増加する原発労働者の被ばく労災認定  被ばく労働を健康管理手帳交付業務に指定せよ

1.放射線業務による疾病で労災認定は累計24人(2022年12月末現在)
 ①東電福島第一原発事故以前の35年間で10人が労災認定されました。
  白血病6人、悪性リンパ腫2人、多発性骨髄腫2人
 ②福島原発事故後14人が労災認定されています(2022年12月末現在)。
  出典:11月15日衆院復興特別委員会での政府答弁、12月23日の厚労省の発表
  白血病4人、真性赤血球増加症1人、悪性リンパ腫4人、甲状腺がん2人、咽頭がん2人、肺がん1人
(1)2022年10月末現在の支給、不支給決定状況
    この他に審査中が10件規模と推定されます。
 線量不明
期間申請支給不支給
1970年~
2007年度
14681.12.26慢性骨髄性白血病(40mSv)
94.07.27急性骨髄性白血病(72.1mSv)
94.07.27慢性骨髄性白血病(50.63mSv)
99.07.30急性リンパ性白血病(129.8mSv)
00.10.24急性単球性白血病(74.9mSv)
04.01.19多発性骨髄腫(70mSv)


8放射線皮膚炎
白血病性悪性リンパ腫
急性骨髄性白血病
再生不良性貧血
慢性骨髄性白血病
肺がん(2.9mSv)
急性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病
2008年度~
11.3.11
8408.10.27悪性リンパ腫(99.76mSv)
10.02.22多発性骨髄腫(65mSv)
10.06.25悪性リンパ腫(78.9mSv)
11.02.15骨髄性白血病(5.2mSv)
410.04.28悪性リンパ腫
10.04.28悪性リンパ腫
10.06.25悪性リンパ腫
10.09.14心筋梗塞(8.3mSv)
11.3.11~
22.10.31
381211.08.08悪性リンパ腫(175.2mSv イチエフなし)
12.09.24悪性リンパ腫(138.5mSv イチエフなし)
13.01.18悪性リンパ腫(105.5mSv イチエフなし)
13.12.16悪性リンパ腫(173.6mSv イチエフなし)
-----以上、事故以前の労災申請-----
15.12.20白血病(19.8mSv うちイチエフ15.7mSv)
16.08.18白血病(54.4mSv イチエフのみ)
16.12.16甲状腺がん(149.6mSv うちイチエフ139.12mSv)
17.10.20白血病(99.3mSv イチエフ96.3mSv以上)
18.08.31肺がん(195mSv うちイチエフ74mSv)
18.12.10甲状腺がん(108mSv うちイチエフ100mSv)
21.09.06咽頭がん(199mSv うちイチエフ85mSv)
21.09.06咽頭がん(386mSv うちイチエフ44mSv)



2611.06.21 骨髄性白血病 線量不明
12.02.06 悪性リンパ腫 線量不明
12.09.24 結腸がん、胃がん27.17mSv
12.09.24 食道がん 線量不明
13.07.24 骨髄性白血病 線量不明
13.07.24 白血病 線量不明
13.12.16 結腸がん 線量不明
-----以上、事故以前の労災申請-----
15.01.27 胃がん、白内障、肺がん 線量不明
15.01.27 膀胱がん、胃がん、結腸がん(56.41mSvイチエフのみ)
15.01.27 咽頭がん 線量不明
17.10 肝がん 線量不明
18.06 膵がん 線量不明
20.03 脳腫瘍 線量不明
22.06 前立腺がん 線量不明
わかり次第追加します。
22.11.01~
22.12.31
3?22.12.21真性赤血球増加症(139mSv うちイチエフ60mSv)
22.12.21白血病(78mSv うちイチエフ31mSv)
1?22.12 腎臓がん
1970年~
22.12.31
63?2439?

