最近のイチエフ被ばく労働の状況と課題

高線量下での作業が続く
汚染水処理、建屋内の線量調査・水位測定・写真撮影、構内の除染・フェーシング、不要タンク解体、原子炉建屋カバー設置、4号炉燃料プールからの使用済み燃料取り出し、凍土遮水壁建設、原子炉格納容器内のデブリ調査のための、除染・壁の穴あけ・デブリ調査などの作業、燃料プールの燃料取り出しのための、建屋カバー除去・除染・取り出し装置の設置、1/2号機排気筒の解体などの作業が行われた。
高汚染SGTS配管(最高160mSv/h)の撤去作業が行われている。

作業従事者の推移
事故発災以降増加し2011年7月にピーク(月7800人台)となり、そ後減少し2011年8月~2013年9月は概ね横ばいで推移した。
2013年10月ごろから増加し始め、2015年3月に月1万2300人台のピークとなる。
2014年4月から2016年2月にかけて、準備を含め、凍土遮水壁の建設工事が行われた。これが2015年3月のピーク前後の従事者数の増加となっている。
その後減少傾向が続き、2019年3月頃7000人前後で推移している。
下請け等従事者が大部分を占めている。

・2012年1月から2016年3月迄に新たに東電社員1,430人下請等25,939人が従事。
・2016年4月から2021年3月迄に東電社員2,456人下請け等22,568人が従事。下請け等が90%を占める。
・2021年4月から2022年3月末迄に東電社員1358人下請け等8779人が従事。下請け等が87%を占める。
表1.緊急時作業従事者とその後の従事者(2022年3月まで)
期間 2011/03~2011/12
緊急時作業従事者
2012/01~
2016/03
2016/04~
2021/03
2021/04~
2022/06
東電社員 3,282人 1,430人 2,456人 1,448人
下請企業 16,308人 25,939人 22,568人 9,634人

表2.毎月ごとの従事者数、被ばく線量(出典:東電報告)
期間東電社員下請け等下請け等の割合
(%)
従事者数被ばく線量(mSv)従事者数被ばく線量(mSv)
最大値平均値最大値平均値
2011-031696670.3631.532286238.4214.1557.4
2011-04165759.606.66420449.614.3571.7
2011-05147733.423.14582848.803.3779.8
2011-06135116.292.12640289.503.0882.6
2011-07135131.131.69652161.972.4382.8
2011-08128623.331.72623066.502.2082.9
2011-09120711.351.45600033.402.0183.3
2011-10117936.351.57562323.501.8482.7
2011-11118013.401.07558023.031.4682.5
2011-12119223.201.10540819.201.4381.9
2012-01109517.001.19494721.901.3681.9
2012-02110917.630.91484720.911.5181.4
2012-03111912.100.83475621.831.3681.0



平日1日の従事者数の推移
発災以降増え続け、2015年2月~3月に平日1日の従事者が7000人を超えた。その後徐々に減少し、2019年4月以降は3000人台で推移している。
出典:廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(2019.05.30)資料2-1「廃炉・汚染水対策の概要」
       〃              (2020.01.30)    〃
       〃              (2022.04.27)    〃
表3.平日1日あたりの従事者数の推移(2013年4月~2019年10月 実績数)
期間 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
1月   3730人 6570人 6370人 5850人 4930人 4190人
2月   4020人 7130人 6720人 6110人 4970人 4400人
3月   4270人 7450人 6360人 5940人 4740人 3980人
4月 2950人 4450人 6940人 5790人 5470人 4140人 3440人
5月 3060人 4840人 6800人 5940人 5590人 4260人 3610人
6月 3130人 5490人 6900人 5910人 5530人 4250人 3610人
7月 2990人 5730人 6740人 5980人 5460人 4260人 3630人
8月 3130人 5800人 6690人 5850人 5380人 4260人 3660人
9月 3290人 6440人 6670人 5740人 5230人 4210人 3730人
10月 3220人 6220人 6830人 5920人 5150人 4050人 3790人
11月 3410人 6600人 6450人 5960人 5090人 4160人 3990人
12月 3540人 6890人 6430人 6010人 5050人 4270人 4070人



