健康管理手帳交付業務に指定されない最大の壁

健康管理手帳制度の考え方
健康管理手帳制度に向けて法案を審議した昭和47年4月25日衆議院・社会労働委員会において、田辺誠議員(社)に対する労働大臣答弁が、その後、「健康管理手帳制度の考え方」とされています。
労働大臣答弁の内容
① 健康管理手帳制度は、離職後の労働者について、その業務に起因して発生する疾病であって、発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のために創設するものである。
② 対象としては、業務起因性の明らかなもの、たとえば当該業務従事労働者について、その疾病の発生が疫学的に一般の人と明らかに有意の差があるものを選定したい。
③ 当面、交付対象としては、ベンジジン、ベータ「ナフチルアミン等、労働安全衛生法により製造等の禁止をするものを中心にとり上げ、この制度を発足させたいと考えているが、今後は有害物質等について広く検討を重ねて漸次対象を拡大し、この制度の充実に努めたい。

1995年12月4日付け「労働省検討会報告」では、「手帳交付に係る基本的考え方」が次のように示されています。
要件① 当該物質等について、重度の健康障害を引き起こすおそれがあるとして安全衛生の立場から法令上の規制が加えられていること。
要件② 当該物質等の取扱い等による疾病(がんその他の重度の健康障害)が業務に起因する疾病として認められていること。
要件③ 当該物質等の取扱い等による疾病(がんその他の重度の健康障害)の発生リスクが高く、今後も当該疾病の発生が予想されること

「労働省検討会報告」の要件①~③に照らして、放射線業務を健康管理手帳交付業務に指定せよと迫りましょう。
要件① 電離放射線業務に対しては線量限度が定められています。
要件② 放射線業務起因性が、白血病、がん等に対してみとめられています。
要件③ 厚生労働省は、「この要件を満たしていないので健康管理手帳交付業務に指定されていない。」としています(2019/2/12政府答弁書)。しかし答弁書にはそれ以上具体的な説明は示されていません。

健康管理手帳交付業務に指定されていない理由を明らかにさせ、労災補償として労働者に生じている被ばくの被害をもとに追及しましょう
電離放射線によって重度の健康障害発生のリスクが生じることはよく知られた事実で、その一端は労災補償という形で表れています。
電離放射線業務の労災認定は被ばく後年数をおいて発症します。最初の労災認定は1988年で、その後次第に発生頻度が高まり、現在は年1件が常態化しています。
更に、年2件の頻度も次第に高まってきています。今後さらに頻度の高まりが顕在化することが危惧されます。
詳しくは下記の記事を見てください。
   職業がんの労災補償状況
   放射線業務従事者の被ばく労災補償状況
   原発被ばく労働者の被ばく労災補償状況

「当面の労災補償の考え方」を撤回させる課題と結んで健康管理手帳交付を勝ち取りましょう。
これらの被害は、固形がんについては100ミリシーベルト以上で線量と疾病の関係がみられるとする「当面の労災補償の考え方」の下でも認定されている極めて高い線量の労働者に生じたものです。
100mSv以下でも線量に応じて被害が生じるという最近の疫学調査を根拠とし、労災認定の高いハードルとなっている「当面の労災補償の考え方」を撤回させる課題と結んで、健康管理手帳交付を勝ち取りましょう。

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