福島原発事故除染労働


放射性物質対処特措法と除染対象地域

・福島原発事故により、東北・関東の広大な地域が放射能汚染された。
・2011年8月4日に公布された「放射性物質対処特措法(議員立法)」の基本方針で年間1ミリシーベルト以上の追加被ばくが想定される地域が除染対象とされ、避難指示11市町村とその他県外を含む104市町村で福島第1原発を上回る規模の労働者が除染作業に従事している。
・除染費用は法により、東電負担である。(法第44条 ・・・当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする。)
・除染特別地域(福島第1原発から半径20キロ以内の警戒区域と、計画的避難区域に指定された地域)の除染は国が除染計画を策定し除染を進めている。
・汚染状況重点調査地域は自治体が行っている。

表1 特別除染地域
楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、川俣町、飯舘村の全域
田村市、川内村、南相馬市の一部

表2 汚染状況重点調査地域
市町村数 対象市町村
岩手県 3 一関市、奥州市及び平泉町の全域
宮城県 8 石巻市、白石市、角田市、栗原市、七ヶ宿町、大河原町、丸森町、山元町、亘理町
福島県 40 福島市、郡山市、いわき市、白河市、須賀川市、相馬市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、
国見町、大玉村、鏡石町、天栄村、会津坂下町、湯川村、三島町、昭和村、鮫川村、会津美里町、
西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、石川町、玉川村、平田村、浅川町、
古殿町、三春町、小野町、広野町、新地町、柳津町
田村市、南相馬市、川俣町、川内村のうち警戒区域又は計画的避難区域を除く区域
茨城県 20 日立市、土浦市、龍ケ崎市、常総市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、取手市、牛久市、つくば市、
ひたちなか市、鹿嶋市、守谷市、稲敷市、鉾田市、つくばみらい市、東海村、美浦村、阿見町、
利根町
栃木県 8 佐野市、鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、塩谷町、那須町
群馬県 12 桐生市、沼田市、渋川市、安中市、みどり市、下仁田町、中之条町、
高山村、東吾妻町、片品村、川場村、みなかみ町
埼玉県 2 三郷市、吉川市
千葉県 9 松戸市、野田市、佐倉市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市、印西市、白井市

除染労働従事者数

環境省の「除染事業誌」によれば、延べ従事者は、染特別区域では2018年1月末時点で1,360万人日、汚染状況重点調査地域では2017年11月末時点で1,800万人日である。
  延べ従事者数(出典:環境省「除染事業誌」)
  ・除染特別地域(2018年 1月末時点)    :1,360万人日
  ・汚染状況重点調査地域(2017年11月末時点):1,800万人日

除染特別区域については、放射線影響協会から統計が公表されており、2016年12月までに7万7千人が除染作業に従事している。
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  <放射線影響協会の公表資料をもとに作成>
  地域A:飯館村、川俣町、南相馬市、浪江町   地域C:川内村、楢葉町、広野町、大熊町
  地域B:葛尾村、田村市、双葉町、富岡町    その他:JR、高速道路など
除染作業全体では約18万人が従事したと推定される。

除染労働の危険手当

・除染特別区域の除染労働には給料以外に国の危険手当が支給される。2014年3月までは1律1万円であったが、4月から居住制限区域、避難指示解除準備区域は6600円となっている。
・危険手当が支給されても通常給料は最低賃金でそこから食費や寮費等が引かれる。手取り1日1万数千円という募集が当たり前となっている。

労働災害

 住宅除染では墜落,転落災害が、 森林除染では動作の反動、斜面での転倒、ねん挫など無理な動作による災害が、 仮置き場・その他では重機関連災害や積み上げられた「フレコンバッグ」からの墜落・転落災害が多く発生している。
 福島労働局のまとめによると、2015年末までに発生した除染作業による労働災害は死亡7件、休業4日以上の負傷236件となっている。
 除染労働による労働災害は福島県における東日本大震災復旧・復興工事の労働災害の大半を占めている。負傷数で比較すると、2013年は60%、2014年は70%、2015年は80%を占めている。
表3 福島県における東日本大震災復旧・復興工事の労働災害発生状況
(休業日4日以上の死傷)
  全数 うち除染等業務分
死亡負傷 死亡負傷
201209209
20136110466
20144106278
20156104183
合計195227236
  出典:働く人たちとともに ~平成28年度 労働行政のご案内~ 厚生労働省 福島労働局

健康状態

 南相馬市立総合病院の調査で、除染作業員に生活習慣病が高く、その多くが未治療状態であることが指摘されている。
 入院した住所が相馬郡、双葉郡以外の除染作業員113名のうち、72人(63.7%)が高血圧で、うち57人が未治療であった。また、27人(23.8%)が糖尿病で18人が未治療であった。健康保険に非加入者が11人いた。
 参考:Vol.016 福島第一原発事故後の除染・復興作業員における入院時の生活習慣病に関する後方視的観察研究 医療ガバナンス学会 (2017年1月23日 06:00)
 URL http://medg.jp/mt/?p=7280

除染労働の被ばく線量記録を全員個人計測に

・2012年7月に「除染電離則」が制定された。
・空間線量率が毎時2.5 マイクロシーベルト(5mSv/年)以下では、代表者が測定するなど簡易な線量管理で可能とされている。
・個人の被ばく線量は健康管理、労災補償にとって重要な記録であり、個人線量計による計測とさせることが課題である。

除染労働者の線量登録システム

・下請事業者が線量記録を長期間保存できないことが危惧されたが、やっと2014年4月に除染労働の個人被ばく線量登録制度が発足した。
・私たちは2013年6月24日の政府交渉で政府に登録制度の確立を求めた。事前質問で環境省はいまだに引き渡し状況は把握していないことが明らかになり、一方厚労省は「線量が確定次第、中央登録センターに速やかに登録することが望ましいと考えている。」との見解を示したので、これらの回答を踏まえて交渉で環境省の対応を追及した。交渉の結果、環境省から、専門知識のある厚労省の協力を得て対応したいとの回答を引き出した。
・2013年8月に、除染事業を受注しているゼネコン7社、線量管理関係の事業者2社、その他1社が自発的に参集し、「除染等業務従事者等被ばく線量管理制度検討会」が発足。オブザーバーは厚生労働省、環境省、日本建設業連合会、全国建設業協会、電気事業連合会等。事務局は放射線影響協会。
・2013年12月26日に、「最終とりまとめ」を決定。地方自治体又は環境省以外の国の機関の発注事業は、平成26年4月1日から 発足となった。
除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度の発足について(放射線影響協会)

除染労働者の被ばく状況

2012年~2016年の被ばく状況が放射線影響協会から報告されている。
累積15mSv超え~20mSv以下が11名、10mSv 超え~15mSv 以下が123名、5mSv 超え~10mSv 以下が1,465名などとなっている。
表4 除染労働者の被ばく状況(2012年~2016年)
線量区分(mSv) 5年間関係工事件名数 計人数
1 2 3 4 5 6 7 8以上
15を超え20以下 0 0 0 2 0 1 3 5 11
10を超え15以下 23 4 5 24 11 21 12 23 123
5を超え10以下 121 93 217 333 238 223 115 125 1,465
1を超え5以下 4,466 6,031 5,624 3,986 2,192 987 422 290 23,998
1以下 38,221 9,102 2,775 797 264 102 49 44 51,354
合計人数 42,831 15,230 8,621 5,142 2,705 1,334 601 487 76,951

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