除染土壌再利用政策の撤回を

 環境省は、福島県内の除染によって生じた放射能汚染土壌約14万m3のうち、8000ベクレル/kgまでの汚染土壌を、道路や農地に再利用する政策を進めている。
 これによって除染によって生じた汚染土壌の80%が再利用できるとしている。
 再利用にあたり、埋め立て処分の工程では労働者及び一般公衆の追加被ばく線量は年1mSv、埋設後の一般公衆の追加被ばく線量は年間10μSvを、それぞれ超えないとされている。
 環境省は2017年、南相馬市小高区の仮置き場で、除去土壌の上に覆土を重ねた盛土をつくり空間線量や地下水、人への追加被ばく線量などを測定した。
 現在、飯舘村長泥地区で帰還困難区域の除染と引き換えに地元の同意を取り付け、農地整備での汚染土壌再利用の実証事業を強行している。
 二本松市と南相馬市では住環境付近で再利用を行う実証事業を行おうとしているが、いずれも住民が強く反対し、中断している。
 環境省は「再利用の手引き」を作成し、自治体に配布する計画を進めている。

除染土壌再利用政策の問題点


除染土壌再利用は汚染土壌の最終処分である。


除染土壌を自治体に押し付け、福島原発事故で被ばくした住民にさらに被ばくを押し付けるもので、人権侵害である。


再利用基準はクリアランスレベル(100ベクレル/kg)の80倍にも達するもので、ダブルスタンダードである。


クリアランスレベルに減衰するには170年もかかり、その間の保安は保障されない。


埋め立て処分の工程で周辺居住者(子ども)の外部被ばくが最大で年0.25mSvにもなるとされている。





埋設後の公衆の追加被ばく線量は年間10μSv以下とされているが、これは放射線審議会基本部会報告「放射性廃棄物の浅地中処分における規制除外線量について」(1987年12月)を踏襲したものである。被ばくのリスクは、広島・長崎の原爆被爆者の調査によって、当時考えられていたものよりも10倍高いことが分かっている。


8000Bq/kg以下再利用問題
富岡町にある既設の処分場「エコテック」への除染土壌搬入問題
2016年8月23日政府交渉

福島県の指定廃棄物最終処分場(フクシマエコテッククリーンセンター)への指定廃棄物埋設を撤回し、住民合意抜きの工事着工を止めよ。
中間貯蔵所とは別に、福島県富岡町にある既設の処分場「エコテック」を国有化し特定廃棄物を埋立処分する案が具体化し、水田の中に広い搬入通路が作られた。
搬入が本格化すれば汚染土壌を積んだ多数の10トン車が通行する。地区住民は生活圏で大量の汚染度の搬入が行われることの安全性に懸念を持ち、強く反対している。
2016年8月23日の8団体政府交渉で、脱原発福島県民会議を通じて、富岡町の地区住民から「搬入口と搬入通路の2地区との協定を結べ」を交渉してほしいとの要請があった。
案内チラシ・要請書  質問書  要請の根拠

当日の交渉では、福島の参加者が中心に発言・追及した。
回答:「エコテックへの搬入までに地区との協定を結ぶ」
(注)協定を結ぶまでは搬入しないとまでは引き出せなかった。
その後、2017年11月17日に搬入が開始された。

線量低下を理由とする廃棄物処理のあり方を撤回し、原発事故前の基準に基づき処理せよ。 回答:管理下の利用であり、ダブルスタンダードではない。70年耐用年数は技術的なものではない。

交渉で浮かび上がってきた課題
再利用化の目的は、クリアランス導入同様、経済的負担の軽減にある。
課題:長期管理の保証、廃棄物の流れの記録、廃棄物の被ばく評価などの追及。

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