「風評払拭・リスクコミニュケーション強化戦略(2017年12月)」

「東京電力福島第一原発事故による住民への放射線被ばくの健康影響はない。福島は復興しつつある。」と宣伝し、被害者切り捨て、復興宣伝のオリンピック、原発再稼働を目的としたものです。
2017年12月12日 第9回「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」で決定されました。  復興庁ホームページ

「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」
復興大臣のもとに、関係各省庁が出席して開催されます。
出席者:復興庁、内閣府、消費者庁、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、官公庁、環境省、原子力規制庁、防衛装備庁、福島県(オブザーバー)
<経過>
2013年3月21日  第1回「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」開催
2014年6月23日  第3回タスクフォースで「風評対策強化指針」を決定(3つの強化指針)
        @風評の源を取り除く
        A正確で分かりやすい情報提供を進め、風評を防ぐ
         この中に、・「放射線リスクに関する基礎的情報」の活用拡大
              ・学校、病院、公共施設を通じて、住民・保険医師等に幅広く発信
         とされている。
        B風評被害を受けた産業を支援する
2017年2月21日  第7回タスクフォースで「風評対策強化指針」の追補改定
2017年7月21日  第8回タスクフォースで復興大臣から
         「風評払拭のためのリスクコミュニケーション戦略の策定等」の指示
2017年12月12日 第9回タスクフォースで「強化戦略」決定
復興庁の説明  風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略 ポータルサイト
原子力災害に起因する科学的根拠に基づかない風評やいわれのない偏見・差別が今なお残っている主な要因は、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果、福島の復興の現状等の周知不足と考えられます。
このため、関係府省庁とともに、平成29年12月に「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定しました。

「風評払拭・リスクコミニュケーション強化戦略
強化内容
1.知ってもらう(放射線に関する正しい知識の理解と誤解の払拭)
2.食べてもらう(農林水産物の風評の払拭)
3.来てもらう(観光業における風評の払拭)

風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略
平成29年12月12日
I.はじめに
 東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「事故」という。)から6年9か月 が経過した。帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、福島県の復興・再生に向けた動きが本格的に始まっている。
 風評の払拭については、これまでの取組により一定の成果を上げているものの、福島県産農林水産物の全国平均価格との乖離や教育旅行をはじめと した観光業の不振など、今もなお風評被害が根強く残っている。また、学校における避難児童生徒へのいじめなど、原子力災害に起因するいわれのない偏見や差別が発生している。
 このような科学的根拠に基づかない風評や偏見・差別は、福島県の現状についての認識が不足してきていることに加え、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果等が十分に周知されていないことに主たる原因があると考えられる。このことを国は真摯に反省し、関係府省庁が連携して統一的に周知する必要がある。その際 、被災者とのリスクコミュニケーションに加え、この経験を活かしながら、国民一般を対象としたリスクコミュニケーションにも重点を置くこととする。国は被災者の思いや置かれた状況を忘れず、「知ってもらい」、「食べてもらい」、「来てもらう」ことによって、国民一人ひとりにその思いを共感してもらうべく、全力を尽くすことが必要である。
 この際、健康影響への評価については、@放射線はその有無ではなく、量的に考える必要があること、A現在、福島県 では放射線の安全性が確保されていること、B世界で最も厳しい水準の放射性物質に関する基準の設定や検査の徹底により、福島県産食品及び飲料水の安全は確保されていること等を発信し、個々人の安心感の醸成にしっかりとつなげていくことに留意する必要がある。また、我が国の食品等に対して輸入規制を課している国・地域 へも これらの情報を発信していく必要がある。
 このような問題意識を踏まえ、復興大臣のリーダーシップの下、「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」が設置した「風評払拭・リスコミ強化戦略策定プロジェクトチーム」を構成する関係府省庁が、これまでのリスクコミュニケーション対策の総点検を行った上で、有識者の意見を聴取し、専門家の間で共通している最新の科学的知見等を踏まえ、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を以下のとおりとりまとめた。
 関係府省庁においては、本戦略に基づき、産業・生業の再生の大前提であり、 被災者が安心して生活を送るために も必要な風評払拭に全力で取り組むこととする。なお、その際、福島県以外の被災地への風評にも配慮しつつ取り組む必要がある。
 また、取り組んだ内容については、的確なフォローアップを行い、より効果的な施策の実施につなげることとする。

