子ども被災者支援法の成立から1年2カ月余りを経て、同法の基本方針案が8月30日に示されました。
しかし、福島原発事故被災者(被災者)の声を反映する手続きを踏まず、支援対象地域を極めて限定し、被ばくの健康影響に対する多くの被災者の懸念に対して極めて不誠実な内容です。
このような基本方針案は撤回して再策定されるべきです。
労働者と住民の安全と健康を守り、生じた被害は補償することを求める要請書にもとづく政府交渉を重ねてきた私たち8団体は、本日、「子ども被災者支援法の基本方針案の撤回と再策定等を求める要請書」を政府に提出しました。この要請書に対する賛同を募り、それを背景に9月24日に政府交渉を行います。要請書に対する賛同を宜しくお願いします。 要請書のダウンロード
政府交渉 9月24日(火) 会場:参議院議員会館B104
集合 10時20分 参議院議員会館ロビー
10時30分打ち合わせ 資料 : 政府交渉質問書
11時~12時 被曝労働者の課題で環境省、厚労省と交渉
除染労働者被ばく線量の速やかな登録を求める
すべての福島事故被曝労働者の長期健康管理を求める
13時~15時 要請書の課題に即して政府交渉 復興庁、環境省、文科省
要請書の再提出(8団体と賛同団体の連名で)
基本方針の問題点、を指摘し、子ども被災者支援法基本方針案の撤回と再策定を求める
国の責任ですべての福島原発事故被災者に健康手帳交付、医療費無料化、医療保障を
損害賠償請求権の消滅時効問題に対する特別立法措置を
15時~16時 参加者意見交換
私たちはこれまで福島原発事故の放射線被ばくによる健康影響の懸念に対して全ての被災者に国の責任で健康手帳を交付し、生涯にわたる健康診断、医療費無料化などの健康保障を行うことを一貫して求めてきました。その観点から、既に被災者や支援団体の皆様が進めている「子ども被災者支援法の基本方針案の撤回と再策定等を求める取り組み」に連帯します。 2013年9月13日
2013年9月13日
復興大臣 根本匠 様
環境大臣 石原伸晃 様
文部科学大臣 下村博文 様
子ども被災者支援法の成立から1年2カ月余りを経て、同法の基本方針案が8月30日に示されました。しかし以下に述べるように、福島原発事故被災者(被災者)の声を反映する手続き等においても、また案の内容においても、今回の基本方針案は撤回して再策定されるべきです。
1.法に定められている被災者の声を反映させる措置が非常に不十分です。基本方針案の公表までに被災者の声を聞く措置は取られていません。さらに、公表後もパブリックコメントの期間は短く政府が開催する説明会は福島市と東京のみです。
2.基本方針案の検討過程は全く不透明です。復興庁が支援対象地域や内容を決める際に関係省庁と協議した会議の議事録は作成されておらず、検討資料は非公開とされています。
3.支援対象地域は非常に狭い範囲に限定されています。福島県の浜通りと中通りの33市町村が対象とされていますが、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉にまたがる104市町村が除染重点調査対象地域(福島原発事故の放射能汚染による追加外部被ばく線量が政府の計算方式で年1ミリシーベルト以上となる汚染地を含む市町村)に指定されていることと比べれば、いかに狭く限定されているかは明らかです。少なくとも福島県と原発事故の追加被曝が年1ミリシーベルト以上の地域を支援対象地域とするべきです。「元の暮らしにかえせ」というのが被災者の心の底からの思いです。この切実な思いからすれば、原発推進の中で公衆の被ばく限度とされている年1ミリの追加被ばく以上を「一定の水準」とすることは、あくまで妥協の産物です。その年1ミリさえも採用されず政府が新たに持ち出した「相当な線量」による支援対象地域の大幅な限定は到底受け入れることができません。
4.支援対象地域に関する支援は法の最も重要な部分であるはずですが、基本方針案の支援対象地域に即した施策は母子自主避難者などを対象とする高速道路無料化などわずか3つしかありません。
5.法13条に定められている原発事故による放射線被ばくの健康への懸念に関する健康診断、医療費減免などの施策は有識者の検討として先延ばしされています。
6.双葉町村会などから要望があった健康手帳の交付や成人を含めた医療費の無料化は基本方針の施策に含まれていません。
