原発被ばく労働と健康管理手帳

がんその他の重度の健康被害を引き起こすおそれのある業務への従事歴があり、一定の要件を満たす場合に、労働安全衛生法に基づき、離職の際又は離職後に健康管理手帳を交付し国の費用で健康診断が実施されている。

労働安全衛生法 第67条第1項(健康管理手帳)

健康管理手帳については、労働安全衛生法第67条で定められている。
 手帳を交付附する業務は、労働安全衛生法施行令第23条で、
 手帳の交付要件は、労働安全衛生法施行規則 第53条第1項で、 それぞれ定められている。
(健康管理手帳)
第67条
都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。ただし、現に当該業務に係る健康管理手帳を所持している者については、この限りでない。
2 政府は、健康管理手帳を所持している者に対する健康診断に関し、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を行なう。
3 健康管理手帳の交付を受けた者は、当該健康管理手帳を他人に譲渡し、又は貸与してはならない。
4 健康管理手帳の様式その他健康管理手帳について必要な事項は、厚生労働省令で定める。

労働安全衛生法施行令第23条(健康管理手帳を交付附する業務)

健康管理手帳を交付附する業務については、労働安全衛生法施行令第23条で定められている。
(健康管理手帳を交付する業務)
第二十三条 法第六十七条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする。
一 ベンジジン及びその塩(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
二 ベータ―ナフチルアミン及びその塩(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
三 粉じん作業(じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)第二条第一項第三号に規定する粉じん作業をいう。)に係る業務
四 クロム酸及び重クロム酸並びにこれらの塩(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(これらの物を鉱石から製造する事業場以外の事業場における業務を除く。)
五 無機砒(ひ)素化合物(アルシン及び砒(ひ)化ガリウムを除く。)を製造する工程において粉砕をし、三酸化砒(ひ)素を製造する工程において焙(ばい)焼若しくは精製を行い、又は砒(ひ)素をその重量の三パーセントを超えて含有する鉱石をポツト法若しくはグリナワルド法により製錬する業務
六 コークス又は製鉄用発生炉ガスを製造する業務(コークス炉上において若しくはコークス炉に接して又はガス発生炉上において行う業務に限る。)
七 ビス(クロロメチル)エーテル(これをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
八 ベリリウム及びその化合物(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。)を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(これらの物のうち粉状の物以外の物を取り扱う業務を除く。)
九 ベンゾトリクロリドを製造し、又は取り扱う業務(太陽光線により塩素化反応をさせることによりベンゾトリクロリドを製造する事業場における業務に限る。)
十 塩化ビニルを重合する業務又は密閉されていない遠心分離機を用いてポリ塩化ビニル(塩化ビニルの共重合体を含む。)の懸濁液から水を分離する業務
十一 石綿等の製造又は取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
十二 ジアニシジン及びその塩(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
十三 一・二―ジクロロプロパン(これをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を取り扱う業務(厚生労働省令で定める場所における印刷機その他の設備の清掃の業務に限る。)
十四 オルト―トルイジン(これをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務


労働安全衛生法施行規則 第53条第1項(健康管理手帳の交付)

従事期間等の健康管理手帳の交付要件は、労働安全衛生法施行規則 第53条第1項で定められている。


健康管理手帳とはどのようなものであるのかについて、1972年4月25日の衆議院社会労働委員会で、塚原労働大臣が、「離職後の労働者について、従事した業務に起因して発生する疾病で、発病まで長期の潜伏期間があって、しかも発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のため」と答弁し、その後この見解が引き継がれている。
直近の国会でも、「離職後の労働者について、その従事した業務に起因して発生する疾患であって、発病まで長期の潜伏期間があり、しかも発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のために創設したものとの答弁がある(2022年4月20日衆議院厚生労働委員会)。

健康管理手帳