HOME > 脱原発と結び福島原発事故被災者支援 > 2018/07/05第14回政府交渉報告

「ICRP2007年勧告国内法制化」反対、福島原発事故関連要求 7月5日政府交渉の報告

福島からの8名を含む38名が参加して、
復興庁、原子力規制委員会・原子力災害対策本部、厚労省・環境省との交渉を行いました。
呼びかけ:脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆2世団体連絡協議会、反原子力茨城共同行動、原発はごめんだヒロシマ市民の会、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西、ヒバク反対キャンペーン

1. 復興庁交渉  パンフレット「放射線のホント」を批判し撤回を要求

「放射線のホント」は、政府が昨年12月に策定した「風評払拭・リスクコミニュケーション強化戦略」に基づいて作成されたものです。「原子力災害に起因する科学的根拠に基づかない風評やいわれのない偏見・差別が今なお残っている主な要因は、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果、福島の復興の現状等の周知不足と考えられます。」という認識に立っています。
出典:(風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略 ポータルサイト)
復興庁から、増田圭:原子力災害復興班参事官、関根達郎:統括官付参事官など8名が出席しました。

明らかになったこと
1.放射線のホントが放射線のウソである。
2.復興が多くの問題をかかえていることが住民目線でとらえられていない。
3.パンフレットでは「量の問題」として、少量の放射線被ばくは問題ないと国民に宣伝している。
4.復興庁は放射線防護の必要は否定しないが、放射線防護の立場には立たない。
5.復興庁は放射線のホントの各論においても、総体としても撤回を拒否した。

交渉で明らかになったこれらのことは、パンフレットの内容にとどまらず、福島復興再生を担当する「復興庁」の姿勢としても大問題です。放射線防護の立場を守らない復興は住民に被ばくを強いる復興となります。
 追及@追及A追及B追及C






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追及@ 復興庁は最後まで、「原発事故による放射線被ばくは不当な被ばく」と認めず。
質問 原発事故による放射線被ばくは不当な被ばくです。自然放射線や医療放射線をとりあげて「放射線はゼロにはできない」とするのはすり替えです。
回答 自然界や医療行為から放射線を受けているという、放射線の基本的な事項について記載をしています。
追及 原発事故による放射線被ばくは自然放射線や医療放射線とは違って不当な被ばくである。
ヨウ素131による被ばくは事故のせいだ。
不当な被ばくという視点は「放射線のホント」の何処にもない。
回答 被ばくする必要のなかった余分な被ばくをしたと我々も認識しております。
人体に対する影響について、自然放射線と人工放射線は違いはない。
余分な被ばくと言い続け、最後まで不当な被ばくとは認めなかった。

追及A 復興庁は放射線防護の必要は否定しないが、放射線防護の立場には立たない。
 パンフレットは「量の問題」として、少量の放射線被ばくは問題ないという立場。
質問 「100ミリシーベルト以上の被ばく」だけを問題にしていますが、政府文科省の小学生向のための放射線副読本に書かれている「大人はもちろんのこと、これから長く生きる子供どもたちは、放射線を受ける量をできるだけ少なくすることが大切です。」とは大きく異なります。
回答 放射線の基本的事項として100m?以上の被ばくのリスクについて記載しています。御指摘の文科省の小学生向けのための放射線副読本に記載されている内容を否定するものではありません。
追及 100mSvより少ないが事故前にはなかった放射線被ばくが問題になっている。「できるだけ少なくすることが大切」ではなく「少量なら被ばくしても問題ない。」という趣旨なのか。
「放射線防護」かそれとも「量の問題」か。
放射線防護の立場をとるのか、それとも放棄するのか。
不当な被ばくという視点は「放射線のホント」の何処にもない。
回答 放射線防護は厚労省で、復興庁はその立場ではない
パンフレットでは「量の問題」として、少量の放射線被ばくは問題ないという立場
追及 放射線防護の立場を守らない復興は住民に被ばくを強いる復興となる。