7.国の責務で行われるべき「県民健康管理調査」は現行の福島県の事業のままで、国の事業化には言及されていません。
要請事項
1.基本方針案を撤回して、少なくとも下記の施策を取り入れ、被災者の声を十分反映した基本方針案を再策定すること。
・被災者の声を十分反映すること。
・福島県及び事故による追加被ばく線量が年1ミリシーベルト以上の地域を支援対象とすること。
・国の責任で生涯にわたる健康診断や医療費無料化などの医療補償を行うこと。
・福島県の事業とされている「県民健康管理調査」を国の事業とし国の責任で実施すること
2.国の責任により、すべての被災者への健康手帳交付、生涯にわたる健康診断、医療費無料化など医療保障を行うこと
3.東電福島原発事故損害賠償の請求権の消滅時効問題を解決する特別立法を行うこと
以上
脱原発福島県民会議、双葉地方原発反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国被爆二世団体連絡協議会、反原子力茨城共同行動、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、ヒバク反対キャンペーン
基本方針案は、「Ⅱ 支援対象地域に関する事項」の中で
被災者の置かれた状況は多様であり、必要な支援内容を一律に定めることは容易でないが、原発事故発生後、年間積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある地域と連続しながら、20ミリシーベルトを下回るが相当な線量が広がっていた地域においては、居住者等に特に強い健康不安が生じたと言え、地域の社会的・経済的一体性等も踏まえ、当該地域では、支援施策を網羅的に行うべきものと考えられる。 このため、法第8条に規定する「支援対象地域」は、福島県中通り及び浜通りの市町村(避難指示区域等を除く)とする。 |
自主避難者・残留者の損害賠償について、紛争審査会の中間指針追補では浜通りと中通り(県北・県中)の計23市町村を範囲としています。
東電は23市町村に加えて、中通りの県南9市町村と宮城県丸森町に低額の補償を行っています。
この他に、福島県は県の措置で県南9市町村に上乗せ支給、会津・南会津に支給しています。
基本方針案の支援対象地域は、東電が住民と自主避難者の損害賠償を認めている地域と基本的には一致しています。
岩手、宮城、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉にまたがる104市町村が除染重点調査対象地域(福島原発事故の放射能汚染による追加外部被ばく線量が政府の計算方式で年1ミリシーベルト以上となる汚染地を含む市町村)に指定されています。
少なくとも福島県と原発事故の追加被曝が年1ミリシーベルト以上の地域を支援対象地域とするべきということは議員立法の法案提案者の意図、被災者・支援者・自治体の要求です。
「元の暮らしにかえせ」というのが被災者の心の底からの思いです。この切実な思いからすれば、原発推進の中で公衆の被ばく受忍限度とされている年1ミリの追加被ばく以上を「一定の水準」とすることは、あくまで妥協の産物であるということは理解してほしい。 その年1ミリさえも採用されず、政府が新たに持ち出した「相当な線量」による支援対象地域の大幅な限定は到底受け入れることができないと被災者は訴えています。
福島県の周辺県でも住民の強い要求により、今年度から実施する13自治体を含む少なくとも17の自治体が住民のホールボディカウンター検査や甲状腺エコー検査、尿検査の実施または検査費用の助成を行っています。
資料 : 自治体による住民の被ばく検査支援等の状況
子ども被災者支援法の基本方針案ではこうした福島県外の検査について何も施策がありません。
住民が希望して実現したこれらの検査支援等に関して、自治体の責任で国は関知しないということなのです。被ばくの健康影響に対する被災者の懸念に対して、何もしないことが国の責務なのでしょうか。
汚染状況重点調査地域に指定されている福島県外の63市町村のうち19市町村が支援対象地域指定を求める意見書を提出しています。
茨城県市長会・町村会は県全体を支援対象地域に指定することを求める要望書を国に提出しています。栃木県議会は支援対象地域に栃木県を含めることを求める決議を行っています。
資料 : 子ども被災者支援法の支援対象地域指定を求める意見書を提出した自治体