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トリチウム濃度1600ベクレル/リットルの問題点

 経産省の小委員会(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会)報告を受け、東電は2020年3月24日、汚染水を海水で薄めトリチウム濃度を1,500ベクレル/リットルとし、30年かけて海洋放出する等の「検討素案」を公表しました。
 この1600ベクレル/リットルは地下水バイパス、サブドレイン等の地下水排水の運用目標を準用したものです。

トリチウム濃度1600ベクレル/リットルの問題点
@事故前、敷地境界線量は「管理目標値0.05mSv/年」によって制限されていた。
・地下水バイパス等の排水運用目標0.22mSv/年はそれだけでも管理目標値の4倍以上である。
・事故発生時の汚染に起因する被ばくを被っている上に、さらに事故前の「管理目標」の4倍以上の「運用目標」が押し付けられた。

A特定原子力施設の指定に際して追加被ばく線量の評価値を1mSv/年以下としているが、これは公衆の被ばく限度を担保するものではない。

・評価値には事故発生時に生じた汚染に起因する被ばく線量は含まれていない。

経過:特定原子力施設の指定と措置を講ずべき事項
@特定原子力施設の指定
 東電福島第一原発は2012年11月7日、原子力規制委員会により、原子炉等規制法第64条の2第1項の規定に基づき特定原子力施設に指定されました。
第六十四条 原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。以下この条並びに次条第一項及び第二項において同じ。)は、その所持する核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉に関し、地震、火災その他の災害が起こつたことにより、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに、主務省令(第三項各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、当該各号に定める大臣又は委員会の発する命令をいう。)で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。
第六十四条の二 原子力規制委員会は、原子力事業者等がその設置した製錬施設、加工施設、試験研究用等原子炉施設、発電用原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄物埋設施設若しくは廃棄物管理施設又は使用施設において前条第一項の措置(同条第三項の規定による命令を受けて措置を講じた場合の当該措置を含む。)を講じた場合であつて、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物若しくは原子炉による災害を防止するため、又は特定核燃料物質を防護するため、当該設置した施設の状況に応じた適切な方法により当該施設の管理を行うことが特に必要であると認めるときは、当該施設を、保安又は特定核燃料物質の防護につき特別の措置を要する施設(以下「特定原子力施設」という。)として指定することができる。

A措置を講ずべき事項
 あわせて原子力規制委員会は、東京電力に対して「措置を講ずべき事項」を示し、「実施計画」の提出を指示しました。
措置を講ずべき事項(抜粋)
8.放射性固体廃棄物の処理・保管・管理
○施設内で発生する瓦礫等の放射性固体廃棄物の処理・貯蔵にあたっては、その廃棄物の性状に応じて、適切に処理し、十分な保管容量を確保し、遮へい等の適切な管理を行うことにより、敷地周辺の線量を達成できる限り低減すること。
9.放射性液体廃棄物の処理・保管・管理
○施設内で発生する汚染水等の放射性液体廃棄物の処理・貯蔵にあたっては、その廃棄物の性状に応じて、当該廃棄物の発生量を抑制し、放射性物質濃度低減のための適切な処理、十分な保管容量確保、遮へいや漏えい防止・汚染拡大防止等を行うことにより、敷地周辺の線量を達成できる限り低減すること。また、処理・貯蔵施設は、十分な遮へい能力を有し、漏えい及び汚染拡大し難い構造物により地下水や漏水等によって放射性物質が環境中に放出しないようにすること。
10. 放射性気体廃棄物の処理・管理
○施設内で発生する放射性気体廃棄物の処理にあたっては、その廃棄物の性状に応じて、当該廃棄物の放出量を抑制し、適切に処理・管理を行うことにより、敷地周辺の線量を達成できる限り低減すること。
11. 放射性物質の放出抑制等による敷地周辺の放射線防護等
○特定原子力施設から大気、海等の環境中へ放出される放射性物質の適切な抑制対策を実施することにより、敷地周辺の線量を達成できる限り低減すること。
○特に施設内に保管されている発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量(施設全体からの放射性物質の追加的放出を含む実効線量の評価値)を、平成25年3月までに1mSv/年未満とすること。

敷地境界線量(評価値)の 目標達成について(2016年3月30日 東京電力)
2015年度末における敷地境界線量は合計約0.96mSv/年(内訳は ,以下のとおり)であり、中長期ロードマップにおけるマイルストーン である目標値1mSv/年を達成と評価。
2015年度末における評価値
「評価地点:bp7」
タンクに起因する直接線・スカイシャイン線0.21mSv/年
タンク以外に起因する直接線・スカイシャイン線0.44mSv/年
構内散水に起因する直接線・スカイシャイン線0.066mSv/年
液体廃棄物の排水に起因する実効線量0.22mSv/年
気体廃棄物の放出に起因する実効0.03mSv/年
合 計0.96mSv/年

液体廃棄物の排水に起因する実効線量の評価値として割り当てられた0.22mSv/年は、地下水バイパス、サブドレイン、地下水ドレインからの地下水くみ上げ・浄化処理(必要な場合)・海洋放出における運用目標値です。
地下水バイパス、サブドレインくみ上げ水の排水(海洋放出)運用目標
核種濃度(Bq/L)告示濃度(Bq/L)告示濃度比
全β(Sr90)5300.167
セシウム1341600.017
セシウム1371900.011
トリチウム1600600000.027
告示濃度比の総和0.0221

事故発生時の汚染に起因する被ばくを被っている上に、さらに事故前の「管理目標」の4倍以上の「運用目標」が押し付けられたのです。