HOME > 脱原発と結び福島原発事故被災者支援 > 2016/08/23第12回政府交渉報告

「国の責任による福島原発事故被害住民と被ばく労働者の健康・生活保障、
原発再稼働中止、を求める「要請書」提出と政府交渉(2016/8/23)の報告

要請書提出・政府交渉の概略
2016年8月23日 参議院議員会館
1.参加者 福島7名、関東9名、関西11名、計27名
2.署名の追加提出
  ☆「19歳以上甲状腺医療費無料化」署名
   今回1万2254筆を追加提出。 前回までの9万3153筆と合わせて累計10万5407筆
  ☆「緊急時被ばく限度引き上げ中止、原発再稼働中止」署名
   今回2602筆を追加提出。   前回までの17万6888筆と合わせて累計17万9490筆
3.要請書の提出
  全国各地から51団体が賛同(8月28日現在53団体)
4.政府交渉
  午前:要請書第7項目に関して    厚生労働省、原子力規制委員会
  午後:要請書第1〜第6項目に関して 環境省、経産省、内閣府被災者生活支援チーム、復興庁

主な回答と批判、交渉で浮かび上がってきた課題

1.甲状腺医療費無料化(窓口負担の解消、生涯無料化、甲状腺にかかわる健康手帳交付)
脱原発福島県民会議の対県交渉で、県は「国の同意が取れるなら窓口負担の解消など制度変更したい」旨を回答。
今回の対政府交渉では「運用として認める」という趣旨の回答を引き出すことを目指した。
・窓口負担解消について
 回答:「サポート事業は助成事業ではない。調査の資料提供を得るため。」と繰り返した。
 批判:無料化を調査の資料提供のためとする位置づけは、被害者をモルモット扱いするものである。
    環境省は、ABCCの原爆被爆者の扱いが厳しく批判されたことに何ら学んでいない。
 回答:「個別の診療について関係書類を福島県が審査したうえでその都度交付決定を行っている。」
    「医療機関の窓口において個別の診療が交付対象であるかどうかということは判断していない。」
    と難色を示した。  この点は工夫すれば解決できるのではないかと指摘した。
・県との話し合いについて
 回答:「県から正式な要請があれば話し合う」としながらも、個別的な話し合いをしていることは認めた。
交渉で浮かび上がってきた課題
 対県交渉を重ね、県から要請書を出させる。

2.被害者の医療保障と県民健康調査の拡充
 前向き回答なし

3.「20mSv基準による一方的な避難指示解除、自主避難者の住宅支援打ち切り、避難指示解除地域住民の精神的損賠償打ち切りの撤回
・20mSv基準の避難指示解除を撤回せよ
 回答:基準設定までの経過説明にとどまる。
    ICRPが原発推進の組織であると追及したが、環境省が即答せず、時間不足で他の問題に移った。
・2017年3月の住宅支援打ち切りを撤回せよ
 出席した「被災者生活支援チーム」から防災の担当であるとの説明で終わった。
(注):他団体の交渉では、「実施主体は福島県である。県から相談があれば応じる。」が内閣府防災の回答要旨
・2018年3月の精神的損害賠償打ち切りを撤回せよ
 回答:現時点では2018.3末までの支払いとなっている。
個々の被害者の状況をよく伺って丁寧な対応を行う様、引き続き東京電力を指導して参りたい。
批判:中間指針で精神的損害は「避難に伴う精神的損害」とされている。回答はそれに沿ったもの。
事故直後の被ばくや帰還後も被ばくが続くことは問題にされていない。
交渉で浮かび上がってきた課題
20mSv基準による避難指示解除、住宅支援打ち切り、精神的損害賠償打ち切りは「被害者切り捨て」であることを今後も追及する
(1)下記の点から、年20mSv基準の批判を深める
・ICRPの基準は原発推進のための基準。チェルノブイリ事故後、原発事故が起きても原発を推進する立場から、原発事故による被ばくに対する基準を導入した。
・100mSv以下の被ばくによる健康影響は他の要因のリスクによる変動の範囲と評価して、被ばくの被害を認めない。
 線量線量率効果として原爆被爆のリスクを2分の1に減らして被ばくの健康影響を過小評価している。
・福島事故のUNSCEAR報告では集団線量を求めているが被害としては評価していない。
 例えば1万人が20mSv被ばくするとがん白血病死だけでも20人の被害が生じる。
・原爆被爆者の追跡調査では、低線量まで被ばくの影響を示していて、被ばく線量と健康影響の関係を直線関係に当てはめて被ばくのリスクが評価されている。
 原子力施設の労働者被ばく、医療被ばくでも健康影響が明らかになっており、被ばく線量と健康影響の関係を直線関係に当てはめて被ばくのリスクが評価されている。
・事故前の基準(ICRP)は年1mSvである。
 ただし、この基準は飲料水のリスクの10倍を被ばくによるリスクとして容認している。
(2)住宅支援打ち切りは避難することの否定であることなど追及を深める
(3)精神的損害賠償の打ち切りの批判点を検討する

