放射線業務による疾病で労災認定は22人(2022年3月末現在)
1.東電福島第一原発事故以前の35年間で、原発被ばく労働者の放射線被ばく労災認定は白血病6人、悪性リンパ腫2人、多発性骨髄腫2人、合わせて10人でした。
2.最近は、原発や医療分野などで、放射線被ばくによる労災補償認定は常態化し、通常年1~2例です。
福島原発事故以降2022年3月末現在で、12人が放射線業務による疾病で労災補償認定されています。
福島原発事故収束作業従事者が白血病3人、甲状腺がん2人、咽頭がん2人、肺がん1人の合わせて8人、その他の原発被ばく労働で悪性リンパ腫3人、病名不明1人の合わせて4人です。
東電福島第一原発事故以前を含め、原発被ばく労働者の放射線業務による労災認定は2022年3月末現在22人です。
最近は申請件数が増加し、認定頻度も増加の傾向
増加の要因としては、
①被ばくからの年数が経過してがんの発生が増加傾向にあると考えられる
②個人線量の増加、労働者数の増加などにより、集団線量が増加している
③長尾・喜友名労災支援運動により原発被曝労働者の関心が高まった
厚生労働省もリーフレット「放射線による疾病の労災補償」を配布している。
などが挙げられます。
労災申請・認定は健康被害の氷山の一角
原発労働者の放射線業務による累積集団線量は約4100人・Svです。これから、がん・白血死は410人~1500人規模と推定されます。
労災申請・認定22件は健康被害の氷山の一角です。
例えば、イギリスの原子力産業被ばく労災制度(Compensation Scheme for Radiation-Linked Diseases)では、1982年開始以来申し立てが1710件あり、うち163件が補償されています。
被ばく労働従事者が日本より少ないと思われるイギリスに比べても、日本の労災申請・認定が桁違いに少ないことがわかります。
補償対象疾病の抜本的拡大と認定線量基準の大幅引き下げを
厚生労働省はリーフレット「放射線による疾病の労災補償」で
①白血病、16種の固形がん、白内障、皮膚障害を列挙しています。
②白血病及び白血病類縁疾病以外の固形がんでは100m以上を要件としています。
電離放射線被ばくによる疾病はこれら疾病に限らず被害は100m以上に限定できません。
現に、同じ厚労省が管轄する「原爆症」認定では、
①固形がんについては限定されていません。
②1ミリシーベルト以上で積極認定とされています。
原発被ばく労働者の労災認定に対して、補償対象疾病の抜本的拡大と認定線量基準の大幅引き下げが必要です。
健康管理手帳交付と生涯に渡る「がん検診を含む健康管理」を
2005年の原子力施設労働者の疫学調査では、20ミリシーベルト以上の被ばくで健康被害が有意に表れています。日本の原発被ばく労働者の第五期疫学調査(2005年~2010年)では20mSv以上被ばくは17%です(対象者204103人中34729人)。
健康被害は主に重篤な疾病とされるがん・白血病です。
22人の労災認定のうち、遺族補償が約3分の1にも達します(7人または8人)。これは極めて高い比率です
健康管理手帳交付と、国の責任による生涯に渡る「がん検診を含む健康管理」が差し迫った課題です。