U.強化内容
1.知ってもらう(放射線に関する正しい知識の理解と誤解の払拭)

(1)伝えるべき対象
@児童生徒及び教師等教育関係者
A妊産婦並びに乳幼児及び児童生徒の保護者
B広く国民一般
【対象とする理由】
被災児童生徒へのいじめの問題をはじめとした原子力災害に起因するいわれのない偏見や差別の背景には、放射線に関する正しい知識の理解の欠如と福島県の現状に対する認識不足がある。こうした認識不足による誤解は、時間の経過とともに固定化していくおそれがあることから、これまで放射線に関する情報に接することが少なかった地域の住民を含め広く国民一般に対して早急に情報の発信が必要である。
特に、価値観の礎となる児童生徒への教育では、正しい知識を持った教師等が授業で使いやすく、児童生徒が分かりやすいコンテンツを基に正確な情報を伝える必要がある。
また、これから子供を持つ妊産婦を含めた保護者への情報発信も重要であり、子供の健康影響等に関する情報を強く求めている妊産婦等にも確実に正しい情報を届ける必要がある。

(2)伝えるべき内容
@放射線の基本的事項及び健康影響
(a)人の身の回りには日常的に放射線が存在し、日常生活において放射線被ばくをゼロにすることはできない。
(b)放射線はうつらない。
(c)放射線被ばくをした場合、子供への遺伝性影響が出ることはない。
(d)放射線による健康影響は、放射線の「有無」ではなく「量」が問題となる。
(e)放射線による発がんリスクの増加は、100〜200 ミリシーベルトの被ばくをした場合であっても、野菜不足や高塩分食品摂取による発がんリスクの増加に相当する程度である。
(f)事故による放射線被ばくの健康影響は証明されていない。
(g)事故とチェルノブイリ原子力発電所事故とは異なる。
(h)福島県内の空間線量率は事故後6年で大幅に低下しており、全国や海外主要都市とほぼ同水準となっている。
A食品及び飲料水の安全を守る仕組みと放射性物質の基準
(a)福島県産の食品及び飲料水は、放射性物質に関する検査の徹底により、安全が確保されている。
(b)日本の食品及び飲料水の放射性物質の基準は、世界で最も厳しい水準となっている。
(c)福島県において、現在、基準値を超える食品及び飲料水はほとんどない。
特に、福島県産米については、平成 27 年産米以降、基準値を超過したものはなく、畜産物は平成 24 年 12 月以降、海産魚介類は平成 27 年4月以降、基準値以内である。
なお、検査により基準値超過が確認された場合は、市場に流通しないよう必要な措置がとられている。
B復興が進展している被災地の姿
復興に向けて前向きな取組を行う人々の姿や実際に被災地においてのハード・ソフト面の復興が進んでいる状況を、風評払拭につながる形で発信する。
C東京電力福島第一原子力発電所等に関する情報
東京電力福島第一原子力発電所の現状について正確な情報が伝わっていないことによって、福島県の現状等に対する不安が拭えない場合もある。
そのため、廃炉・汚染水対策については、世界の叡智・技術を結集しつつ、国が前面に立って安全かつ着実に進めていることについて、関係府省庁における発信媒体の性質などを踏まえ、必要に応じて簡潔に分かりやすい情報発信を行う。

