東京電力福島第一原発事故の収束作業に携わり、その後咽頭がんを発症した男性2人について、富岡労基署が9月6日付で労災認定した。
事故後収束作業に従事した労働者の被ばくによるがんの労災認定は8人目で、咽頭がんでは初めて。
厚労省は新たに、咽頭がんと皮膚がんの一種「悪性黒色腫」について労災認定の条件をまとめた。
収束作業に関わった人の被ばくによるがんの労災申請は計28件で、白血病3件、甲状腺がん2件、咽頭がん2件、肺がん1件が認められた。11件は不支給が決まり、9件が調査中。
不認定には、少なくとも、膀胱がん、喉頭がん、肺がん、肝がん、膵がんが含まれる。
なおこれらの不認定事例は、原爆被爆者の場合は原爆症として認定される。原爆症認定基準は3.5km以内で被ばく(1mSv以上被ばく)
白血病 |
2011年11月~2013年12月の1年半建設会社社員として玄海、福島第一で作業。19.8mSv被ばく。 そのうち2012年10月以降の1年1カ月間は、福島第一原発で作業。15.7mSv被ばく。 会社を辞めたあと、2014年1月に白血病と診断される。2015年10月20日に労災認定。 |
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白血病 |
2011年4月~2015年1月の3年9カ月間機械修理会社社員として福島第一で作業。約99mSv被ばく 2015年1月に健康診断で白血病と診断され、2016年8月19日富岡労基署が労災認定 |
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甲状腺がん |
1992年から2012年まで20年間、福島第一原発など複数の原発で原子炉の運転や監視業務などに従事し、累積149.6ミリシーベルト(mSv)被ばくした。 2011年3月から2012年4月まで、福島第一原発事故の緊急時作業・収束作業(水量計や圧力計などの確認、注水ポンプなどの燃料補給など)に従事。1号機と3号機の原子炉建屋の水素爆発時も敷地内で作業に当たっていた。 この期間の被ばく線量は139.12mSvで、うち約40mSvは内部被ばくであった。 東電は甲状腺等価線量と全身実効線量の換算係数として1/20を使っているので、この男性の甲状腺等価線量は800mSvとなる。 2014年4月に甲状腺がんと診断され、既に切断手術を受け職場復帰し、現在も通院を続けている。 2016年12月16日、甲状腺がんが富岡労基署で労災認定された。 |
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白血病 |
1994年~2016年2月の約19年間、東電社員として福島第一で作業。約99mSv被ばく。 うち、約91mSvが事故発生から2011年12月までの緊急時被ばく作業による。 2016年2月に健康診断で白血病と診断され、2017年12月13日、厚労省検討会が業務上と結論 |
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肺がん |
1980年6月~2015年9月のうち約28年3カ月間、福島第一原発を中心に複数の原発で放射線管理業務などに従事。累積被ばく線量は195mSv。 うち、約34mSvが事故発生から2011年12月までの福島第一原発緊急時被ばく作業による。事故後の福島第一原発での業務による2015年9月までの累積被ばく線量は74mSv。 2016年2月に肺がんを発症し、死亡。死亡時期は遺族の意向で明らかにされていない。2018年8月28日、厚労省検討会が業務上と結論、水戸労基署が8月31日付けで労災と決定した。 |
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咽頭がん |
東電社員として従事した60代男性。1977年~2015年のうち35年間、放射線業務に従事した。 2011年3月の事故後、福島第一原発でがれき撤去や原子炉への注水作業など原発の構内で収束作業に従事した。 累計の被曝線量199ミリシーベルトのうち85ミリシーベルトが事故対応による。 2018年12月にがんを発症した。 2021年8月30日、厚労省の検討会が業務上と結論、9月6日付けで富岡労基署が労災認定した。 |
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咽頭がん |
2019年の労災申請当時40代で、その後死亡した東電の協力会社の放射線技師。 1996~2019年のうち96年以降延べ約15年間、X線撮影業務などに従事した。 2011年3月の事故後19年まで、放射線量測定業務などに従事した。 累計の被曝線量386ミリシーベルトのうち、事故対応によるものは44ミリシーベルト。 2018年8月30日、厚労省の検討会が業務上と結論、9月6日付けで富岡労基署が労災認定した。 労災認定は死亡後であった。 |
データベース | ・緊急時作業従事者に限り、全員をデータベースに登録。 ・被ばく線量、健康診断結果を登録。 |
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相談窓口 | ・各都道府県に設置 | ||
緊急時作業の被ばく線量と施策 | 50mSv以下 | 50超~100mSv以下 | 100mSv超え |
・相談のみ | ・「手帳」交付 ・目の検査 |
・「手帳」交付 ・目の検査、がん検診 |