追及B 「遺伝しません」が間違いとは最後まで認めず、撤回を拒否。
質問 「放射線の影響は生まれてくる子どもや孫に遺伝するの?」との設問に「遺伝しません。」と断言しています。しかし、環境省の「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成28年度版)第3章(P. 96)」では、「国際放射線防護委員会(ICRP)では1グレイ当たりの遺伝性影響のリスクは0.2%と見積もっています。」と書かれています。「遺伝しません。」との断言はウソです。
回答 ICRPの勧告や原爆での事例を含めた調査等において、放射線被ばくに起因するヒトへの遺伝性影響の発生は証明されていないと承知しています。
追及 2001年の国連科学委員会の報告書「放射線の遺伝的影響」には、放射線は突然変異原であって、動物実験では遺伝的影響を誘発することは明確である。したがってこの点に関してヒトも例外ではないであろうということが明記されています
「放射線のホント」が依拠している環境省の「統一的資料」では、ICRPは影響があるという立場でリスクを推定し、今後変化するかもしれないとしています。
「遺伝しません」と断定するのはまちがいで、撤回すべき。
回答 三菱総研のアンケート調査によると放射線被ばくによる健康影響の可能性があると回答した方が半分以上にも及ぶ。こういう現状を勘案した結果、遺伝的影響についての誤解を解消したいと簡潔で明確な表現にした。

追及C 「ふるさとに帰った人たちにも日常の暮らしが戻りつつある」との記載に対して
抗議福島の参加者が現状を説明し、抗議。学校を再開しても入学1人、そういう実態がある。ここに書いてある中身と大きく隔たりがあるということについてしっかり認識してもらわないと困る。帰った人たちのほとんどが高齢化で、介護が必要だとか、あるいは将来に対する不安、子どもが戻ってこないという現状を訴えている。被災者の立場に立って復興を考えていただきたい。
回答 復興庁は答えず。

2. 原子力規制員会、原子力災害対策本部との交渉

原子力規制委員会原子力規制庁から6名(長官官房放射線防護グループ放射線防護企画課2名、長官官房放射線防護グループ監視情報課3名、原子力規制部原子力規制企画課1名)、内閣府原子力被災者生活支援チームから1名が出席しました。

1.ICRP2007年勧告の国内取入れ(法制化)反対
ICRP2007年勧告は、「通常被ばく(計画ひばく)」に加えて、原発重大事故発生時の「緊急時被ばく」、その後の「現存被ばく」が導入されています。
ICRP2007年勧告は、原発重大事故のリスクを前提に、住民に原発事故時の大量被ばくの受忍を迫るものです。受忍を迫る参考レベルは正当化・最適化の原則により、緊急時被ばく状況では20〜100mSv/年の範囲から、現存被ばく状況では1〜20mSv/年の範囲から、決定されます。

交渉結果
@原発事故のリスクを前提に、住民に原発事故時の大量被ばく受忍を迫るものと追及
質問 「原発事故のリスクを前提に、住民に原発事故時の大量被ばく受忍を迫るもの」
回答 ICRP2007 年勧告において、原発重大事故による被ばくは正当化されないとは示していません
追及 国民に原発重大事故による被ばくを受忍させることに対する自らの責任を放棄するもの
正当化されると思っているのか。利益を生まない被ばくは撤回しないといけない。
回答 ICRP2007年勧告にはそもそも原発重大事故というものの記載がない。
放射線審議会では議論していないのでお答えしかねる。
正当化されるかどうかは再稼働の判断に係ることで、放射線審議会の中での審議という文脈の中ではお答えしようがない。

B現在の法体系と全く別の体系になる
回答 認めようとせず

BどこがICRP2007年勧告の国内法取入れを推進しているのか
追及 2017年4月の法改定により審議会の機能を強化して、放射線審議会がICRP2007年勧告の国内法取入れの省庁向けガイドラインを作成して方向付けをしている。
勧告の国内法取入れを推進しているのは放射線審議会と原子力規制委員会だとしか考えられない。
回答 今年の1月に出された「放射線審議会の基本的考え方」に参考レベルについて記載があります。各省庁が基準を定めるときには、そういうものを参考にするということもあるよというふうな書き方になっています。やらないとダメとか、そういうふうな、ガチガチに縛っているものでもないかと思いますし、それを、今すべての法律を見直さないとダメというような記載になっていません

