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日本政府、核融合炉ITERの誘致を断念!

     日本政府にITERの誘致を断念させたのは反対運動の力

 ITERの建設地を決める六極(EU、日、露、米、中、韓)の閣僚級会合が6月28日、モスクワで開かれました。そこでは、幾つかの見返りを条件に日本がITER本体の誘致を誘致を断念して、仏のカダラッシュに建設することが決定されました。
 日本政府の誘致断念は、反核の市民・住民運動の大きな勝利であり、脱原子力に向けた一歩前進です。また日本の断念は、住民や市民の意向を無視して、巨額の資金を湯水のように注ぎ込み原子力の研究開発を推進してきた一つの時期が終わりつつあることを示しています。
 さらに、6月の閣僚級会合では、関連施設を日本に建設することが決定されました。次世代炉の設計研究センター、ITER遠隔実験施設、核融合科学シミュレーションセンターの3施設が候補としてあげられています。関連施設の総額は920億円で、日欧が半分ずつを負担するとされています。ITER計画への参加と関連施設の日本への建設は大きな国家資金を必要とし、さらに実証炉など次世代炉の開発・建設には莫大な資金が必要です。その一方、21世紀中に核融合炉を商業化する目途はほとんど立っていません。
 さし迫っている地球温暖化やエネルギーの問題に対処するためには、再生可能エネルギーの開発・普及やエネルギー効率の向上に国家資金と人材を回すべきだと、私たちは考えます。この点から、ITER計画を含む核融合研究開発の全面的な見直しを求めて闘いを継続すべきでしょう。
 ITERは、トリチウムなど放射性物質の危険があり、超長寿命のニオブなどを含む放射性廃棄物の処分を現地に押しつけること、核兵器の開発に結びつくこと、さらに巨額の国家資金を浪費することから、私たちは2001年以降、日本誘致反対を中心に全国各地の住民・市民、労働者、研究者など様々な社会層の皆さんと一緒にITER反対運動を行ってきました。01年5月から03年3月までにITERの日本(六ヶ所)誘致反対の署名を38700集めて文科省、内閣府に提出しました。また04年2月には108団体、524個人の賛同を得たITERの日本誘致の断念を求める要請書を文科省に提出しました。社民党の国会議員の皆さんの協力を得て、01年から04年にかけて合計10回もの文科省、内閣府等との交渉や討論を行ってきました。
 誘致の候補地点としてあげられた青森、茨城では、地元住民の方々が反対運動に立ち上がりました。
 これらのITER反対の運動、キャンペーンがITER日本誘致を阻む大きな力になったと私たちは確信しています。
 ヒバク反対キャンペーンは、特に、ITERの放射能の危険性を訴え、反対運動に参加してきました。この勝利をともに喜びたいと思います。


◆◆ 以下の記事は誘致断念が決まる以前のものです ◆◆

核融合炉は安全? とんでもないもない!!

 国際熟核核融合実験炉(ITER)は重水素とトリチウムの熱核融合反応による出力50万キロワットの連続運転を目的とする実験炉です。その設計は既に終わっており、建設費用は6000億円とされています。
 建設地については、誘致を表明した苫小牧市、六ヶ所村、那珂町の中から六ヶ所村が、反対運動の中、日本のITERの候補地に決定されています。国際的には、フランス、スペイン、カナダ、日本の4候補地のいずれにするかの協議が行われてきましたが、EU,ロシア、中国の「EU案」と日本、アメリカ、韓国の「日本案」の間で拮抗状態が続いており、EUの独自建設の動きも出ています。

*住民は事故と放射性廃棄物のダブルパンチ

 ITER計画の推進に当たっては、「核融合炉は原発に比べて安全」と宣伝されてきました。しかし、実際には事故や放射性廃棄物によって住民に被曝をもたらす危険なものであることに変わりはありません。「ITER」は被曝をもたらす新たな源泉となる危険なものです。

*トリチウム放出事故で、周辺住民は急性放射線障害の危険

 核融合炉では核融合物質として大量のトリチウムが使われます。トリチウムは放射性物質であり、これが放出されると水系や風下の住民を被曝させます。トリチウムは単にベータ線を放出する放射性物質であるにとどまらず、体内の物質の水素原子に置き換わり、そこで放射線を出すことで生物学的に大きな影響をもたらすことが指摘されています。
 国際的な最終ITER設計報告書では14グラムのトリチウムが放出される事故を想定しています。しかし、これは最大の事故ではありません。ITERには真空容器と循環系併せて、約900グラムの可動性のトリチウムが含まれています。この3分の1が放出されるだけでもトリチウム放出量は300グラムにもなります。
 300グラムのトリチウムが大気中に放出された場合、500メートル圏の住民は重篤な急性放射線障害を引き起こす1200ミリシーベルトもの大量被曝をこうむります。JCO事故で百数十メートル圏の住民があびたとされる被曝線量の数百倍もの被曝がさけられません。「安全だ」なんてとんでもありません。たった1回でも起きてはならない事故です。
 10キロメートル風下でも640人に1人のガン死を引き起こす15ミリシーベルト(公衆の年被曝限度の15倍)の被曝が生じます。風下20キロメートルでも1600人に1人のガン死を引き起こす6ミリシーベルトの被曝が引き起こされます。このように、核融合炉の大事政のもたらす被害は単に立地市町村にとどまりません。

