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原子炉等規制法改定案 2月18日閣議決定、国会に上程
クリアランス制度導入のための原子炉等規制法改定案の主な問題点
1.廃棄物の搬出元、搬出先の記録義務が無い。
2.産業廃棄物処分場を主管する自治体および住民の権限が無視されている。
3.放射線被曝防止の原則に反して被曝とそのリスクが国民に強要される。
4.関連する原発および一般作業者に多量の放射線を被曝させ、健康被害をもたらす。
5.外国原子力船の廃棄物をクリアランス対象とすることは平和利用の原子力基本法違反である。
6.罰則規定がなく、「ザル法」である。
質問事項(案)
1.廃棄物の搬出元、搬出先の記録義務について
法案には搬出先の記録の義務規定がない。通常の産業廃棄物に関しては、「廃棄物を生じる事業者は、...廃棄物の種類、数量、運搬又は処分を受託したものの氏名...その他厚生省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理表を交付しなければならない」(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第12条の3)となっており、これがいわゆるマニフェストとして義務づけられている。クリアランス以下の原子力発電所廃棄物もその発生場所、放射能濃度、検認機関の氏名、等を付加したマニフェストを義務づけ、最終処分までのトレーサビリティーを明記すべきであると考えるがどうか。
2.自治体、住民との関連について
(1)法案第61条二の2に規定する書類(放射能濃度の測定及び評価を行い、その結果を記載した申請書)は環境大臣及び、廃棄処分場を主管する都道府県にまで提出されるのか。今回の法案では、処分場を主管する自治体がどのような廃棄物が処分場へ搬入されるのかを知らされないことになることになるが、これは重大な問題と考えるがどうか。
(2)この書類に加えて、種類、運搬、最終処分場、等のマニフェストが、主管自治体及び住民に公開されるべきと考えるがどうか。
(3)法案第72条の二の二において、「法案第61条の二の第1項及び第2項に対して
環境大臣は意見を述べることができる」とされているが、廃棄物処分場を管轄する自治体からの意見はどのように反映されるのか。
また、廃棄された廃棄物が申請書の記載どおりかどうかの確認の実施、及び違反した場合の返還命令を「産業廃棄物処分場を主管する自治体の権限」と明記すべきであるがどうか。
3.放射線被曝のリスクが国民に強要されることについて。
法案第61条の二において、放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして、その基準(放射性物質の濃度)を主務省令で定めるとしている。
原子力安全委員会は、上記基準の目安線量を10マイクロシーベルト/年とし、そのヒバクによるリスクが10-6/年のオーダーであると、パブリックコメント回答(平成16年12月:参照文献1)で述べている。
(1)本法案は、医療被曝のように被曝に伴う利益が何もないにもかかわらず放射線障害防止の措置をとらず、電力・原子力産業の廃棄物管理費を削減するために被曝のリスクを国民におわすものである。このような重大なことが、国民的合意を得ているとは考えられないがどうか。
(2)放射線障害防止法の第1条(目的)に「...汚染されたものの廃棄その他の取り扱いを規制することによってこれらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保する」と放射線障害防止の原則が唱われている。本法案は国民に被曝のリスクを強要することを前提とするもので、放射線障害防止の原則に反するものであると考えるがどうか。
4.関連作業者の被曝とその健康影響について
クリアランス制度は、原発の解体作業に加え、大量の解体廃棄物の表面汚染をクリアランスレベル以下に下げるための除染作業を必要とし、放射線作業従事者の被曝を現状以上に増大させる。また、放射能で汚染された廃棄物の取扱・運搬作業などにより、放射線作業従事者でない一般の労働者に一般の国民に比べ遙かに高い線量の被曝をもたらし、その健康被害が危惧される。
本法案は、「事業者は労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならない」との電離放射線障害防止規則の基本原則(第1条)に違反するのではないか。労働者の保護という観点からどう考えているのか。
5.外国原子力船の原子炉からの廃棄物もクリアランスの対象とされていることについて
法案第61条の二項、四において、外国原子力船が対象とされている。外国原子力船とは、米国の原子力潜水艦や、原子力空母等であり、軍事用のものである。軍事利用による放射性廃棄物を現行の原子炉等規制法の枠内で取り扱うことは原子力基本法第2条(基本方針)「原子力の研究、開発及び利用は、平和目的に限り」という平和利用の原則に違反する。
(1)米軍の艦船が寄港する基地での米軍の放射性廃棄物の処理を日本で行うことは原子力基本法に違反しないと考えているのか。
(2)米軍の原子力船等から出る軍事利用による放射性廃棄物は発生者責任として、米国へ持ち帰って処理処分されるべきである。外国原子力船の放射性廃棄物の国内処理処分については、クリアランスを検討してきた各種委員会でも全く議論されておらず、それら委員会の報告書の中にも記載されていない。外国原子力船の原子炉からの廃棄物をクリアランスの対象とすることに関して国民の合意が得られていると考えているのか。
6.罰則規定がないことについて
法案第61条の二に関しては罰則規定がない。これはいわゆる「ザル法」であり、クリアランスレベル以上の濃度の廃棄物が放射性廃棄物でない産業廃棄物として外部に搬出されることが黙認されることとなる。この点、どのように考えているのか。
参照文献1
「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について」に対する意見募集の結果について
平成16年12月9日 原子力安全委員会 放射性廃棄物・廃止措置専門部会(P.22)