被爆74周年原水禁世界大会・広島 「ひろば」
ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ、JCO、チェルノブイリを結んで ヒバクを許さない集い-Part20
核兵器禁止条約を批准・発効させよう! ヒバクシャに補償を!
2019年8月5日 広島 RCC文化センター7F



概要

 今年の「ヒバクを許さない集い」は「核兵器禁止条約を批准・発効させよう! ヒバクシャに補償を!」をテーマに開催しました。
 木原省治さんから報告「厳しい状況の中、過ちを繰り返さないために!」を、森滝春子さんから報告「核兵器禁止条約の批准・発効を求め」をしていただき、質疑・討論を行いました。
 参加者からは、日本政府が何故、核兵器禁止条約に参加し、署名・批准しないのかなど、率直な疑問が出され、今後の運動に向け、討論を深めることが出来た。また、広島の「慰霊碑の碑文論争」を巡る問題も議論され、「過ちは繰り返させませぬから」という決意を持ちたいなど、思いが語られた。来年開かれるNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向けて、核兵器禁止条約の批准・発効をめざしていかに運動を進めるのか議論され、世界の運動と連帯して進めていこうという呼びかけがなされた。
 続いて、福島の角田政志さん(福島県平和フォーラム代表)が「これまでの闘いの成果と今後の課題」について報告されました。
 核兵器禁止条約を批准・発効させよう! ヒバクシャに補償を!のアピールを採択しました。
 全国各地から若者から年配者まで幅広い年齢層の約60名が参加しました。

プログラム
主催者あいさつ
報告「厳しい状況の中、過ちを繰り返さないために!」木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会)
報告「核兵器禁止条約の批准・発効を求め」 森滝春子(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表)
質問/論議
報告 「戦いの成果と今後の課題」            角田政志(福島県平和フォーラム代表)
/アピール採択

「厳しい状況の中、過ちを繰り返さないために!」 木原省治さんの報告
 広島の被爆者数は今年3月現在14万6千人を割り、死没者が31.4万人を超えていること、広島は周りに米軍基地、弾薬庫、自衛隊施設が存在し、隣の岩国基地は厚木から空母艦載機が約60機移駐され120機にも増強され極東最大の航空基地となった。この広島で被爆二世として育ち、核廃絶・脱原発に取り組んで来た思いから説き起こし、現在の核を巡る厳しい状況の中で、再び過ちを繰り返させず、核兵器禁止条約の批准・発効を求めるためにどのような運動が必要かを、情勢を分析しながら以下の報告をされた。
 「1962年10月のキューバ危機以来の、最も厳しい状況の中にある」
 冷戦下の核軍拡競争の教訓から生み出された2本柱の条約の危機が訪れている。その一つは米・トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を通告し、ロシアも条約の履行を停止し、8月2日に失効したことである。二つ目は戦略兵器削減条約(新START)が米ロ間の深刻な対立の中で、2021年2月期限切れまでに、延長や更新という先行きの見通しが立っていないことである。
 加えて米トランプ政権が2018年に打ち出した「核態勢の見直し」報告で示された使いやすい小型核の開発である。これらの開発を進めるうえで欠かせないのが核実験であるが、米国はCTBT(包括的核実験禁止条約)の署名を撤回し、核爆発実験再開の道に進むのではないかという危険性がある。さらに、米・イランの核合意問題による中東地域の危険性が増強されている実態もある。この様な状況下で、核兵器禁止条約を批准・発効させるために二つの潮流の核兵器禁止条約、NPT条約については、評価する点、問題点の両面がある。
 「2020年は核兵器廃絶にとって節目となる年」、「核兵器禁止条約を発効させるために」私たちは何をすべきか。
 ①被爆国の市民として、何よりも核兵器は人道上許されない兵器である。抑止力で平和は守られない。この2点を訴えることは被爆国(ヒロシマ・ナガサキ)の重要な責務である。
 ②日本政府が真の「橋渡し役」を果たすためには、日本政府を「核の傘国」から脱却させること。そして、北東アジア非核兵器地帯の拡大などの外交努力をするように求める。
 木原さんは、この二点を強調し、あわせて朝鮮半島の非核化と朝鮮戦争の終結、国交正常化にむかわせること米ロに対して核兵器の削減について、協議を直ちに開始するよう要求することを指摘した。
 また、今年3月末に京都市で開催された「第4回核軍縮賢人会議」に於いて、核兵器廃絶日本NGO連絡会が提言したことを紹介した。その重要なものとして、「核兵器の非人道性に関する規範が形成される流れの中に、核兵器禁止条約が存在する事実を対話の出発点にすること」、「2020年のNPT再検討会議で、深い懸念に基づき禁止条約が成立した事実を認めること」であり、そして「日本の被爆者が核兵器廃絶を世界に訴えてきた事実を、国際社会に発信して欲しい」さらに、現在の核を巡る情勢が厳しくなっている中で「核軍拡競争の現実味が高まっている。核軍縮は確かな安全保障政策である。核戦争の準備を維持・強化することが安全保障というのは逆立ちした議論である。国際人道法に合致した核使用などあり得ない」等をあげた。  しかし、現在の状況を踏まえると、NPT再検討会議の場で、日本政府の代表が言う事は決まっている。再検討会議までの残りの期間で、どう何を訴えて行くかが課題であるとして、以下の内容を訴えられた。
 ・著名人・経済界リーダー・宗教界から賛同を得て、核兵器禁止条約の発効を可視化する。
 ・自治体に核兵器禁止条約への賛同決議を求める行動(日本国内では395自治体が批准を求める決議を行っている。海外では、ワシントンDC、パリ、マンチェスター、ベルリン、シドニー等)
 ・国会議員への核兵器禁止条約批准に向けての要請行動。広島では若者が会を結成し、この行動に取り組んでいる。
 ・核兵器に金を貸すなキャンペーン…銀行への核兵器製造企業からの投資引き上げを促す行動など
 木原さんは最後に、被爆者の子供として広島で生まれ思う事として、
  ①原爆投下から74年が過ぎ、被爆二世の特別な役割があること。
  ②広島・長崎の体験が象徴的なものとして育ってきた、日本の平和運動があること。
  ③核兵器の廃絶を求めてきた原点は、核兵器の非人道性ということにほかならない。
  ④原爆詩人の栗原貞子さんの詩「ヒロシマというとき」(アジア・太平洋戦争における日本の戦争責任について考え、加害者としての立場を謳った)
  ⑤世界中からの、そしてヒロシマの心を担ってきた先輩たちの期待に応えねばというのが、被爆二世として生き広島に暮らしているものとして思う事である。
 と語られた。