C20ミリシーベルトの法的根拠は
回答 20mSvに関しては、原子力災害特別措置法に基づいて、原子力安全委員会による勧告のもと、20mSvという基準を設けたものです。
追及 数値は法律のどこに記載されているのですか。
回答 数値については書いておりませんが、そこに書いてあるのが、原子力安全委員会からの諮問を経て得られた回答でございます。
追及 緊急時被ばく状況については、労働者は決めました。
緊急時被ばく状況の住民については、100mSvと20mSvの間だという参考レベル。現存被ばく状況は1〜20mSvの間だという参考レベル。これを法律化しないといけない。違うんですか。

D被災地の住民は20mSvによって翻弄されている。
追及 帰還した人たちは、20mSvに翻弄されながら、そこに生活している。そこで労働している人たちも居る。輸送労働者や。あるいはさまざまな職種の労働者が、8時間、5時間、10時間、低線量の被ばくを受けながら、労働し、生活をしている。
20mSv以下だから、そこで生活し、労働することができると。その基準に生活や労働がいろんな意味で影響を受けていることをしっかりと受け止めて頂きたい。どうなんですか。
回答 そもそも避難指示が住民の居住の制限を強制的に強いるものですので、そういったものを解除する基準が20mSvという基準でやっております。
追及 公衆の基準からすれば1mSvでしょう。
そこだけが20mSv以下なんです。法的に根拠がない20mSvで、それを強いられて生活をしている。そういう仕組みになっている。
片や、法律的には1mSvがちゃんとある。法の公平さからすれば、そういう実態でいいんですか。
回答 避難指示解除については20mSvとさせて頂いておりまして、それとは別途、長期に、政府として1mSvを目指すという方針をしておりまして、そのために重層的な除染を含めたですね、放射線量計の配布ですとかそういう政策をしているというところでございます。

2.リアルタイム線量モニタリングシステムのモニタリングポスト撤去反対
原子力規制委員会が福島県に設置されているリアルタイム線量モニタリングシステムのモニタリングポストのうち、12市町村以外に設置されている2400台を3年間で撤去する計画を決めたことに対して、廃炉が終了するまでは撤去するなという声が高まっています。
福島からの参加者(ほぼ全員が発言)を先頭に、原子力規制庁に撤去方針の撤回を迫りました。
回答 私達としては、引き続き自治体に説明会を開いてお声を聞きながら、引き続き検討してまいりたい。

3.2017年2月政府交渉の20mSvの問題点に関する質問書の扱い
被災者生活支援チームの回答 原子力災害対策本部が責任を持ちます。
ただし、災害対策本部には様々な省庁が含まれているので、回答省庁は災害対策本部一任としました。

3. 厚生労働省、環境省との交渉

1.国の責任による福島原発事故被害者への健康手帳交付と被爆者援護法に準ずる法整備
今回の交渉では、健康保険の特例措置による医療費無料化を延長しつつ、「原発を推進した国の責任による健康手帳交付と援護法の整備」を進めることを求めることに重点を置きました。
厚生労働省から、保険局国民健康保険課から2名、原子爆弾被爆者援護対策室室から1名など5名が、環境省からは大臣官房環境保健部放射線健康管理担当の2名が、出席しました。

(1)国の責任による健康手帳交付・被爆者援護法に準ずる法整備を求める。
浪江町町会議員(元健康保険課長)紺野則夫さんが意見表明をされました。
紺野則夫 医療費の無料化、健康手帳の交付制度の裏付けがあれば我々の生きる担保になる。生涯における医療費無料の継続化を求める。
浪江町では21000人が避難していて、700人だけが戻っている。職員の9割が戻って業務をしている。戻っている子供は20人で、大部分がその方たちの子どもです。小中学校生は11人です。
医療費の無料化、それから健康手帳の交付によってですね、制度の裏付けがあれば我々の生きる担保になる訳なんですよね。私は担保だと思っているんです
法制化のお願いと、それから医療費の継続化をずっと何年もやってきました。馬場町長は町民の健康と生業について国と東電に責任をもった対応を求めてこられた。でもやってくれなかった。馬場町長は非常に残念でしょうがなくて、死んでいきました
生涯における医療費の継続化を我々は求めなければならないと考えています。復興期間、いわゆる10年間、あと3年しかないという風な医療の無料化になってはならないと考えております。
「払拭」に努めるのではなくて、それに立ち向かう、払拭できるような、そういう風な制度をつくっていただきたい。