高線量下の被ばく労働が長期化し、下請けが被ばく労働を担うという事故前と同じ状況になってきている。
事故発生から2016年3月末までの5年間では、従事者4万7千人のうち20%を超える1万人が20mSv以上被ばくし、その86%を下請け労働者が占めている。
2016年4月から2021年3月末までの5年間では、下請け労働者2万2568人の10.9%の2459人が20mSv以上被ばくしている。
表5 20mSvを超えて被ばくした労働者
所属 2011年3月~2016年3月 2016年4月~20219年3月
所属 従事者計 20mSv超え 比率 従事者計 20mSv超え 比率
東京電力 4712人 1431人 30.4% 2456人 92人 3.7%
協力企業 42244人 8646人 20.5% 22568人 2459人 10.9%
合計 46956人 10077人 21.5% 25024人 2551人 10.2%







・2021年1月、2月現在、構内のほとんどの地点では毎時10μSv以下となっている。原発建屋周辺では毎時750μSv、毎時270μSv、毎時110μSvといったホットスポットが残っている。
・ベント作業により放射能汚染されたSGTS配管(最高160mSv/h)は撤去作業が行われている。
・建屋内は今もなおレベルが桁違いに高く、非常に危険な環境である。
1日平均従事者数の推移
現場では、従事者数が増え続け、2015年2月~3月に平日1日平均の従事者が7000人を超えた。
その後徐々に減少し、2019年4月以降はおおむね3000人台で推移している。
出典:廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(2019年05月30日)資料2-1「廃炉・汚染水対策の概要」
       〃              (2020年01月30日)    〃
       〃              (2022年04月27日)    〃
表4 平日1日あたりの従事者数の推移(2013年4月~2019年10月 実績)
期間 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
1月   3730 6570 6370 5850 4930 4190 4120 3910 3920
2月   4020 7130 6720 6110 4970 4400 4210 4220 4170
3月   4270 7450 6360 5940 4740 3980 3920 3890 3890
4月 2950 4450 6940 5790 5470 4140 3440 3580 3020
5月 3060 4840 6800 5940 5590 4260 3610 3570 3200
6月 3130 5490 6900 5910 5530 4250 3610 4020 3680
7月 2990 5730 6740 5980 5460 4260 3630 3980 3690
8月 3130 5800 6690 5850 5380 4260 3660 3850 3020
9月 3290 6440 6670 5740 5230 4210 3730 3770 3550
10月 3220 6220 6830 5920 5150 4050 3790 3930 3800
11月 3410 6600 6450 5960 5090 4160 3990 4070 3890
12月 3540 6890 6430 6010 5050 4270 4070 4080 3850

2018年4月から2019年3月の1年間
2018年4月から2019年3月の1年間に東電1443名、下請9863名、合計1万1306名が従事した。
その内、東電192名、下請け1663名、合計1855名が、2016年4月からの放射線管理期間の新規従事者であった。
最大被ばく線量は19.90mSv、平均被ばく線量は2.44mSv、総被ばく線量は27.5人・Svであった。
これらは事故後8年間で最も低くなっている。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が6.3~14.1mSvと高いレベルが続いている。
最大累積線量は2017年6月に17.11mSvの人(協力)が出て、その後8月まで被ばくしていない。12月に19.90mSvの人(協力)が出てその後最大累積線量は2018年3月まで増加せず、この労働者は放射線業務から外れたと推定される。

●従事者の16.1%、1815名が白血病労災認定基準の年5mSv を超えた
事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者の7%が白血病労災認定基準の年5mSvを超える被ばくをしたのに比べると、2倍以上の高い割合となっている。

