> 福島復興特措法と国の加害責任、被災者の健康保障

福島復興再生特措法と国の加害責任、被災者の健康保障

 「福島復興再生特措法案」は内閣原案に与野党協議で修正され、衆参本会議で可決。3月31日より施行されている。
*主な修正点
@原案になかった「原子力政策を推進してきた国の社会的責任」の明記(第1条)。
A国は、健康管理調査その他原子力災害から子どもをはじめ住民の健康を守るために必要な事業を実施するために
 福島県が設置する基金について、必要な財政上の措置を講ずる(第68条第1項)。
B福島県は、子どもをはじめ住民が安心して暮らすことのできる生活環境の実現のための事業を行うときは、前項の
 福島県が設置する基金を活用することができる(第68条2項)。
C国は、原子力発電所の事故に係る放射線による被ばくに起因する健康被害が将来発生した場合においては、保健、
 医療及び福祉にわたる措置を総合的に講ずるため必要な法制上又は財政上その他の措置を講ずる(第65条)。
【参考資料】 福福島復興再生特別措置法(
PDF)  68条について復興特別委員会での説明(PDF

*国の加害責任と国家補償
 「原子力政策を推進してきた国の社会的責任」は、昨年8月、原子力損害賠償支援機構法案に与野党協議で追加された文言です。
 今回の福島復興再生特措法案も政府原案になく、与野党協議で盛り込まれました。
 社会的責任は法的責任と区別して責任を弱める表現です。
 国が加害責任を認めることが国家補償にもとづく被災者援護につながります。
 2011年5月、政府は「当面の取り組み方針」で「被災者はいわば国策の被害者」と表明しました。
 しかし福島復興再生特措法では国の加害責任に全く触れられず、謝罪もありません。
 野田総理は2012年3月16日の参議院予算委員会で「原発事故被災者支援の理念は社会保障か国家補償課か」と聞かれ、「社会保障か国家補償かという切り分けではなくて、原子力政策を推進してきたのはこれはまさに国であります。その国の社会的な責任というのは大きいと思いますので、それを踏まえた上で、被災市町村や福島県の自主性などを尊重しながら、原子力災害からの福島の復興と再生を図ることを国の責務として行っていくという考え方の下で対応させていただいている。」と答え、加害責任を認めた国家補償とは一線を画しています。
 3月23日の政府交渉で復興庁は、「被災者は国策の被害者」と認めるが国家補償の必要はないと答えました。
 18歳以下医療費の無料化が「医療制度の根幹にかかわる」として盛り込まれなかったことも復興再生特措法の被災者支援が社会保障の枠内であることを示しています。

*福島復興特措法における健康保障の施策
 福島復興特措法は社会保障の枠内であるうえに、健康上の不安解消を前面にしていることから、健康保障の施策は全く不十分です。
 法律は福島県が実施する施策を国が財政等の支援を行うという構図になっています。
 国会論議で、「健康上の不安を解消することばかり我々は言い過ぎた。健康管理調査をするのは、健康被害の未然防止、早期発見、治療、そして、健康上の不安をなくすためにやる。ここをみんなが間違っているからおかしくなっている。」と不安解消を前面にしている法案に対する批判意見も出ました。
付帯事項の中に
 八 健康被害に対する不安を払拭し、健康被害の未然防止、早期発見及び治療のため、健康管理調査の着実な実施等、国は万全な措置を講じるとともに、適切な医療・福祉サービスの確保のために、医師、看護師、介護士等の専門従事者の確保に取り組むこと。
が盛り込まれています。

*国家補償に基づく被災者援護法を実現させよう
 「国の加害責任を認め、謝罪し、健康手帳を交付し、国家補償に基づき生涯にわたり被災者の健康と生活を補償し、脱原発・廃炉により被災者を生まないことを保証する」総合的な被災者援護法の実現を追求しましょう。

脱原発と結び被災者支援

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