ウラン採掘、原発・再処理等は過酷な被曝労働、多数の被曝労働者を必要としその犠牲の上に成り立っています。
日本の原発で被曝労働に従事した労働者は30万人規模に達します。
その総被曝線量は約3000人・シーベルトとなっています。この線量からガン・白血病死に限っても300人規模と推定されます。
厚生労働省は「これを評価する立場にはない。」と被害の深刻さを認めようとしません。
「被曝限度を超えない程度の被曝線量では健康への深刻な影響はない。」として離職後の健康管理とそのための健康管理手帳の交付の必要性を認めようとせず、また、被曝労働者の救済に役立てるために必要な労災申請とその結果に関する基礎資料の開示も拒否してきました。
2005年に公表された国際がん研究所の報告によれば、20ミリシーベルト以上の被曝グループは有意に全がんの死亡率が高まっています。被曝労働者は被曝限度以下でも被害を被っているのです。また、国際的に認められている原則的な理解では、より低い被ばく線量であっても被害は線量に比例して生じます。
日本の原発被曝労働者の疫学調査資料によれば、調査対象の男性274,560人のうち、20mSv 以上の人数は、35,031人で、全体の12.8%です。このことは、健康管理手帳の必要性の大きな根拠となります。
日本の原発被曝労働者の被曝線量
線量(mSv ) | <10 | 10+ | 20+ | 50+ | 100+ |
人数< | 217,572 | 21,957 | 20,644 | 9,062 | 5,325 |
原子力発電施設等放射線業務従事者に係る疫学的調査(第Ⅲ期、放射線影響協会)より
調査対象は男性274560人、被曝線量20mSv以上の労働者は35031人で全体の12.8%
被曝労働者の健康被害を救済する唯一の社会的制度として、労災補償があります。
原発被曝労働者の場合、労災申請や労災認定の数、認定された疾病の種類が極めて少なく、被害は放置されています。
これまでに確認されている原発・核燃料施設労働者の労災補償申請・認定の状況は、JCO臨界事故による急性障害3件を含めて、申請18件、認定9件です。
例えば、イギリスでは、原子力施設労働者の補償申請は1986年から25年間に1400件でそのうち114件が認定されています。
これと比べると、日本の被曝労働者が放置されている事は歴然としています。
原発被曝労働者の場合、本人死亡後の労災申請・認定の割合がかなりあるという特徴があります。
被曝労働者は退職後の健康管理手帳交付の対象になっていません。交付対象とさせることは今後の大きな課題です。
あわせて、例示疾病を追加させることが当面の課題です。
長尾光明さんの多発性骨髄腫 白血病以外で初めての労災認定 経過 資料
長尾さんは、1977年10月から4年3ヶ月間、福島第一原発2・3号機、浜岡原発1・2号機、新型転換炉ふげんで、配管工事や現場の監督をし、70mSv被曝しました。
離職10年後頃から体調不良となり、離職17年後の1998年に多発性骨髄腫を発症しました。
2004年1月に長尾さんの多発性骨髄腫が白血病以外で初めて労災認定されました。
原発労働者が生きている内に労災認定された初めてのケースです。
厚労省は、認定基準に白血病類縁疾患の多発性骨髄腫を追加すると表明しながら、放置しました。
それが、喜友名さんの労災申請が淀川労基署により門前払いされた背景となっています。
喜友名正さんの悪性リンパ種 原発被曝労働者で初めての労災認定 経過 資料
喜友名正さんは、1997年9月から6年4ヶ月間、泊、玄界、伊方、高浜、美浜、大飯、敦賀の加圧水型原発、六カ所再処理工場で、非破壊検査に従事し、99.76mSv被曝しました。
2004年1月に体調不良で退職し、2005年3月悪性リンパ腫により53歳の若さで死亡しました。
遺族の末子さんがが2005年10月に淀川労基署に労災申請、労基署は2006年10月独断で不支給決定しました。
2006年10月に末子さんが審査請求をした頃から、反原発運動の間でこの事実が知られるようになりました。
2007年6月、支援者が「りん伺」に戻せと申し入れ、厚労省の検討会5回を経て、2008年10月に労災認定されました。
多発性骨髄腫、悪性リンパ腫を労災対象疾病リストに明記させよう
労規則35条検討会に向けた申し入れ、交渉 2月20日(金)15時~16時 参議院議員会館第4会議室
放射線被曝労働者の労災補償について、対象疾病の例示リストの追加を検討する労規則35条専門検討会が年度内に開催されます。私たちは、長尾さんの多発性骨髄腫、喜友名さんの悪性リンパ腫の労災認定を勝ち取る中で、白血病類縁疾患の多発性骨髄腫、悪性リンパ腫を労災認定疾病リストに追加すること、検討会開催を要求してきました。
厚生労働省は6年ぶりに35条検討会を開催すると表明しています。この間に、包括的規定により、長尾さんの多発性骨髄腫、喜友名さんの悪性リンパ腫が労災認定されました。...続き
申し入れ書 添付資料 質問書