国の責任で福島県の19歳以上の甲状腺に係る医療費を無料化せよ・・・取組みの経過
福島原発事故当時18歳以下のこどもを対象とする小児甲状腺2次検査の結果、保険診療による治療や経過観察が必要となった人で19歳以上の人は、県による医療費支援がなく医療費を自己負担せざるを得ません。
2次検査の範疇の細胞診などの検査療費は県民健康管理調査の費用で支援されますが、通常の保険診療に移行して検査や治療を受ける場合の費用は保険診療扱いとなります。甲状腺手術の費用および今後長期間の診療や薬の費用は県民健康管理調査の支援対象外で保険診療扱いとなります。甲状腺を全摘した場合には、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤を服用しなければなりません。
事故によって放射性ヨウ素が放出され、それを子供が吸入・摂取しており、個々人の甲状腺被曝線量を正確に推計できない以上、甲状腺におきているさまざまな症状・所見が福島原発事故のせいでないとは断言できません。
また、原発事故がなければ、38万人もの子供たち全員が甲状腺検査を受ける必要もなく、これだけ多くの子供たちが経過観察や治療が必要との診断を受けることもなかったのです。
国の責任で、福島県の18歳以下の医療費無料施策とは別途に、福島県の19歳以上の甲状腺にかかわる医療費の無料化を早急に実施することを求めます。
取組みの経過
2014年2月、福島県の19歳以上の甲状腺にかかわる医療費の無料化を求めて政府交渉
環境省は「自己負担はない」との答弁を繰り返し、門前払いの対応をしました。
2014年4月、福島県の19歳以上の甲状腺にかかわる医療費の無料化要請書への賛同署名開始
2014年6月、個人2282名、70団体の賛同を添えて要請書を提出し、政府交渉
環境省は「自己負担の事実」は認めたが、要請書については「持ち帰り共有するが検討するとまでは約束できない」にとどまった。
2015年1月、賛同署名9万871筆を追加提出し、政府交渉
県の要望に沿って予算を検討している(環境省)、手術を受けた方とかは支援していくことになると思う(復興庁)などの前進した回答を引き出した。
2015年2月、福島県議会で県が「甲状腺検査に係る医療費については新年度早期に支援を実施」と答弁。
答弁全文:甲状腺検査に係る医療費につきましては、これまで県民に負担が生じることのないよう国に強く要望してきたところ、今般国の新年度予算に県民健康調査を支援するものとして必要な経費が計上されたところであり、今後、具体的な支援方法等について検討を進め、新年度早期に支援を実施できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
2015年2月、環境省が「甲状腺検査の結果、引き続き治療が必要である場合の支援」を表明
環境省は、「当面の施策の方向性(案)」(2014年12月28日)に対するパブリックコメントを踏まえて、2月27日、「当面の施策の方向性」を発表しました。 環境省ホームページ その中で、「県民健康調査の甲状腺検査の結果、引き続き治療が必要である場合の支援を行うこととし、詳細について福島県と検討を進めます。」と表明しています。
「当面の施策の方向性」(2015年2月27日)
(3)福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実・・・下線部が「当面の施策の方向性(案)」に追加された
中間取りまとめにおいて、専門家会議は・・・<途中省略>・・・と指摘しています。
このため、県民健康調査「甲状腺検査」をさらに充実させ、対象者に過重な負担が生じることのないように配慮しつつ、県外転居者も含め長期にわたってフォローアップすることにより分析に必要な臨床データを確実に収集できる調査が可能となるよう、福島県を支援していきます。具体的には、県民健康調査の甲状腺検査の結果、引き続き治療が必要である場合の支援を行うこととし、詳細について福島県と検討を進めます。
「パブリックコメントに寄せられた主な意見」
意見:「『対象者に過重な負担が生じることのないように配慮しつつ』とあるが、『過重な負担』とは何か。」
○福島県の県民健康調査「甲状腺検査」における、検査を受ける際の心身及び経済的な負担等を想定しております。いただいた御意見も勘案して、県民健康調査「甲状腺検査」を受診した結果、引き続き治療が必要になった場合には、福島県と協力して支援を行うといった配慮を行ってまいる旨を追加して記載することといたします。