再改定版「放射線副読本」の撤回 文部科学省交渉 3月22日

約40人が参加し、多くの人が質問や意見を表明し、文部科学省を追及しました。
交渉報告  質問書  当日資料(近日アップ)
◆今回の文科省交渉 2019年3月22日 2時半~4時
紹介:福島みずほ事務所
呼びかけ:地球救出アクション97、ヒバク反対キャンペーン、原子力資料情報室
参加者は約40人(福島議員、石川秘書を含む)
文科省出席者 窓口担当足立(大臣官房総務課)
       橋本郁也(初等中等教育局教育課程課専門官)
       荻野雅裕(初等中等教育局教育課程課教育課程第二係長)
前半のみ   星匡哉(初等中等教育局児童生徒課専門官)
後半のみ   若林徹(大臣官房政策課専門官)
       生方裕(初等中等教育局児童生徒課課長補佐)
       和仁裕之(研究開発局原子力損害賠償対策室) 敬称略

◆署名は提出せず(次回提出)、署名用紙に賛同団体59を入れて提出した。

◆質問書に対する回答の要約
[1]配布数等
1、全国すべて(公立、国立、私学)の小学校に小学生版、中学校・高校に中高生版を直接送った。内訳は、小学生版708万部、中高生版740万部。
2、学校以外には都道府県、市町村教育委員会等に送った。内訳は、小学生版1万9000部、中高生版1万8000部。
3、配布開始の10月1日付で、都道府県教育委員会等に事務連絡文書を送った。
4、その後、追加の指示は行っていない。今後、教職員セミナーや出前授業の案内をするときに「放射線副読本を活用するものである」と知らせることにしている。
5、配布後、学校や教育委員からの反応は、部数が足りないという問い合わせだけだった。
6、2019年度予算では、小・中・高の新入生に配布する。
[2]再改訂版副読本の目的
1、放射線から始めていることは、放射線の知識を理解したうえで東日本大震災による原発事故などを学ぶ形がいいということだ。(橋本)「放射線に関する教育」は平成20年の「学習指導要領」の改訂で入った。諸外国でも放射線教育をやっている。最新の改訂で放射線は理科の中3から中2になり、重視している。「強化戦略」でも副読本改訂が指示された。今回の副読本の改訂にあたっては福島県教育委員会の意見も聞いた。放射線量が下がっている、復興が進んでいることを書いてほしいという意見だった。(荻野)
2、子どもたちを放射線の被ばくから守るということでは、副読本には食品の安全性というところで、検査を徹底しているとした。また、野生のものを食べることの注意を書いた。(橋本)
3、いじめについては、放射線に関する科学的な知識を与えることで子どもが自ら考えることができるようにした。いじめは決してあってはならないと書いた。(星)
4、偏りのない多方面からの情報を与えるという観点では、原発を推奨してはいない、また、原発、再エネについても書いてあるので考える素材になる。(橋本)
[3]福島復興について
1、福島復興の現状については、避難した5つの市町村で学校が地元に再開し、ふたば未来学園に中学校も新設された。イノベーションコースト構想が進んでいる。(若林)
2、事故被害者は救済され補償されているかに対しては、原子力損害賠償に関しては、事故との相当因果関係の認められるものは全て原賠法に基づき東電により賠償が行われることになっている。(和仁)
3、「うそを言わないこと」に対しては、科学技術審議会等で検討しており、正しい知識等に基づく情報提供が重要だと考えている。(若林)
[4]放射線による健康被害について
1、100mSv以下の被ばくでは健康被害がないように書いているが、に対して、放射線に関する専門家の意見を聞きながら作った。広島、長崎の放射線影響の研究成果から100mSv以上でがんになるリスクが上昇するということが科学的に明らかになっている。それを記載した
2、被曝労働や労災認定、被爆者援護法についても教えるべきについては、副読本は放射線に対する正しい知識を与える。それ以上は副読本に書いてない。
3、1年間に1mSv を超えて被ばくさせられたことに補償されるべきについては、答えず、治療や検査には支払うと次のように説明した。避難により病気になった治療代や薬代、避難対象者が不安感を払しょくするために受けた健康診断の費用は賠償すべきとなっている。精神的損害も相当因果関係を認められれば賠償する。(和仁)
4、17万人を超えて避難指示したことを子どもたちにどう説明するのか、に対しては、副読本の内容をどのように扱うかは、各学校が児童生徒の実態や地域の実情に応じて判断していくことになるので、具体的にどう教えるのか答えを控える。
5、放射線事故はどこで起きると想定しているのか、屋内退避や洗うことで被ばくを避けられるのか、これについては管轄外で答えられないとの回答。
6、福島事故被害者には健康診断、医療が補償されるべきではありませんかに対して,[3]の2で答えたとのこと。
[5]学校教育を政治に利用原発の是非等
価値判断には触れていないので問題ない。専門家や学校関係者の意見を聞いて作ったので、副読本の撤回は考えていない。修学旅行については、復興庁、官公庁の依頼に基づき都道府県教育委員会などに通知した。「風評に惑わされることなく現地の正確な情報に基づいて福島県への修学旅行を実施していただきたい」と。あくまでも、各学校等の判断で対応いただいている。

