3月6日 中央行動で厚労省・検討会に労災認定を迫る 署名3万6655筆を提出
3月6日、喜友名末子さんを先頭に中央行動に取り組み、衆議院議員会館にて、1時から「市民と議員の院内集会」、2時から厚生労働省交渉を行いました。
市民と議員の院内集会
国会議員・秘書10名を含めて、50名の参加があり、末子さんの決意表明に続き、支援の発言が多数続きました。参加者の多くが交渉にも参加されました。
厚生労働省交渉
2時から厚生労働省交渉に移りました。冒頭に、全国から寄せられた3万6655筆の「喜友名さんの悪性リンパ髄を労災認定せよ」の署名を提出し、厚労省に労災認定を求めました。
喜友名末子さんおよび金高弁護士(代理人)の意見陳述(要旨)
末子さんは、「私は反対したが、夫は国がちゃんと管理しているから大丈夫だといって働き続けた。家族の幸せ、夫の命を奪われて時間が止まっている。夫の無念を晴らしたい、労災補償は当然だと思って申請したのに却下された。今回再検討されることになったので、是非とも認定を求める。」ときっぱり主張されました。
提出された追加陳述書には、被曝線量が限度を超えそうになるたびに沖縄に帰り途絶えた原発労働収入の代わりにアルバイトをしていたことが具体的に書かれています。また、「国は、危険な場所で人が働くことを許している以上、それによって健康被害が生じた場合には、当然、本人や遺族に対して、誠意をもって対応していただきたい、そのように思います。そして、私のような悔しい思いを、これ以上誰にもさせないように、きちんと徹底していただきたいと思います。」と訴えておられます。
厚生労働省は、「思いといいますか、それを申し述べていただきましたので、それは十分受け止めて持ち帰らせていただきたい。」と追加陳述書を受け取りました。
金高弁護士の「りん伺案件であるのに門前払いされた。他に挫折している人がいるのではないか。」との指摘と参加者からの関連発言に対して厚生労働省は、「今回は認定基準上の対象疾病ではないのでそれに基づくりん伺ではないけれども、電離放射線という請求なので、より慎重な検討をすべき事案ではないかとは思う。今回、あるいは今後も新しい事例が出たら、地方局、監督署に対してこういう事例がありますということを周知していきたい。新しい疾病として別表に加えるかどうかの検討会を来年度開催する。」との趣旨を回答しました。
私たちは改めて、危険な現場で働いて放射線と関係のある病気になった労働者を救済するのがこの労災補償の原点である。放射線が原因で無いと言う具体的な証明が無い限り認定すべきである。白血病認定基準の3倍も被曝しているので認定するべきである。喜友名さんの被曝した100ミリシーベルトで悪性リンパ腫が増加するというしっかりした疫学調査が存在する。これを無視することは補償の精神に反すると主張しました。
厚生労働省は「病気によっては100パーセントこれが原因とわかるものばかりではない。100パーセントの立証を求めているものではない。」と認定の考え方の一部を答えました。
喜友名末子さんは、「放射線を浴びて働いた人は、すぐ出るか後になって出るか、ガンや病気になる危険がある。退職者が無料で健康診断を受けられるようにしてほしい。」と追加要求を延べられました。
厚生労働省、検討会への追加申し入れ
昨年12月13日の申し入れ書において、「喜友名さんの労災申請に対して、非例示疾病であることの他に、過酷な原発被曝労働を強要され健康への影響がないがしろにされた点においても厚生労働省・検討会で取り上げられるべきである。」と指摘し、私達が入手・分析し得た資料(添付資料1)から過酷な被曝労働を示す事実7点を示しました。
私たちは、過酷な被曝労働の一方で健康への影響がないがしろにされたことは明らかで、労災認定は当然の償いであると考えています。
遺族・関係者は補償は当然のことであると信じ、労災申請されました。改めて、労働行政の責任元の厚生労働省と検討会に労働者保護の責任ある対応を求めるものです。
その後の私たちの調査を踏まえて、下記の事項を追加申し入れします。
1.喜友名さんは主として原子力発電所、再処理工場の定期検査の現場で非破壊検査に従事したとされています。しかし、喜友名さんは非破壊検査従事者の平均被曝と比べて11倍から40倍も被曝しています。(追加資料1)原子力発電所における定期検査に従事したことが大きな要因と考えられます。原子力発電所における業務の調査様式での追加調査を行うことを求めます。
2.喜友名さんが放射線業務に従事開始した時期を調べると、定期検査の開始前から従事しているケースを含め、定期検査の初期に従事しているケースが大半を占めています。(追加資料2)
2004年の美浜3号炉事故で、原発を稼動させながら定期検査の準備作業を行っていたことが多数の労働者の命を奪い、大きな問題となりました。喜友名さんも定期検査開始前の危険な現場で働いていたのです。この観点から新たに、喜友名さんがどのような現場でどのような作業を行っていたのかについて調査する必要があると考えます。