(3)発信の工夫
情報発信にあたっては、対象に応じたコンテンツの作成と広報媒体の選択を行うとともに、次の事項に留意するものとする。
@簡潔な表現
上記「(2)伝えるべき内容」をその重要度の高いものからシンプルに発信する。
A客観的な情報発信
放射線に関する正しい知識をより広い視野から理解できるよう、客観的な情報の発信を行う。
(a)データの全国・国際比較等により、福島県の状況を相対的に理解できる情報を発信する。
(b)化学物質など放射線以外のリスクを示しつつ、放射線リスクを相対化して発信する。
※例えば、能動喫煙・受動喫煙 や大量飲酒等の発がんリスクについても発信する。
(c)福島県における低線量被ばくに相当する放射線量を視覚的、感覚的にスケール感が分かりやすい形で発信する。その際、発がんリスクの増加、医療被ばく、自然放射線等に相当するそれぞれの放射線量と比較して説明する。
※福島県内ではマイクロシーベルトを単位とした1時間当たりの空間線量率に関する情報発信が多いことに留意し、福島県における情報発信の際にはマイクロシーベルトを併記する等の工夫を行う。
(d)国連食糧農業機関(FAO)やUNSCEARなど国際機関をはじめとした信頼されている第三者機関による発信を活用する。
B表現の工夫
放射線に関する科学的な説明は難解になりがちであることから、次のような工夫を積極的に取り入れることとする。
(a)受信者目線で印象に残る工夫を凝らす
(例えば、サイドストーリーとともに発信するなど)。
(b)放射線に関する情報発信のみを行うのではなく、食品リスク、発がんリスク、防災、子育て等の情報と一体的に発信する。
(c)未だ解明されていない点については、必要十分な表現を心掛ける。
(例えば、年間100ミリシーベルト以下の被ばくは、他の要因による発現の影響によって隠れてしまうほど発がんリスクが小さいにもかかわらず、単に「健康影響は未だ結論が出ていない。」とだけ記載すると、かえって不安を煽ることになりかねない。)
(d)固い表現でなく、親しみやすい表現とするとともに、マンガ、アニメーション、動画など親しみやすいコンテンツを作成する。
(e)情報発信を行う際に活用しやすいコンテンツを作成する。
(f)形式にとらわれず、魅力あるコンテンツを作成するディレクターを活用するなどクオリティの高いコンテンツの作成を目指す。
Cメディアミックス
一般の国民を対象とする情報の発信は、各世代、地域、関心事項等に合わせて、インターネット、テレビ、SNS等を活用したメディアミックスにより効果的に行う。

(4)風評払拭に向けて取り組むべき具体的な施策
本戦略に基づき、(3)までに記載した事項について効果的に実施するため、以下の取組を行う。
@放射線教育
福島県内だけでなく、県外の児童生徒にも しっかりと伝えるべき内容が伝わるような「仕組み」をつくる。
(a)放射線副読本については内容及び構成を見直す。また、いたずらに不安を煽る曖昧な表現は避けるとともに、児童生徒がしっかり理解できるように小問題を入れるなどの工夫を行う。
(b)放射線副読本の使用にとどまらず、児童生徒に具体的に伝わるように以下の取組を行う。その際、教師等教育関係者や保護者へも伝わるよう工夫を行う。
@)出前授業や教師・教育委員会職員への研修は規模を拡充し、改訂した放射線副読本を具体的に使用するとともに、個々の教師が授業で使いやすいコンテンツの開発を行う。その他、放射線教育に対する教育委員会への理解を求める取組を進める。
A)原子力災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成するため、理科、社会、技術・家庭、保健体育などの各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動において放射線に関する教育を行う。具体的には、当該教育において国が副読本や指導資料等の参考資料を作成・共有するに際しては、放射線に関する情報やモデル事例を記載する。また、放射線に関する教育においても主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の推進に取り組む。さらに、例えば食の安全や、がん、災害などを授業等で取り扱う際に、放射線に関しても併せて扱うなどの工夫を促す。
B)保護者等にも放射線教育を理解してもらえる取組を進める。その際、親子による放射線副読本の活用を促す工夫を施したり、教師への研修等の機会を通じて、授業参観等における放射線教育の実施を促す工夫を行う。
C)福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」をはじ めとした放射線教育関連施設への訪問の促進、教育委員会を通じた全国の博物館等への放射線教育に関する情報提供の実施、コミュタン福島が保有する放射線教育コンテンツの国立科学博物館等における活用の検討など、課外活動や学校外活動を通して放射線の正しい知識に触れられる機会を増加させるよう工夫する。
(c)放射線教育を促進する大前提として、いかなる理由があっても「いじめ」は決して許れず、事故によって避難したことを理由とする「いじめ」も同様であることを改めて徹底する。
A妊産婦及び乳幼児の保護者への情報発信
子供の健康影響等に関する情報を強く求めている妊産婦 や乳幼児の保護者に対しては、母子健康 手帳の交付や乳幼児健康診査等の機会に、自治体や病院を通じて、パンフレット等を活用した情報発信を行う。また、自治体 並びに保育所、幼稚園及び認定こども園を通じて、乳幼児の保護者に正しい情報が伝わるよう工夫する。
B教育現場の外も含めた研修等
全国の自治体等の新任職員等を対象とした研修や児童生徒・保護者、教師等を対象としたセミナー、NPO等と連携した車座集会について充実・強化を図る。また、経済団体等に対し放射線に関する研修等の実施を要請する。
C被災地と連携した情報発信
被災地の現状等についての正しい理解を促進するため、以下の取組を行う。
(a)被災者の生の声を全国メディア等に届けることにより、被災地の現状・課題や復興に向けて取り組んでいる姿を直接伝える。
(b)県外避難者に、福島県を訪問し、現状を理解してもらう取組を行う。
Dこれまでに蓄積されたデータの継続的・効果的な発信
空間線量率や食品及び飲料水中の放射性物質に関する検査等のデータについて、関係府省庁において、分かりやすくかつ継続的に発信を行う。
E広く国民一般への情報発信
(a)各世代、地域、関心事項等に合わせて、インターネット、テレビ、SNS等を活用したメディアミックスにより効果的に情報発信を行う。あわせて、その効果の検証も行う。
(b)自治体等において、関係府省庁のパンフレットを活用するなど、情報発信を行う。