(2)福島原発事故被害者援護の法整備について国の考えと担当部局を明らかにさせる
@原発を推進した国の責任による「健康手帳交付・援護法の整備」について、どのように考えているのか
環境省 専門家会議の中間取りまとめにもあります様に、現時点では東電福島第一原発事故による放射線の健康影響が生じているとは考えにくいとされていることから、原発事故による放射線影響に係る医療保障を行わないとしております。
厚労省 環境省設置法改正によりまして、東京電力福島第一原子力発電事故に伴う住民の健康管理については、環境省の所掌であることが明確にされておりまして、環境省の方に於いて、福島県民健康調査事業の支援等が行われておると承知しております。
健康手帳交付等、被爆者援護法に準じる援護法整備の課題につきましては現在行われている健康調査、健康管理等は、一定独自であるとのご指摘についてですが、被爆者援護法はその基本的考え方としてまず、健康診断により、被爆者の健康状態を把握して、その上で医療を要する者に対して医療の給付等が行われるものであって、健康診断と医療の給付をセットとしているのでありまして、ご指摘にはあたらないと考えております。
以上の点から、ご指摘につきましては環境省の所掌であると考えております。

A「援護法を除外せず被災者支援を検討する」旨の2012年2月の小宮山厚労大臣答弁はどのように引き継がれているのか
環境省 議事録として承知している

(3)福島原発事故で多数の住民が原爆症認定基準の1mSvを超える被ばくをしていることは被爆者援護法に準じた援護法整備の根拠の1つ
厚労省 原爆症認定は、疾病ごとに認定されている制度でして、手帳を交付されている方が得られる保健医療福祉にわたる色んなサービスの1つにしかすぎませんので、手帳交付とはまた、異なる話だと認識しております。

(4)健康保険の特例措置による医療費無料化の長期継続について。
厚労省 現在、東電福島第一原発事故に伴う避難指示区域等の被災者の方々につきましては、医療保険の窓口負担と保険料を免除しその免除に要した費用につきまして、国が全額の財政支援をすることとしております。こちらの財政支援につきましては、被災地の復興条件をふまえつつ、予算編成過程で検討していくものと認識しておりまして、今年度も継続しておるところでございますが、引き続き必要な予算を確保させて頂きたいという風に考えております。
国の補助100%は福島県のみで、避難指示解除にかかわらず、県外移住者も対象。
長期継続は原子力災害対策本部の政策決定によると考えられるので、今後それを念頭に交渉を進める。
被害者援護の法整備につながる福島の自治体ぐるみの重要な課題となるよう働きかける必要がある。

福島原発事故被害者援護の法整備に関して、環境・厚労両省同席の下、交渉を継続することを確認した。

2.国の責任による原発被ばく労働者の安全確保、健康・生活保障
(1)生涯1000mSvによる放射線管理に反対し撤回を求める
回答 大臣指針において、緊急作業従事者について、生涯1000mSvを超えないように、その後の線量管理のために採用している。管理ができなくなるような削除は適当ではないと考えています。
追及 90年勧告は、生涯線量1000mSvは勧告しないとしている。
追及 眼の水晶体の線量限度が500mSvに引き下げられ、「生涯1000mSvで放射線管理」は矛盾している。
回答 実効線量に関する新たなICRP勧告また放射線審議会からの意見具申というものは出ておりませんので、現時点では大臣指針を見直す予定はございません。

(2)白血病認定基準の年5mSv以上被ばくした労働者全員に長期健康管理の手帳交付と生涯無料の健康診断を求める。
事故後の福島第一原発被ばく労働従事者から多数の労災申請があり、ここ5年以内に、白血病3件、甲状腺がん1件が労災認定されていることをベースに追及したが、厚労省の回答からは、労災申請が増えていること、白血病等の労災認定が続いていることに対する危機感はうかがえなかった。
回答 現在は全国的に「年間最大50mSv、5年100mSv」で従事しているので、問題ないと考えている

(3)フクシマ原発労働者相談センターから、労働者の訴え紹介、省内での共有と厳重な指導の要請
・労働条件通知書が労働者に交付されない。いまだにこうしたことが起きている。
・上位下請けの職長からパワハラを受け、問題にしたら仕事を回さないと脅され始末書を書かされた。
・労働契約の賃金がハローワークの求人票より大幅に低かった。労基署は契約が優先するとの見解。

脱原発と結び被災者支援


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