核兵器禁止条約採択への経緯

 1970年3月に発効した核拡散防止条約(NPT)は核兵器の廃絶をめざし「核拡散防止」と「核軍縮」を目的に制定された条約です。
 NPTは非核保有国に核の製造、取得を禁止する一方で、核保有国に核軍縮のために「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を課しています。
 1987年に米ソ間で中距離核(INF)全廃条約が結ばれ、1989年ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結して、核軍縮・核廃絶への期待が高まりました。
 しかし、核軍縮の飛躍的な進展は見られず、NPTは25年期限付き条約のため、1995年に再検討会議が持たれ、無期限に延長されました。
 無期限延長の条件として、1996年までの包括的核実験禁止条約の批准が課せられていましたが、米国の不履行でいまだに実現されていません。
 また核弾頭数は最大だった約7万発からはかなり減少したとはいえ、核保有国による核廃絶を目標に据えた核削減義務は果たされず、NPT発効50年を来年に迎える現在に至っても、約1万5千発もあります。
 さらに中東などの緊張地域の非核兵器地帯創設への優先的取り組みも進んでいません。
 もう一つの無期限延長の条件の5年毎に開催される再検討会議は、米国が中東の非核兵器地帯化に反対したため2005年、2015年には決裂し、合意文書は採択されませんでした。
 この様に核兵器保有5大国(米・英・仏・中・ロ)の核独占を認めたNPT体制の下、NPT第6条「核保有国は誠実に軍縮に向けて交渉する義務がある」がいっこうに履行されない事態が続くなかで、核兵器禁止条約制定への動きが始まりました。
 それはICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)などの国際NGO、国際赤十字が進めた「核廃絶キャンペーン」や、「核兵器のいかなる使用も人道上、破壊的な結果をもたらすことを憂慮する」とした2010年のNPT再検討会議の合意に基づく、ノルウェー、メキシコ、オーストリアなど非同盟国による核兵器禁止条約の制定を目指す動きが活発になりました。
 この二つの動きが合流し、2016年には核兵器禁止条約交渉の開催を求める国連決議に至り、討論・採択の結果122か国の賛成で採択されました。
 しかし、「唯一の戦争被爆国」の日本はこの決議に反対し、条約交渉会議に参加しませんでした。

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