◆討論の要約(順序なども編集しています)
(1)放射線副読本再改訂の経過について
(私たち)「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」に基づいて改訂したのではないのか。アドバイザリーボードの議事録に出ている。
(文科省)前の改訂が4年前で、福島の状況も変化し内容を変えるべき時。「強化戦略」も策定されたので。
(私たち)初版に対しては批判があり、(初等中等課が)福島事故を踏まえたものに改訂した。今回また初版の構成に変わってしまったのは何故か。1、2章入れ替えという構成の見直しは政治的ではないか。
(文科省)事故から始めるといたずらに不安にさせる。基礎的内容からやったほうが良いとご意見をいただいた。国会議員から意見があった。(再改訂版に)福島事故はしっかり書いてある。福島県教育委員会からも改訂の打合せのときに口頭で意見を聞いた。基礎を学んだうえでということだった。福島県から要望があったかどうかわからないが、事故が起きた時の放射線の避け方は書いた。副読本の「はじめに」は間違っていない。副読本を作った主たる目的は放射線の知識を身につけさせること。科学的正しい知識がないためにいじめが起きた。事故についても、事故時に正しく行動できるようにということが目的。東日本大震災が起きていじめが起きた。いじめを防ぎたいという思いが改訂の1つの理由。
(私たち)いじめは科学的知識がないために起こったのではなく、国が被害者をいじめているから起こった。
(私たち)どこを改訂しようとしたのか。アドバイザリーボードの議事録に書いてあるが。
(文科省)放射線の影響が科学的にはっきりしていないとすると不安を煽るので、それは消した。遺伝的影響については、原爆による「遺伝的影響を示す証拠は今のところ発見されていません」と書いている。
(福島議員)1.2章入れ替えについてで国会議員からの意見があったのか?
(文科省)事実です。
(注)東京新聞3月22日に、「17年5月の参議院経済産業委員会で、福井県を地盤とする自民党議員が『第1章が原発事故で、そこから順番に子どもが見ると、放射線がすべて怖いとなりかねず、放射線、原子力は全て菌だと安易に考えかねない』と訴えた」と報道された。交渉の後、委員会議事録で確認。

