18歳以下医療費無料化など被災者支援をめぐり、国の加害責任、国家補償が最大の争点
第4回政府交渉(2012年3月23日)の報告
3月23日、「被災者への健康手帳交付、国家補償による被災者支援を求めて」第4回政府交渉を衆議院第2議員会館で行いました。 交渉には、双葉地方原発反対同盟、福島市内医療機関など福島現地からの参加者を含む40名が結集しました。政府側から内閣府被災者生活支援チーム、復興庁、厚労省が出席しました。 質問書(PDF)
冒頭に、双葉の遠藤洋子さんが自らの悲惨な体験をもとに、「国策で生じた事故だ。何の反省もなく、私たちに手を差しのべることもなく1年間が過ぎ去った。日本人の手で原発事故が起きてしまった。ここを治していかなくてどうするのか。このような生活をさせられている人間をこれ以上増やしてはいけない。」と訴えられました。 → 遠藤洋子さんの訴え
今回の交渉でも、福島県の18歳以下の医療費無料化に対する支援見送りの撤回が重要課題となりました。
「被災者は国策の被害者と認めるが、国家補償は必要なし」の矛盾した回答
交渉で最も問題になったことは、政府が福島県の18歳以下医療費無料化支援見送りの理由としてあげている「医療制度の根幹にかかわる」という点です。根幹の内容は「税金と利用者の一部負担」だとして、利用者の負担をなくすことはできないというのが国の主張です。私たちは国家補償により被災者の負担をなくすべきだと主張しました。
福島復興再生特措法案が与野党協議で修正され「国の社会的責任」が追加されました。これが法案の性格を変えたのかとの質問に、復興庁は「もともとそれは考えていた。明確にするために追加された。社会的責任に法的責任は含まれない。」と答えました。
国の責任(加害責任)と国家補償について、復興庁は「被災者が国策の被害者であるということは野田政権としても認める。しかし、国家補償については必要とは考えていない。」と回答しました。また、被災者は放射線被曝を「受忍」させられているという点については3府省庁とも認めました。国策の被害者であると認めながら国家補償の必要はないという矛盾を追及すると、「国としての対応は難しいが実質的な無料化というものを今後やっていく(秋から実施に向け県が検討中)。福島復興再生特措法案の修正で68条が加わり、福島県の事業の基金について必要な支援をしていくことが義務付けられている。必要なものは手当てしていく。」と答えました。
国の責任をあいまいにしたこの措置が実質無料化となるのか明確ではありません。福島の未来を担う子どもが安全安心な生活を送れることが福島の復興に最低必要なことだ。これですべて終わりということではなく今後も検討すべきだと要求し、復興庁は話し合いは続けると答えました。
次に、福島事故の被害から復興再生するためにはもととなった原発推進政策が問題である。脱原発を福島復興再生特措法に盛り込むべきであると追及しました。復興庁は、エネルギー政策はこの法律の枠外であると何回も繰り返すのみで、この論点に正面からは答えませんでした。
県民健康管理調査について、行動調査表が本人に戻されないという問題について、参加者からセカンドオピニオンができないという指摘が出ました。これについては後日の回答となりました。行動調査の回収率は3月で23%と低いままほとんど横ばい状態で、時とともに行動の記憶が薄れていくことから、調査そのものが危機にひんしています。県民が健康管理調査に信頼を寄せていないことが大きな理由であると福島の参加者から指摘されました。昨年8月から私たちは「国が責任をもって生涯健康保障する」と表明せよと要求していますが、国は「調査は福島県が主体で行われているから国としての表明はしない」との回答を今回も繰り返しました。福島復興再生特措法では国の施策として健康管理調査が挙げられているのですが、福島県が行うことができると言う条文で現状追認しているのです。
国家補償に基づく被災者支援法の制定について、厚労大臣は予算委員会で「排除せず検討する」と答弁しましたが、厚労省は実際の担当部署さえ明らかにせず実際には何も進んでいないことが明らかとなりました。原爆被爆者の場合、12年もたってやっと医療法ができました。福島事故で同じことを繰り返してななりません。
交渉はなかなか前進しませんが、現地との連帯を大切に、現地からの訴えを背景とした粘り強い交渉を継続する必要があります。
また、国家補償に基づく被災者援護法の制定に向けた声を広げながら実現を目指すことが今後の運動の大きな課題です。浪江町は3月21日に「放射線健康管理手帳(仮称)」を今月以降に全町民に配布することを決定しました。詳細は後ろの別記事をご覧ください。
「国家補償の被災者援護法を!」・・・国会議員へ働きかけ
交渉当日の午前中に、福島、福井からの参加者を含めて、各党プロジェクトチーム担当国会議員への働きかけを行いました。
「福島復興特措法は国の責任で被災者の健康保障を行うという点で全く不十分だが、野党共同提案の『子ども保護法案』は一時的避難の支援、医療費の減免などの積極的な面がある。しかし、これらの法案の施策はいずれも社会保障の枠内である。加害責任を認め謝罪し国家補償として被災者を援護する特別法が必要である。再び事故被害者を生みださないために脱原発を明記する必要がある。」と私たちの見解を伝えました。時間の関係で、自民、民主、公明の3党に留まりましたが、それぞれの党の特徴がうかがえました。