定検開始前の従事例、定期検査初期の従事例について調査することを求めます。
3.喜友名さんの労働実態を知ることは遺族・関係者にとっても必要なことであり、知らされるべきです。喜友名さんの従事した作業に係る、作業計画・労働環境の資料、作業記録が遺族・関係者にわたるよう、厚生労働省のご尽力をお願いします。
追加申し入れに対する厚労省の回答
業務上外の判断にあたって必要な事項がこれからの検討の中でも出てくればそれはぜひ調査をさせたい。
第1項については、たしかにその通りで、原発労働者として理解している。原発の中で非破壊検査をした、主たる被曝は当然原発なんだろうと思っている。
参加者の関連発言と厚労省の回答(発言は要約しています)
参加者 どこが問題になっているのか。労働現場の実態を踏まえて検討するのは最も基本的なやり方だ。非破壊検査がどのようなものか、実態は理解しているのか。配管に抱きつくようにして検査する。そうすると喜友名さんのこれだけハードな被曝というのは納得できると思う。原子力発電所の中で喜友名さんがどういう労働をしていたのかというところがこの労災認定の原点じゃないかと思う。白血病類似疾患の、年間5ミリシーベルトかける年数でオーバーしているから、即認定ということであれば、それはそれで結構だ。いかに外認定をするのではなくて、疑わしきは認定とい基本スタンスを明確にしていただきたい。
厚労省 仕事内容を把握して、実際の被曝線量を把握した上で、悪性リンパ腫と放射線との因果関係を見て、両方を見比べて、業務上かどうかを判断する。喜友名さんの被曝と関係を問題にしている。疑わしきは補償するのとは違う
参加者 疑わしきは補償するのとはちがうというがそれは問題だ。労災は、労働者が危険な環境で働いてなんらかの関係がある病気になったらそれを救済するというのがもともとの趣旨だ。悪性リンパ腫は被曝によって起きるとこれまでにも言っておられた。喜友名さんの悪性リンパ腫が被曝によるものでないと、絶対違うと言えないなら、救済するべき、認定すべきだ。
厚労省 病気によっては100パーセントこれが原因とわかるものばかりではない。100パーセントの立証を求めているものではない。
参加者 相当因果関係を検討するというがそのとき疫学調査が問題になる。そのとき一番問題になるのは、放射線との関係がポジティブであるという論文もればネガティブなものであるという論文も出てくる。集団の違いとか線量の大きさなどで。ポジティブな結果があるのにネガティブなものを支持して認定しないということをここの皆が危険だと思っていることだ。そんなことはやめてほしい。ポジティブな結果にある程度科学的根拠があればそれを積極的に評価して認めてほしい。
参加者 職場の胸部X線検査について、検査の有効性・有害性の見解が分かれている中で40歳以下にと決めた事例がある。これは疑わしきではないのか。喜友名さんの場合は一転して違う。厚生労働省はサリドマイド、スモン、HIV様々な問題で国民の命を大変な問題に陥れた原点には今の姿勢の問題があるのではないか。国民の命を守るなら、疑わしきは徹底して解明し、認定していくという姿勢が無ければ、薬害も労災問題も前進しないのではないか。
厚労省 電離放射線によっていろんな疾病が発症するということは認められている。
参加者 白血病基準の3倍以上被曝している。病名、その起因性が問題なのか。
厚労省 電離放射線との因果関係がどの程度認められるか。どのぐらいの線量からか。被曝線量との関係がどのようなものなのか専門家の意見を聞き、実際の労災請求事案を見比べて判断したい。
参加者 基発810を変えるのか。これを変えない限り同じ事が起きる。今回の検討会はこのレベルではないということか。
厚労省 そのとおりです。
交渉の到達点の確認
今後の検討がよりよい方向に進むよう、昨年6月から3回の交渉を重ねてきた中で見解の一致を見ている点、まだ一致を見ていないが伝えている私たちの主張点あわせて下記の8件を再確認しました。
・悪性リンパ腫は白血病類縁の疾患であり、放射線起因性がある。
・私たちは放射線被曝による悪性リンパ腫の増加を示す疫学調査についてその要点を示し、
文献レビューによらずしっかり検討することを求めている。
・悪性リンパ腫の被曝補償は世界の趨勢である。
・喜友名さんの被曝線量は白血病認定基準の3倍を超える。
・喜友名さんは過酷な被曝作業に従事していた。
・提出した申入書、添付資料をすべて検討会の資料として配布する。
・私たちは検討経過と資料の公開を求めている。
・多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などを例示に加えることについて検討会を開く。