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すべての被曝労働者への健康管理手帳交付と労災補償の拡大を実現しよう!

事故後の福島第一原発作業で3例目の労災認定、甲状腺がん

* 2016年12月16日、福島第一原発の緊急時作業に従事した男性の甲状腺がんが富岡労基署で労災認定されました。
 この男性は、1992年から2012年まで20年間、福島第一原発など複数の原発で原子炉の運転や監視業務などに従事し、累積149.6ミリシーベルト(mSv)被ばくしました。
 そのうち、福島第一原発事故の緊急時作業・収束作業(水量計や圧力計などの確認、注水ポンプなどの燃料補給など)に携わった2011年3月から2012年4月までの被ばく線量は139.12mSv(うち約40mSvは内部被ばく)です。
 男性は1号機と3号機の原子炉建屋の水素爆発時も敷地内で作業に当たっていたと報じられています。

 参考:甲状腺がんの労災認定に関する厚生労働省のホームページ
 参考:「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」の報告書(甲状腺がんと放射線被ばくとの関連)
 厚生労働省の「当面の労災補償の考え方」
 1 放射線業務従事者に発症した甲状腺がんの労災補償に当たっては、当面、検討会報告書を踏まえ、以下の3項目を総合的に判断する。
 (1)被ばく線量
    甲状腺がんは、被ばく線量が100mSv以上から放射線被ばくとがん発症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まること。
 (2)潜伏期間
   放射線被ばくからがん発症までの期間が5年以上であること。
 (3)リスクファクター
   放射線被ばく以外の要因についても考慮する必要があること。
 2 判断に当たっては、検討会で個別事案ごとに検討する。

 しかし、厚生労働省は「甲状腺がんの発生が統計的に有意に増加する最小被ばく線量を示す文献はなかった」と認めており、労災認定を100mSv以上に限定すべきではありません。
 国に対して、すべての被曝労働者への健康管理手帳の交付と健康・生活保障を求めます。

* 被ばく労働者の「甲状腺がん」労災認定は初めてで、全疾病では16人目の労災認定です。事故後福島第一原発で被ばく労働に従事した労働者では3例目の被ばくによる疾病の労災認定です。
これまでに白血病で労災認定された8人の原発被ばく労働者
疾病 白血病
被曝線量(mSv) 40.0 72.1 50.0 129.8 74.9 5.2 19.8 54.4
認定(年) 1991 1994 1994 1999 2000 2011 2015 2016
労働局 福島 兵庫 静岡 茨城 福島 福岡 福島 福島

これまでに多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、甲状腺がんで労災認定された8人の原発被曝労働者
疾病 多発性骨髄腫 悪性リンパ腫 甲状腺がん
被曝線量(mSv) 70.0 65.0 99.8 78.9 175.2 138.5 173.6 149.6
認定(年) 2004 2010 2008 2010 2011 2013 2013 2016
労働局 福島 福岡 大阪 長崎 神奈川 福島 兵庫 福島

* この他に、1999年JCO臨界事故により高線量被曝した3人の急性障害が労災認定されています。
JCO臨界事故で労災認定された3人
疾病 急性放射線症
被曝線量(Sv) 16〜20 6.0〜10 1.0〜4.5
認定(年) 1999
労働局 茨城

* 事故後の福島第一原発作業者から11件の労災申請
 今回認定された件を含め、事故後の福島第一原発の作業従事者から11件の労災が申請されています。
 労災認定が3件(白血病2、甲状腺がん1)、不認定3件、調査中4件、取り下げ1件です。

 * 2016年4月〜10月の7か月で、52人が20mSvを超える被ばく
 放射線管理期間が切り替わった2016年4月〜10月の7か月で、福島第一原発では、早くも52人が(5年100mSvの限度相当の)20mSvを超える被ばくをしています。
 この52人は全員が下請け労働者です。

区分(mSv) H28.4月〜H28.10月
東電社員 協力企業
100超え 0 0 0
75超え〜100以下 0 0 0
50超え〜75以下 0 0 0
20超え〜50以下 0 52 52
10超え〜20以下 2 368 370
5超え〜10以下 25 804 829
1超え〜5以下 286 3701 3987
1以下 1254 7334 8588
1567 12259 13826
最大(mSv) 11.03 36.21 36.21
平均(mSv) 0.74 1.82 1.69
年度累積線量