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住民と労働者の安全と健康を守り、生じた健康被害を補償することを求めて

2011年6月21日 第1回政府交渉の報告

 労働者と住民の健康と安全を守り、生じた健康被害は補償することを求める、第1回政府交渉を6月21日に行いました。
 6月21日、双葉地方原発反対同盟、原水禁、反原子力茨城共同行動、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーンの6団体は、5月2日に提出した「労働者と住民の健康と安全を守り生じた健康被害を補償することを求める要請書」に基づき政府交渉を行いました。交渉には福島、福井、茨城、北海道の原発立地県を含む各地から60名を超える市民、国会議員3名と元議員2名が参加されました。
 主催者から、個人637名と63団体の「要請書」賛同リストを添えて、「福島原発事故により多くの住民と労働者が被曝させられていることに対して政府に強く抗議する。要請事項を一刻も早く実現せよ」と要請しました。

 交渉の最初に、福島から参加された双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さんと飯舘村の愛澤さんのお二人が、現地の思い、国への意見を述べられました。
 石丸さんは、「3月12日以降、放浪の民となり厳しい条件に置かれている。県民もすでに20万人が避難し、子供達は20ミリシーベルトを強要するがごとく状況に置かれている。これは将来に禍根を残す状況に来ている。厚労省の行っていることはこれまでの自己否定・政策転換である。1つには原爆症認定基準は1ミリシーベルトである。2つ目に、小学生の健康診断で胸部レントゲンの廃止を打ち出した。これは1回で0.05ミリシーベルトである。3つ目に法定限度は1ミリシーベルトである。4つ目に福島では多くの住民・子供たちが放射線管理区域に等しいかそれ以上の放射線にさらされている。5つ目は5.3ミリシーベルトで労災認定された例があるのに250ミリシーベルトは未必の故意の犯罪ではないか。」と指摘されました。
 愛澤さんは「端的に言うと何も信じられない。」と、検査のみで、結果について何の説明も報告もない政府の姿勢に強い不信感を示され、「本当に助けて欲しい。」と切実に訴えられました。」

1.緊急作業被曝労働者の問題について
緊急作業従事者の長期的健康管理について検討会が開催され、健康管理手帳も含め検討される

 3月15日に緊急時作業の上限が250ミリシーベルトに引き上げられたことについて、「それによって250ミリを超える労働者さえも出ている。このような状況を生み出している基準を撤回せよ。」と迫りました。厚労省は、「労働者保護の観点からは逆行する形であったことは間違いない。福島原発の現状からやむを得ないが最小限にとどめるべきであると考えている。ICRP2007勧告に基づいて500に上げるとかいう話になりかねない。それを一番危惧している。緊急時作業は、官邸・省庁のせめぎあいはあるが、一義的には厚生労働省が判断することである。3ヶ月を過ぎているのできっちりと区切りをつけたいと考えている。」と答えました。
 東電からの要請に応じて、厚労省が福島で緊急作業に従事した労働者については年50ミリシーベルトの上限を取り払ったことについて、「50ミリシーベルト以上が1600人にもなり他の原発に支障が出るというのが理由だと聞くが、多くの原発が停止状態にあり、根拠はない。」と撤回を求めました。厚労省は「現状を踏まえて本当に人間が足りないのかという検証は必要で、足りているということが数字の上で明らかになればすぐさま撤回すべき話である。」と答えました。
 緊急作業に従事した労働者の長期健康管理と健康管理手帳の発行については、「緊急時作業で高い線量を被曝している。6月17日に第1回検討会が開催され、健康管理手帳の発行を含めて検討される。」と説明がありました。「発行を前提とする検討なのか」と質しましたが、「これから検討されること」という回答に終わりました。
 交渉の中で、下請け労働者の実態について、1次下請けも含め厚労省が依然として認識不足であることが明らかになりました。また、手帳は原発被曝労働者全体の問題であるとの意見も出ました。

