労規則35条別表リストの拡大

労災補償の対象疾病は労働基準法施行規則第35条の別表1-2に挙げられています。

例示疾病に挙げられている場合とそうでない場合ではつぎのように扱いが区別されています。
労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について【昭和53年3月30日付、基発第186号】抜粋
○例示疾病(別表第8号により指定される疾病を含む。)については、一般的に業務と疾病との因果関係が推定されるものである。これらに対する労災保険における取扱いとしては、従来と同様、一定のばく露条件や症状等を満たす場合には、特段の反証のない限りその疾病は業務に起因するものとして取り扱われるものである。
 これに対して、例示疾病として掲げられていない疾病については、上記のような意味における一般的な形で業務との因果関係が推定されるものではない。したがって、労働基準法の災害補償の場合においては、請求人が使用者に対しこれらの疾病と業務との担当因果関係を立証しない場合には、災害補償は行われない。労災保険の場合にも基本的には請求人の側に立証責任があることはいうまでもないが、請求人の一定の疎明資料に基づいて行政庁が必要な補足的調査を行うことにより、業務との相当因果関係の有無を慎重に判断する必要がある。

従って、例示疾病の拡大は「労災申請」と「労災認定」の高いしきいを引き下げます

電離放射線業務については、
○第二項「物理的因子による次に掲げる疾病」
5 ・・・「電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍(かいよう)等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊(え)死その他の放射線障害」
および
○第七項「がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病」
10・・・ 「電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫(しゅ)又は甲状腺(せん)がん、多発性骨髄腫、非ホジキンスリンパ腫」
が挙げられています。

放射線業務の例示疾病は1947年の労働基準法制定にさかのぼります。
それまでに知られていた鉱山労働者、ダイヤルペインター、放射線医師などに生じた疾病が法律に書き込まれました。
その後約60年間大きな変更はありませんでした。
2010年5月に多発性骨髄腫と非ホジキンスリンパ腫が追加されました。

多発性骨髄腫と非ホジキンスリンパ腫は白血病類縁疾病であり、当然リストに挙げられるべきものでした。
しかし、労働行政が労災補償の場合は労災認定の事例を積み重ねが必要という考えに基づいているため、多発性骨髄腫の労災認定(2004年、長尾さん)、悪性リンパ腫の労災認定(2008年、喜友名さん)を経てやっと例示疾病に加えられたのです。

私たちはその後も労規則35条別表の疾病リストの拡大を目指して取り組みました。
○原爆症認定の「新しい審査の基準」が、がん(悪性腫瘍)、白血病および6疾病(放射線起因性という条件付き)を積極認定の対象としているが被曝労働者の対象疾病の範囲はそれとは大きくかけ離れていると追及しました。
その過程で厚労省が原爆症認定で積極認定の対象となっているがん(悪性腫瘍)、白血病および6疾病について放射線起因性を問題にしたので、「科学的、国際的、医学的に、他の疾患と比べて放射線との関連が明らか」とする2011年6月の厚生労働委員会での局長答弁や放射線影響協会の原爆被爆者の追跡調査についての見解などを挙げて反論しました。厚労省は2011年6月、「援護法のもとでは放射線起因性が認められている。」と回答しています。この回答は局長答弁に沿ったものではありません。放射線影響協会は2012年2月に、「全てのがんの発生について、これ以下なら発生しないという『しきい値』はない」という結果を原爆被爆者の追跡調査の第14報に発表しています。
○2012年9月に胃がん、食道がん、結腸がんについて厚労省が「労災補償の考え方」を公表しました。この3つのがんを労規則35条別表の労災補償の対象疾病リストに追加させることが具体的な課題となっています。

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