被ばく労働者の線量限度

原子力産業の始まりとともに登場したICRP
・ICRPの「放射線防護」の本質は、コスト-ベネフィット論を基礎とし、原子力発電などの諸活動を正当化し、被ばくを強要する側が、それを強制される側に被ばくがやむを得ないもので、受忍すべきものと思わせるための社会的な基準です。

1990年勧告でも2007年勧告でも残された、年50ミリシーベルト基準
・1980年代の原爆放射線評価の変更と広島・長崎の原爆被爆者に生じた被害の増加によって、原爆被爆者の疫学調査から放射線被ばくのリスクが10倍高まった。
・公衆の被ばく限度は年5ミリシーベルトから年1ミリシーベルトに引き下げられた(パリ声明)。
・ICRPは、被ばく労働者に対しては、1990年勧告でも2007年勧告でも、年50ミリシーベルトを残し5年間100ミリシーベルトと併用する基準を勧告した。
・これらの基準は年間50ミリシーベルトの10分の1よりもはるかに高い線量基準のままである。
・日本でも国内法に反映された。
4.放射線業務の危険性と健康診断・補償
・放射線被ばくはがんや白血病をもたらす危険があり18歳未満の従事は禁止されている。
・しかし健康管理手帳交付業務には指定されておらず、離職後の健康管理は個人任せ。
・労災認定が死後の場合が多職種より多い。
・電離放射線業務を健康管理手帳交付業務に指定し、国の責任による離職後の生涯無料の健康診断と医療補償・生活補償を行わせる必要がある。

原発重大事故の被ばくを容認するICRP2007年勧告
・チェルノブイリ原発重大事故によって労働者と住民が高線量で大量の放射線被ばくさせられた。
・国際放射線防護委員会(ICRP)や国連科学委員会(UNSCEAR)は被ばくのもたらした影響を過小評価し、多くの国の政府は原発の運転を継続する判断を下した。
・ICRPはチェルノブイリ原発重大事故によっても原発推進政策を継続するために2007年勧告を作成した。
・ICRP2007年勧告では、「通常被ばく(計画ひばく)」に加えて、原発重大事故発生時の「緊急時被ばく」、その後の「現存被ばく」が導入された。
日本政府は、福島原発事故の際、ICRP2007年勧告の基準をなし崩しに取り入れた。
・事故直後に、被ばく労働者の緊急時被ばく限度を250ミリシーベルトに引き上げ2011年12月まで適用した。
・住民の避難及び避難指示解除の線量基準はそれぞれ年20ミリシーベルトとされた。
 政府はICRP勧告との直接の関連を否定している。

ICRP2007年勧告の国内制度取り入れ(法制化)
・政府は原発重大事故による被ばくを住民や原発被ばく労働者に容認させるICRP2007年勧告の国内制度取り入れ(法制化)を着々と進めている。
・原発被ばく労働者に関しては、重大事故に対応できるよう、緊急時作業の被ばく限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた。

現存被ばくについては、国内法に取り入れられていない。
・福島原発周辺や帰還困難地域では公衆の被ばく限度年1ミリシーベルトをはるかにこえる高線量の状態が継続しており、違法状態である。
・政府はトリチウムを主成分とするALPS処理水を海洋放出しようとしている。
 これは違法状態にある周辺監視区域の放射線量をさらに高める違法行為である。

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