2017年4月から2018年3月の1年間
2017年4月から2018年3月の1年間に東電1530名、下請1万2413名、合計1万3943名が従事した。
その内、東電238名、下請け2855名、合計31893名が、2016年4月からの放射線管理期間の新規従事者であった。
最大被ばく線量は32.74mSv、平均被ばく線量は2.69mSv、総被ばく線量は37.5人・Sv、20mSv超えは74人(すべて下請け)であった。
これらは事故後7年間で最も低くなっている。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が7.5~12.9mSvと高いレベルが続いている。
最大累積線量は2017年4月から3カ月で累積20.56mSvの人が出て、7月には25.53mSv、8月には29.53mSv、9月には29.57mSvとなっている。最大累積線量は2018年2月まで後増加せず、この労働者は放射線業務から外れたと推定される。
東電は、「年50mSv 基準」に対しては「年18mSvに達した時点で状況を確認し、以降の線量管理方法等について関係者と協議する(2013年12月3日)」としているが、実際には更に被ばくさせていると考えられる。
最大累積線量は2017年度末には32.74mSvとなっている。

●20mSvを超えた労働者
2017年度に20mSvを超える被ばくをした労働者は74名にのぼる。事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者で20mSvを超えた人は7名であり、イチエフではその10倍にも達する過酷な被ばく状況である。

●従事者の16.8%、2348名が白血病労災認定基準の年5mSvを超えた
事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者の7%が白血病労災認定基準の年5mSvを超える被ばくをしたのに比べると、2倍以上の高い割合となっている。

2016年4月から2017年3月の1年間
2016年4月から2017年3月の1年間に東電1678名、下請約1万4174名が従事した。平均被ばく線量は2.87mSv、総被ばく線量は45.5人・Sv、20mSv超えは210人であった。
これらは事故後6年間で最も低くなっている。高線量・大量被ばくをもたらした凍土遮水壁工事が終わり、2・3号機格納容器内調査では遮へいにより被ばく線量を一定抑えられたことによると考えられる。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が7~19mSvと高いレベルが続いている。
東電は、「年50mSv 基準」に対しては「年18mSvに達した時点で状況を確認し、以降の線量管理方法等について関係者と協議する(2013年12月3日)」としているが、実際には更に被ばくさせている。
2016年4月からわずか3カ月で累積32.46mSvの人が出ている。最大累積線量は11月には38.76mSv、12月には38.3mSvとなっている。最大累積線量はその後増加せず、この労働者は放射線業務から外れていると推定される。

●20mSvを超えた労働者
2016年度に20mSvを超える被ばくをした労働者は210名にのぼる(2017年4月末発表値)。事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者では7名であり、イチエフではその30倍にも達する過酷な被ばく状況である。

●従事者の18%、2845名が白血病労災認定基準の年5mSv を超えた
白血病労災認定基準の年5mSv を超える被ばくをした労働者は、2009年度、事故前の全国の原発被ばく労働者の7%であった。2016年度、イチエフでは従事者1万5852名の17.9%、2845名にのぼる(2017年4月末発表値)。

表1 2016年度の被ばく状況(2016年4月~2017年3月)
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
積算20mSv超え人数 0 0 6 15 25 32 53 78 93 114 154 210
積算5mSv超え人数 42 148 395 639 817 1003 1270 1586 1860 2136 2471 2845
4月以降従事人数 9897 10693 11616 12294 12823 13383 13857 14338 14651 15041 15503 15852
各月最大線量(mSv) 9.78 9.70 13.81 10.70 7.10 8.80 8.34 12.00 12.60 11.00 13.70 18.92
積算最大線量(mSv) 9.78 19.28 32.46 33.36 35.81 36.21 36.21 38.76 38.83 38.83 38.83 38.83


表2 2016年4月~2017年3月の被ばく状況
区分(mSv) 東電社員 協力企業
20超え~50以下 0 210 210
10超え~20以下 20 1140 1160
5超え~10以下 89 1386 1475
1超え~5以下 401 4361 4762
1以下 1168 7077 8245
1678 14174 15852
最大(mSv) 14.75 38.83 38.83
平均(mSv) 1.25 3.07 2.87

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