料体(7体)の搬出を終えたあと、共用プールの定期点検に合わせて中断し、7月ごろ再開する。

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