2.住民の健康問題
 健康手帳は大事と考えているとの表明はあったが、国の責任による健康補償を実現するための制度を作るという点については回答なし

 原発推進政策をとってきた国の事故及びその結果に対する責任については、「今回の事故をあらかじめ想定できず十分な対策を準備ができなかったことは反省している。政府としても原子力事業者と共同して原子力施策を推進してきた社会的責務は認識している。東電が損害賠償をするのに必要な支援を行うなど被害者の方が適切な賠償を受けられるように万全な取り組みをしていきたいと考えている。」との回答でした。
 住民の健康管理調査については、「経産・文科・厚労の3省からなる支援チームで今回の健康管理調査を支援する。技術的・財政的支援を行う。健康手帳は健康管理を行う上で1つの重要な方法だと考えている。」との回答で、「健康管理調査の目的は何か。」との質問に対しては、「どのような状況に置かれているか。どのような影響を与えていくか。健康被害が出た場合に対応する体制をとっていくために状況を把握する。放射線に対する知識はまだまだ十分でないので説明ができる仕組みを整えていくことも含まれる。」との回答でした。
 「18日に行われた県の検討委員会議事録は作成していないということであった。市民参加できるよう公開してほしい。」との要望に対しては、「次回からは公開と聞いている。」との回答でした。
 JCO臨界事故で被害者を代表して両親が原告となられた「健康被害裁判」に取り組んでこられた大泉実成さんは、「主治医、専門医、大学の先生も認めているのに裁判は敗訴となった。海江田経産相は相当因果関係が証明されれば補償するというが、因果関係の証明は大変難しい。裁判ではこのような結果しか出ない状況である。行政が健康被害が出た場合に救済する枠組みをつくることが必要。」と厚労省に対して意見を述べられました。

3.学校の放射線基準について
文部科学省は基準そのものの撤回について、「暫定的なもので、できるだけ下げようとするものである。8月末頃までしか効力が無い。」と最後まで20ミリシーベルトの撤回を拒否

 「子供たちを放射線から守る福島ネットワーク」の中手さんから、「文科省が4月に20ミリシーベルト通知を出し、福島の親達は本当に衝撃を受けた。国が守ってくれないなら自分たちが守るしかないのでこのネットワークができた。5月に高木文科大臣が一部修正するかの記者会見を行ったが、白紙撤回ではなく、学校以外は文科省は関係ないかのような内容であった。除染費用を出すことは一定評価できるが、20ミリシーベルトの基準の通知は撤回できないのか。更なる低減策について、その後どのような対策を取ろうとしているのか。」と経過説明と質問がありました。
 会場から、「フランスは10ミリだ。撤回すべき。」、「1〜20ミリというのは参考レベルで科学的根拠はなく政治的に決まるもの。国内への導入について決まっていない。」、「1ミリシーベルトを目指すとしたのだからもう20ミリシーベルトの通知は必要が無い。」と20ミリシーベルト基準の撤回を求める発言が相次ぎました。
 文科省は、子供が放射線の影響を受けやすいことを認める一方で、20ミリシーベルの基準通知を残すことの説明に窮しながらも、暫定的なもので8月末ごろまでしか効力が無いと最後まで撤回を拒否しました。20ミリシーベルト基準撤回の要請については政務三役にあげると約束しました。
 ホールボディカウンター測定結果の本人開示については、「放医研に事実確認をして改めて必要なら要請を行いたい。」との回答でした。

4.悪性腫瘍・白血病の放射線起因性について
不十分ながら、やっと、「援護法のもとでは放射線起因性が認められている。」との回答に

 原爆症認定で悪性腫瘍・白血病が積極認定の対象になっていることについて「必ずしも全ての種類の悪性腫瘍が放射線によって生じているとまでは認められていない」との前回の回答に対する再回答を求めました。健康局は、「援護法のもとでは放射線起因性が認められている。」と回答しました。前回の回答よりは前進しましたが、「科学的、国際的、医学的に、他の疾患と比べて放射線との関連が明らか」とする2008年の局長回答を踏まえた更なる回答の検討を求めました。

 要請事項の多くが実現されておらず、今後も交渉を継続することを確認して第1回の交渉を終えました。
 交渉に引き続き、市民と議員の院内集会を行いました。各地から取り組みのアピールや課題についての意見表明が続きました。最後に主催者から、各地の運動を強め再び交渉に結集しようとまとめの呼びかけを行いい、この日の行動を終えました。

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