2009年7月10日に開催された第3回「労働基準法施行規則第35条専門検討会」で、電離放射線による多発性骨髄腫および悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)を、労基則別表第1の2の「第七号10」労災認定の例示疾病リストに追加することが事務局から提案され、審議の結果了承されました。
検討会報告書(2009年12月21日)には以下のように記載されています。
(3)電離放射線による多発性骨髄腫
電離放射線にさらされる業務による疾病に関しては、現在、労基則別表第1の2の中に、物理的因子によるものとして第2号5に「電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害」が、また、がんとして第7号10に「電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫又は甲状腺がん」が既に列挙されているが、多発性骨髄腫については因果関係が明確ではなかったことから列挙されていなかった。
厚生労働省においては、放射線業務に従事したことにより多発性骨髄腫を発症したとして労災請求が行われた事案の判断を行うに当たり、医学専門家を招集して「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」を開催して検討した結果、平成16年1月、放射線被ばくと多発性骨髄腫との間に因果関係を認める報告(別添2)がなされた。
本検討会としては、医学的に十分検討された同報告書の内容を踏まえ、多発性骨髄腫を第7号10に規定する疾病に追加することが適当と判断する。
(4)電離放射線による悪性リンパ腫
電離放射線にさらされる業務による悪性リンパ腫についても、因果関係が明確ではなかったことから労基則別表第1の2に列挙されていなかったが、上記多発性骨髄腫と同様、放射線業務に従事したことにより悪性リンパ腫を発症したとして労災請求が行われた事案の判断を行うに当たり、医学専門家を招集して「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」を開催して検討した結果、平成20年10月、放射線被ばくと非ホジキンリンパ腫との間に因果関係を認める報告(別添3)がなされた。
本検討会としては、医学的に十分検討された同報告書の内容を踏まえ、悪性リンパ腫のうち非ホジキンリンパ腫を第7号10に規定する疾病に追加することが適当と判断する。
<以下省略>
以上の検討結果のとおり、本検討会としては
(1)労基則別表第1の2に
①電離放射線による多発性骨髄腫
②電離放射線による悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫に限る。)
<以下省略>
の各疾病を新たに追加すること
<以下省略>
について結論を得たので、行政においては速やかに労基則を改正することを望むものである。
実際の被害者のほんの一部に過ぎない労災申請
白血病類縁疾病による労災申請はこれまでに、悪性リンパ腫2例、多発性骨髄腫1例、白血病9件です。
原発被曝労働者の労働災害の実態を知る手がかりとして、「原子力発電施設等放射線業務従事者に係わる疫学調査」を見てみましょう。
被曝労働従事者のうち外国籍者を除いた277128人のうち生死情報が得られたなどの男性208428人について、調査期間(1986年~2002年)中の白血病類縁疾患による死亡は悪性リンパ腫81名、多発性骨髄腫32名、白血病115名と報告され、累積線量により次のように分類されています。
死因 | 累積被曝線量群(mSv) | ||||
<10 | 10- | 20- | 50- | 100+ | |
悪性リンパ腫 | 50 | 6 | 5 | 3 | 1 |
多発性骨髄腫 | 21 | 1 | 0 | 1 | 3 |
白血病 | 80 | 10 | 13 | 7 | 1 |
被曝労災と労規則35条別表
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