表1.トリチウム0.3kgが大気中に放出された場合の風下住民の被曝線量
 (被曝線量は吸入による内部被曝のみで、トリチウムのもつ生物学的に特異な影響については含まれていない。)
 (地上放出、気象条件F型、風速1m/s)

  距離
  (km)
  被曝線量
 (ミリシーベルト)
  影  響  *1
0.5 1200  重篤な急性障害
1.0 410  急性障害
1.5 220  急性障害
2.0 140  70人に1人のガン死
3.0 78  120人に1人のガン死
5.0 38  240人に1人のガン死
10 15  640人に1人のガン死
20    6 *2  1600人に1人のガン死

*1 広島・長崎の被爆者疫学調査から推定した。
*2 JCO臨界事故で国は、「50ミリシーベルト以下なら被害は統計的に検出されない。」と住民の被曝を切り捨てています。

*子々孫々に被曝のツケを残す大量・長寿命の放射性廃棄物

4万トンの廃炉・解体放射性廃棄物
 核融合炉はドーナツ型の真空容器内で強い磁場をかけ、1億度の高温でプラズマ状態のトリチウムと重水素をぶつけて核融合を起こします。そのときにでる高速の中性子で容器の金属元素が放射化され大量の放射能が生み出されます。この容器は数万トンもの金属で作られており、それが放射化されて放射性物質が大量に作られるのです。
 核融合炉(原型炉)では表のような放射能がそれぞれの炉材に蓄積されます。炉はこのSSTR炉の約6分の1の出力ですが、それでもこの炉とそれほど変わらない大量の放射性物質が放射性廃棄物として処理されます。解体処分や貯蔵、廃棄処分等での作業者の放射線被曝は大変な量になります。
 ITERの「最終設計報告」によれば、廃炉・解体後の全放射性物質(コンクリート材を除く)は4万トン、100年後、クリアランスレベル以下のものを除外しても、放射性物質として残るのは1万トンから11万6千トンになっています。

表2 SSTR核融合炉の運転停止30日後の放射能

 核  種 半 減.期 放射能(ベクレル)
 鉄55 2.685年 1.28×1019
 マンガン54 312.2日 3.73×1018
 タングステン185 75.1日 1.04×1018
 鉄59 44.56日 6.69×1017
 コバルト60 5.27年 6.51×1016

数万年もの半減期を持つ放射性物質
 核融合炉では表2のような放射能だけでなく、表3のような長寿命の放射能も生成されます。放射化されて生成されるベリリウムは半減期が160万年にもなるものです。また炉本体の金属の構成元素であるニッケルが放射化されてできるニッケル59の半減期は7万5千年で、アルミニウム26の半減期は72万年、ニオブ94は2万年です。
 核融合炉で生成される放射能は長期間にわたってほとんど減っていかないものもあるのです。これら長寿命の核物質は何万年もの管理が必要です。それでもITER計画推進派は「核融合炉では高レベルの放射性廃棄物が出ないので大丈夫」としているのです。
 さらにこのような放射能の廃棄処分は立地地点で廃棄処分することを事実上の条件としてITERの日本への誘致を強行しようとしているのです。これは子々孫々まで地元住民に放射能の危険を押しつけるものです。

表3 核融合炉で生成される長半減期の核種

  核  種 半 減 期   核  種 半 減 期
  トリチウム 12.33年   ニッケル59 75000年
  ベリリウム10 160万年   ニッケル63 100年
  炭素14 5730年   ニオブ94 2万年
  アルミニウム26 72万年   コバルト60 5.27年

*「重大事故に発展しない」を前提とする文科省「ITER安全規制報告書」

 文部科学省のITER安全規制検討会は2003年11月28日 、日本にITERが誘致される場合の安全規制についての報告書「ITERの安全確保について」をまとめた。
 報告書では、ITERでは重大事故に発展しないとする安全性評価が行われている。しかし、ITERの危険性は解明されたことではなく、安全評価の結論が自明のことでもない。ITERの建設が決まれば再び本格的な論議の対象となるだろう。

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