2.政府の厳しい認定基準でも、原発労働者の被ばく労災認定が増加
 1970年に原発が運転開始されてから今年12月現在で、24人が労災認定されています。
 年度ごとの労災認定数の推移、年度ごとの疾病発生数の推移をそれぞれ下図に示します。




(注)労災認定されたケースに付き、発症時期でプロットしています。

 2007年度以降は、労災認定された疾病がほぼ毎年1件以上の頻度で発生じています。
 更に、年2件発生する頻度が高まる傾向を示しており、被ばく労働による業務上疾病の発生頻度が今後更に高まっていくことが危惧されます。
 増加の要因としては、
 ①個人線量の増加、労働者数の増加などにより、集団線量が増加している
 ②被ばくからの年数が経過してがんの発生が増加傾向にあると考えられる
 ③長尾・喜友名労災支援運動により原発被曝労働者の関心が高まった
 ④厚労省がリーフレット「放射線による疾病の労災補償」を緊急作業従事者に直接9回配布している。
  (但し、肺がんなど固形がんは100mSv以上で労災認定と明示し、申請を抑制する内容)
 などが挙げられます。
 ①については、日本の原発等施設労働者の放射線疫学調査(第Ⅲ期、第Ⅴ期)の公表資料で個人被ばく線量の増加が確認されます。
  調査対象者は、1999年3月末現在登録されている約34万3千人の内、実際に被ばく労働に従事し、日本国籍を有する人は約27万7千人です。
  (注)放射線影響協会放射線従事者中央登録センター
  そのうち、男性労働者274,560人の被ばく線量分布が公表されています。
線量区分(mSv)<55-10-20-50-100-
人数(2002年度末)217,57221,95720,6449,0625,325
人数(2012年度末)190,77322,46822,39921,66210,2317,027
 10mSv未満の人数が減り、高線量側の人数が増えていることが分かります。
 各調査期間で生死が確認でき、調査期間に含まれる20歳以上の男性夫々約20万人の累積被ばく線量の平均値は、第Ⅲ期12.2mSvから第Ⅴ期13.8mSvに増えています。
 ②は、広島・長崎の原爆被爆者のがん死亡が1980年代に急増したことに相当すると考えられます。
 原発被ばく労働者は18歳から従事する若年層がかなりの割合を占めています。但し、従事開始時期が様々で、増加は緩やかと予想されます。
 ③については、喜友名さんを含め少なくとも10件の悪性リンパ腫が労災申請され、うち6件が労災認定されています。

原発被ばく労災認定24人は氷山の一角、原発労働者の総被ばく線量約4200人・Svからがん・白血病死だけでも400人規模
(1)1万人近い労働者が100mSv以上被ばく
 上記の疫学調査資料から、累積100mSv以上の男性は2012年度末で7,027人です。
 1999年4月以降の新規従事者からも13年間に100mSv以上被ばくした従事者が出ること、一部の労働者は福島第一原発事故の収束作業に従事していることなどから、累積100mSv以上の男性は現在は1万人に近い規模と推定されます。
(2)原発労働者の総被ばく線量約4200人・Svからがん・白血病死だけでも400人規模
 1970年以降の原発労働者の総被ばく線量は約4200人・Svです。詳しくは原発被ばく労働者の累積被ばく線量をご覧ください。
 広島・長崎原爆被爆者の疫学調査の結果から、「10人・Sv当たり1人のがん白血病死」という結果が出ています。
 この結果に基づけば、原発労働者の健康被害は400人規模、死に至らない「り患」を含めるとさらに多くなります。24件の労災認定は被害の一部にすぎません。
(3)少なすぎる労災申請・認定件数
 これまでに約70件の労災補償申請があり、24件が支給、不支給が約40件、残りが審査中と推定されます。海外の事例と比較すると、例えば被ばく労働従事者が日本より少ないと思われるイギリスに比べても、日本の労災申請は2分の1以下、認定は7分の1以下と、非常に少ない状況です。
 【参考資料】
 イギリスの原子力産業事業者と労働組合の間で被ばく疾病補償制度が設けられています(CSRLD:Compensation Scheme for Radiation-Linked Diseases)。
 1982年開始以来2021年までに、申し立て1710件、補償163件です。

3.線量限度を守っていれば、健康被害は生じないとしてきた厚生労働省は健康被害が生じている事実を重く受け止めよ
 労災認定された24件のうち7件は本人死亡による遺族補償です。電離放射線業務による疾病は重篤で死に至る場合が少なくないという事が事実で示されています。
 被ばく労働者には健康診断が義務付けられています。しかし離職後は無権利状態となり、健康管理は本人の責任とされています。
 被ばく労働を「離職後の健康管理を国が行う健康管理手帳の交付業務」に指定することを早急に検討するよう求めます。


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