被災者の要求を基に、脱原発と結んで、
国の責任による健康手帳交付、医療と生活の保障を実現させよう
取り返しのつかない放射能汚染と生活破壊を引き起こした福島原発事故発生から2年1カ月が経過しようとしています。
原発は依然不安定な状態のままであり、また、被災地では被曝を強要させられる生活が続いており、元の生活に戻せという被災者の要求がいつ実現するのか先が見えない状況が続いています。
政府は、「100ミリシーベルト以下では放射線の被曝が健康に影響を及ぼすことを示す証拠はない」を基本見解とし、福島県の事業とされている「県民健康管理調査」を国が主体の事業とすることを拒否し、18歳以下の医療費無料化を福島県の事業に押し込めています。
政府の中心施策は、放射線の影響の過小評価のもとに被災者に「安心」を押しつけることを骨子とする「アクションプラン」です。
昨年夏、浪江町、双葉町が要求した「健康手帳交付、医療費無料化や手当支給などの法整備」を拒否し、被災者に「安心」を押しつける回答を示しています。
政府は3月、「子ども被災者支援法の基本方針は12月末を「目途」とするレベルまで先延ばしし、「原子力規制委員会」が決める「線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置」の検討結果を参考に支援地域を制限しようとしています。
「線量水準に応じて」ということで被災者に線引きをして、大多数の被災者は事実上放置する内容になることが危惧されます。
施策内容に関しては、3月15日に「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」を公表し、被曝と健康問題ではこれまでの施策を大きくは越えず福島県民以外は対象としないレベルに抑え込もうとしています。
福島県の双葉町村会は原子力を推進してきた国の責任による健康手帳の交付と医療と生活の保障を国に求めています。
この要求は双葉地域の被災者にとどまらず広範な福島事故被災者と原発被曝労働者の課題です。
国家補償による被爆者援護法を追求してきた被爆者の運動に学び、脱原発と結んで、国策として原発を推進した国の責任による「健康手帳交付、医療と生活の保障」の実現を政府に迫る運動をつくりあげましょう。そのための広範な議論を全国各地で巻き起こしましょう。
浪江町・双葉町から双葉郡に広がった健康手帳交付と医療費無料化等の法整備要求
昨年4月、浪江町から始まった「健康手帳交付、医療費無料化、手当支給など被爆者なみの法整備」要求は双葉郡7町村に広がり強まっています。
浪江町は昨年4月、町独自に健康手帳を作成し住民に配布する方針を示し、6月双葉町とともに、健康手帳の交付、成人の医療費無料化と生活保障を含む法的な措置を国に求めました。
浪江町は昨年7月、健康手帳(「放射線健康管理手帳」を町民に交付しています。
この要求は今年1月15日に双葉町村会が国に提出した要望書に「放射性物質による人体への影響は未知数であることから、生涯にわたる法的措置をとること」と盛り込まれました。
双葉町村会は2月7日に子ども被災者支援法議員連盟が開催した「ヒアリング」に「要望書」を提出しています。
1mSv/年以上を支援対象地域にすること、これから生まれる子供も対象とすること、被ばくと疾病の因果関係の立証責任はあくまでも原子力政策を推進してきた国にあることを明記し、「被ばく手帳」又は「健康手帳」を交付し、行動記録、健診記録、被ばく線量の評価値、健康状態等を記載した健康に関する情報の本人保管と、定期健康診断、通院・医療行為の無料化、社会保障などを保証すること、県民健康管理調査に代わり国を実施主体とする被災者向けの定期的な検査を生涯実施すること、医療費・健康診断費を無料化すること、健康管理に関する施策は「予防原則・治療」に基づき疾病の未然防止と早期発見を目的とすること、など被曝と健康問題に関する要求をはじめ生活支援を含む総合的な要求です。
一方、福島県の「要望」は、医療の確保(放射線医学の体制の強化、医療の体制の強化)、家庭、学校等における食の安全及び安心の確保(検査体制維持への支援)、自然体験活動等を通じた心身の健康の保持(民間実施分を含む活動への支援)、市町村のホールボディカウンター整備の支援、県民健康管理調査の支援、18歳以下医療費無料化の財源充実に留まっています。
双葉町村会が発している健康手帳の交付と医療・生活保障の総合的要求は被災者の声を代弁するものです。この要求を、現状以上の施策は求めない福島県の「要望」を乗り越えて、県レベルの被災者、更には周辺県の被災者を結んで、広げていくことが課題です。
茨城、千葉で、住民の声を背景に自治体が「原発事故子ども・被災者支援法」の対象地域指定と国費による健康管理等を国に要求
茨城、千葉など周辺県の自治体から、住民の声を背景に、原発事故子ども・被災者支援法の対象地域指定と国費による健康管理等を国に求める動きが顕在化しています。
茨城県では昨年12月に取手市、守谷市、那珂市が意見書を提出したのに続き、2月28日に茨城県市長会と町村会が県全域の指定を求める要望書を国に提出しました。
千葉県では、2月5日と6日に野田市と我孫子市が、2月26日には除染対象地域に指定されている9市(野田市、我孫子市、柏市、流山市、印西市、松戸市、鎌ヶ谷市、白井市、佐倉市)が連名で支援地域指定を求める要望書を国に提出しました。
原子力規制委員会、住民の健康管理に関する提言で、健康管理は甲状腺検査の他に生活習慣病対策を重視。県民健康管理調査の国事業化は盛り込まず
原子力規制委員会は3月6日、住民の健康管理に関する提言で、「福島県、あるいは県外の特定の地域において、他の要因による発がんのリスクを超えて、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明するほどの被ばく線量は確認されていない。」との認識を示しました。
被ばく線量の把握は基本的に重要としながら、行動調査の回収率が半年間23%で停滞していることに関して真剣な検討はなされていません。このままでは県民の大多数が放置されます。
事故早期の放射性ヨウ素の被ばくの推測が重要で、整理されるべきであるとしていますが具体的な提言には至っていません。
甲状腺検査の他には生活習慣病対策が重要としているのみです。
実施体制については、「国が責任を持って継続的な支援を行う必要がある」と記載し、「国の責任は福島県の支援」のみとされ、福島県医師会が求めた「国が主体となって行う国の事業化」は議論を経ることもなく、原子力規制委員会は無視しました。
「子ども被災者支援法」基本方針策定の大幅先延ばし。これまでの施策を大きくは超えない「施策パッケージ」
「子ども被災者支援法」の基本方針は「年内を目途」のレベルにまで大幅に先延ばしされてしまいました。3月7日、根本復興大臣から災害対策本部と原子力規制委員会に対して、「住民が安全・安心に暮らしていくための線量基準のあり方」、「子ども被災者支援法における適切な地域指定のあり方」を検討するため、原子力災害対策本部において線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置の具体化について議論し年内を目途に一定の見解を示すこと、原子力規制委員会が科学的見地からの役割を果たすことを要請しました。
「子ども被災者支援法」の基本方針はその検討を参考に具体化するというのです。
3月15日、復興庁は「子ども被災者支援法」の「施策パッケージ」を公表しました。復興庁は政策の検討にあたって、自らの責任ですなわち復興庁主催で現地被災者の声を直接聞く場を設定することは一切行っておらず、被災者の声を広く聞いたとはとても言えません。「施策パッケージ」の内容は、これまでの施策の範囲を大きく超えるものではありません。また、福島県民以外は対象外とされています。
「施策パッケージ」は「子ども被災者支援法」の趣旨に沿ったものととても言えないものです。