4.国の責任で、近隣県の汚染地域住民の健康診断・医療保障を行え
交渉の折衝段階で、「回答できない」と被害者救済の姿勢かけらもない対応

5.国の責任による福島原発被害者への健康手帳交付など被爆者援護法に準じた法整備を行え
回答:県民健康ファイルを配布している
批判:単なる記録保存であって、国の責任による健康保障を明記せず。しかも、配布は県民の4分の1にすぎない

6.福島原発事故汚染土の8000Bq/kg(=クリアランスレベルの80倍)以下の公共事業再利用を撤回せよ
「搬入口と搬入通路の2地区との協定を結べ」を交渉してほしいとの要請があり、福島参加者が中心に発言。
・既設の処分場「エコテック」への搬入問題
 回答:「エコテックへの搬入までに地区との協定を結ぶ」
(注)協定を結ぶまでは搬入しないとまでは引き出せなかったが、2016年末でまだ未協定の状況。
・8000Bq/kg以下再利用問題
 回答:管理下の利用であり、ダブルスタンダードではない。70年耐用年数は技術的なものではない。
交渉で浮かび上がってきた課題
再利用化の目的は、クリアランス導入同様、経済的負担の軽減にある。
今後本格的に取り上げるとしたら、長期管理の保証、廃棄物の流れの記録、廃棄物の被ばく評価などを追及する。

7.緊急時作業被ばく限度の250mSv引き上げ省令を廃止せよ。原発再稼働を中止せよ
・今回の白血病労災認定が「手帳」交付対象外者であり、「全員を手帳交付対象とせよ」と強く求めた。
 回答:白血病で労災認定された2名は「手帳」交付対象外である。
    交付対象は前回(2015年5月)も検討したし、今後も引き続き検討を行っていく。
    検討すると明示的には言えないが、「全員に手帳交付」という意見は承る。
・労働者に生じている白血病の罹患率をどう評価しているのか。
 回答:罹患率は大きく有意に高いとは言えないと考えていない。
    → 追及の結果、「症例数が少なく評価は困難」に変わった。
・確率的影響として今後も現れると認めるか
 回答:一般論としてリスクがあり、引き続き管理を徹底する
・被ばく限度の10分の1以下への切り下げ
 回答:議論の前提として、労働者の被ばく限度がどのようにして設定されているか確認を求めたが「ICRPに記載なし」など担当者の読み込み不足で交渉に至らず。
・福島の「フクシマ原発労働者相談センター」から労働者の実態を訴え、事業者の指導徹底を求めた。
 相談センター:社会保険未加入業者は下請けに入れない制度化に対して、社会保険費用の企業負担分を給料天引きや寮費値上げ・食費値上げでなどで労働者に転嫁している。
 厚生労働省:法令では、労使合意以外は違法。個別の労働契約ということがあるが、明白な法違反は指導していく
 相談センター:指導をよろしくお願いする。
        寮費の前借をさせ、仕事をやめられなくしている。同じことがずーと起きている。
 厚生労働省:抜本的な対策ができればいいが、検討はしている。監督件数を増やす等で対応している。厚労省調査でも違反が増えている。末端への指導を増やす。
       これから増えていくことについては確定的には言えないが、新規事業所も増えているのでその指導を徹底する。
交渉で浮かび上がってきた課題
(1)「手帳」交付対象者以外から白血病が出たことから、今後も「全員に手帳交付」を強く迫る。
(2)線量限度引き下げの理論的論議が必要。真摯に検討するよう抗議し、線量限度引き下げの必要性を認識させ、交渉を深める。

脱原発と結び被災者支援


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