(5)被災地の不安払拭に向けた取組
(4)までに記載した国民一般に向けた「知ってもらう」取組に加えて、被災地においても、放射線の問題によって生活上の不安等を抱える住民がいることから、地元においてもしっかりとした安心感を持てるようにすることが重要である。被災者及び被災地で活動する事業者等について、対象のニーズに応じた双方向のリスクコミュニケーションをこれまで以上にきめ細やかに実施することが必要である。
@相談員等による相談対応の強化
直接住民等の相談に応じる相談員等がより円滑に活動できるよう、「放射線リスコミュニケーション相談員支援センター」(以下「相談員支援センター」という。)を中心として、関係府省庁等が連携し、相談員等が説明に必要とする情報ニーズを収集するとともに、好事例の共有などを行い、住民目線で分かりやすい形での情報提供を効果的に行う。また、相談員等と放射線の専門家やその他支援機関との連携強化を行う。これら情報提供や連携強化に向けて、相談員や自治体・県・国が参画する新たな連携強化の枠組みを創設する。さらに、行政は相談員や被災者の情報ニーズのくみ上げを積極的に行い、取組の改善を行うとともに、その成果を必要に応じて県外へも展開する。
A東京電力福島第一原子力発電所に関する情報の適切な共有
東京電力福島第一原子力発電所に関して、相談員支援センター等を活用し、相談員に積極的にタイムリーな情報を共有することで、住民の関心や疑問の把握を行うとともに、相談員等を通じた情報提供を行い、双方向のコミュニケーションの充実を図る。
B放射性物質対策を基盤とした環境再生に至る理解促進
被災地において、除染による線量低減効果等の結果、避難指示が解除され、地域社会がどのように再生に向かっているのか一連のつながりの流れで理解できるように、環境再生プラザ等による情報発信を強化する。
C現地事業者への適切な情報共有や働きかけの強化
福島県における事業活動において、放射線不安を理由として、避難指示が解除された地域での事業活動に支障をきたすことのないよう、業界団体や個別事業者等に対する正確な情報提供や説明を強化する。

2.食べてもらう(農林水産物の風評の払拭)・・・割愛
3.来てもらう(観光業における風評の払拭)・・・割愛

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