①労災申請
長尾さんは多発性骨髄腫と被曝労働の関連があると感じて、医療機関や保健・労災関連の役所などに働きかけていました。しかし労災申請にはつながりませんでした。
そのような中で、長尾さんがチェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西に問い合わせて紹介された、阪南中央病院の村田三郎医師から放射線被曝が原因という診断を得て労災申請につながりました。)(原水禁ニュース2003年11月参照,資料)
②村田医師の意見書
放射線被曝が原因とする医学的、疫学的な根拠が詳細かつ総合的に述べられています。村田意見書はその後の運動の柱となりました。
③原水禁世界大会「ひろば」で開催された「広島・長崎・東海村を結んでヒバクを許さない集い(Part4)」と「長尾さんの労災申請の早期認定を求める要望書」
ヒバクを許さない集い(Part4)で原発被曝労働の実態(問題提起:石丸小四郎)と長尾さんの多発性骨髄腫の労災認定(問題提起:ヒバク反対キャンペーン)を討論しました。
提起された課題と要求を「長尾さんの多発性骨髄腫の労災認定を求める要望書」にまとめ、全国に働きかけることになりました。
原水禁大会での取り組みを通じてヒバクシャ・大会参加者と連帯することで運動への支持が拡大しました。
要望書の賛同者を全国に拡大することを通じて長尾さんの労災認定を求める声を目に見える形で拡大することができました。
(2003年9月12日に提出、2004年2月12日現在の賛同者:団体89、個人401名)
④ 厚生労働省交渉(7月24日、9月12日、10月9日)
3回の厚生労働省交渉を通じて、医学的・疫学的資料を基に労災認定の根拠を徹底的に主張しました。
私たちの主張点は主に、
(1) 多発性骨髄腫が白血病類縁性であること、
(2) クリントン/ゴア調書関連の疫学調査や米・英・カナダ3カ国調査などの主要な疫学調査では、
多発性骨髄腫と被曝線量に関係があることが示されていること。
(3) 労働者保護の立場に立ち、基発810号の白血病認定基準を適用するべきこと、
(4) 検討会を公開すること、
でした。
交渉の中で、厚生労働省が米エネルギー省(DOE)関連施設労働者の健康被害補償に関するクリントン/ゴア調書と疫学調査および既に2001年から実施されている補償実態などについて、具体的な資料も情報も持ち合わせていないことが明らかになりました。
資料を示しながら行った我々の働きかけは大変有効でした。
また、市民グループの提出した資料や意見を専門家の検討会に渡すことを確約させました。
ヒバク反対キャンペーンからは、厚生労働省および専門委員の検討会に向けた「要請書」と「参考資料」を提出し(10月9日)、これらは検討会の資料として反映されました。
厚生労働省交渉に当たっては北川れん子さん(当時衆議院議員)のご尽力を忘れることはできません。北川れん子さんは国会議員の先頭に立ち、短い期間に3度の交渉が実現するよう厚生労働省に働きかけて下さいました。またご自身も一貫して鋭い質問で追及されました。
[-継続して追及する他の交渉課題-]
長尾さんの労災認定問題と並行して、原発被曝労働者の被害の放置についておよび被曝労働者の被曝労働の実態について交渉してきました。
厚生労働省は労災申請件数が少ないことは一定認め、相談に応じるのでどんどん来て欲しいと答えましたが、過去約30年間の累積総被曝線量が2000人・Svで少なくとも200人のガン・白血病死すると推定されることについては評価する立場にないと答えています。これらの人の労災を公的に補償させること、工事の丸投げや人夫出しなどの労働体制、健康診断書の偽造の疑いなどが継続課題として残っています。
⑤厚生労働省の検討委員会(第1回:10月23日、第2回:11月20日、第3回:12月11日)
厚生労働省は4名の専門家を選び、検討会を3回開きました。
第2回と第3回では多発性骨髄腫と放射線被曝の因果関係に関する文献のレビューを行っています。
12月4日に、長尾さんに対して化学物質を扱ったことがあるかという問い合わせがあり、長尾さんは「ない」と回答しています。放射線被曝以外には多発性骨髄腫の原因がなく、検討会は放射線被曝労働との因果関係を認めたと考えられます。
今回の労災認定については、私たちの主張した白血病の基準である年5ミリシーベルトを適用したのか否かは不明です。
⑥長尾さんの原発被曝労災の認定を求める阪神地域の集い(第1回9月7日、第2回11月3日)
ヒバク反対キャンペーン、原発の危険性を考える宝塚の会、環境と原発を考える会・神戸、さよならウラン連絡会の共催で、9月7日および11月3日に「阪神地域の集い」を開催し、労災認定の闘いを共同して取り組むことを確認しました。
9月7日は、原水禁大会の報告と9月12日の厚生労働省交渉に向けた学習および意見集約を行いました。
11月3日は映画「明日が消える」(ビデオ版)の上映と全国署名運動に向けた議論を行いました。
「長尾労災連絡会」から討議に付されていた全国署名の内容に関しては、現行の認定基準である基発810号の白血病認定基準による長尾さんの原発被曝労災の認定要求にしぼるべきだという意見に集約されました。
⑦全国署名
阪神地域の集い(11月3日)での論議を踏まえて、11月6日に東京で行われた「支援連絡会」に参加しました。
阪神地域の集いに結集した市民グループ、労働組合、個人は「長尾光明さんの労災を勝ち取る会」から提起された全国署名に積極的に取り組んで来ました。 署名を呼びかけるリーフレットを作成し、署名用紙と合わせて発送しました。1月11日には阪神尼崎駅前で街頭署名活動を行いました。「阪神地域の集い」事務局には兵庫・大阪を中心に13700名を超える署名が届いています(うち7202名を2月13日に提出)。