(2)放射線の健康被害、科学について
(私たち)放射線のホントには「遺伝的影響はない」とかいてある。副読本がそれと違っているのは何故か。
(文科省)科学的根拠に基づくべきなので「発見されていない」とした。「強化戦略」にも下に小さくこのことが書いてある。
(私たち)発見されていないだけではフェアでない。動物実験では確認されており、影響がある可能性はある。
(私たち)放射線の影響を示す図表では1mSvのところに読めないほど小さい字で「ICRP勧告における管理された線源からの一般公衆の年間線量限度(医療被ばくを除く)」と書いてあり、日本の法律・放射線行政ではどうなっているのか書いてない。政府は1mSvを「公衆の被ばく限度」として守らせる義務がある。今回の事故で被ばくさせてしまったことをどのように認識しているのか。副読本初版には「一般公衆の線量限度」と書いてあるが。
(文科省)自分には答えられないこと。
(福島議員)1mSvが基本であることを子どもたちに教えてほしい。わかるような副読本にしてください。
(私たち)前には、「自然放射線にプラスした汚染による被ばくを考えないといけない」と書いてあったが、今回カットされた。がんのリスクが上がることを書かないといけない。生活習慣病と放射線被ばくによるがんのリスクを比較しているが、文科省の別のWeb siteには「比較できないものを比較してはいけない」と書いてある。食品と放射線のがんリスクとの関係は比較できないものだ。
(文科省)放射線を受けた時の危険性がどのくらいのものか分り易く書いた。環境省中心に作ったWeb siteから取ったものだ。
(私たち)タバコの被害ははっきりわかっているが、それは放射線被ばくの被害と掛け算または足し算だ。
(私たち)被害は気にしなくていいと言うための比較ではないか。分り易くではない。福島市の小学校で教師が被ばくで少しだけがん死が増えると教えたところ、子どもが「どうして私たちが避難しなければならなかったのかよくわかった」と納得した。被ばくの被害を教えないで、どうして避難を理解させるのか。
(文科省)学校の実態実情に応じて使っていただく。
(私たち)副読本がまちがっているとなったとき、どうするのか。科学の最新の知見を取り入れないのか。
(文科省)まちがっていない。科学的なところで、はっきりしたことは取り入れる。
(私たち)最新の知見を専門家から取り入れるということだが、どういう専門家か、偏っているのではないか。ICRPや米国のNCRPの公式報告書には100mSv以下でも影響があることを書いてある。

(3)被害者の立場に立つ、子どもの人権
(私たち)100mSv以下で影響があることは広島長崎の長年の研究で証明されている。文科省は被爆者の立場、福島の被害者の立場に立つべきだ。
(文科省)それぞれの地域に合わせて(副読本を)取り扱ってほしい。
(福島議員)どういう立場で、何にフォーカスし、何を書くかが大事。討論をしっかり受け止めてほしい。
(私たち)子どもの権利条約の問題は時間切れで討論できなかった。文科省は子どもの立場に立って人権を守ってください。

(4)放射線副読本に関連すること
(私たち)放射線以外に文科省が副読本を出しているか?過去に道徳の副読本があったことは知っているが。
(文科省)今、分らない。(福島事務所へ回答する)
(私たち)セミナーの予算は?
(文科省)セミナーと出前授業で3000万円。出前授業は日本科学技術振興財団に委託している。

(5)ビデオ撮影は拒否された
12月から政府側の方針転換と考えられる。3.11後、認めてきた公開の幅を縮めている。政府側の反撃の1つのようである。今後も粘り強く広く知らせるやり方を求めていく。

2017年5月の国会経済産業委員会の時点で、副読本改訂が政府の福島事故政策とされていたことがわかりました。東電救済、事故費用の託送料金への上乗せなどの政策と合わせて福井県選出議員に質問させており、経産省・内閣の自作自演のように見えます。政府の方針としてやっていることですから、放射線副読本を撤回あるいは改訂させるには、もっと運動を全国的に大きくしなければならないのです。署名締切は、第2次3月末、第3次6月末、さらに継続です。参議院選挙の日程などを考慮して提出と交渉(復興庁、文科省)を行いたいと思います。署名を拡げるとともに、各地で、学習討論会や教育委員会・学校への働きかけをお願いします。

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放射線副読本

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