「核兵器禁止条約の批准・発効を求め」 森滝春子さんの報告
 「木原氏から報告依頼を受けて、無事でいるかなと思っていましたが、8・6を迎えることが出来、やってきたこと、今、持っている決意を若い人に伝え、また8.6から再スタートしなければと自分を奮い立たせています。」と自己紹介され本題に入られた。
 劣化ウラン兵器の問題がイラク戦争の時に起きたが、その頃からイラクに何度か行っており、NGOとしての役割を果たし、国連の外での運動を担ってきた活動を話された。
 さらに森滝さんの運動基盤の一つである「核兵器廃絶を求めるヒロシマの会」(HANWA)が取り組んできた課題と活動について話された。
 クラスター爆弾の禁止条約が2008年12月に採択・成立した。それは非人道兵器として国際的に使えない兵器として法制定された。この事に直面し、「核兵器もそうだ」と、「いわば直観みたいなもの」を感じ取った。
 今の森瀧さんの一番の関心事として、ここ3年間、核兵器禁止条約の国連での採択・批准に向けて取り組んで来られた。「2017年、核兵器禁止条約が国連で採択されるに至ったが、核兵器の問題はこれまでも世界のすべての国が参加する国連で5年に1度開催されるNPT再検討会議とその準備会議で検討されてきた。
 そこには当然、核兵器保有国も参加している。私は2010年まではこれらの会議に参加してきた。日本は1000人を超える人が行っており、特別に多い。しかし、実際には討論は膠着状態で前進がない。
 この様な現状の中で、世界に目を向けなければならない。日本は『核抑止力』に頼る国である。膠着状態を打開するには、世界の核廃絶に向けたネットワークが必要だと強く認識した。
 クラスター爆弾は『非人道兵器』として、国際的に使えないと法制定されると、実際に使えないという事が国際的に共通認識となった。」
 「既にコスタリカが核兵器禁止条約のモデルを出していた。2010年のNPT再検討会議前に、そのペーパー(核兵器禁止条約を締結すべきというHANWAからのアピール)を、国際赤十字委員会の13人の人達に送った。すると、すぐさま正式な返事があり『私たちは広島の人達と共にある』とのことだった。そこで国際的にアピールしていこうとの動きとなった。」
 「核兵器の人道的影響国際会議」は2013年にオスロで開かれたのが最初であった。第2回がメキシコ、第3回がオーストリアで開催・討議された。オーストリアはホスト国としてNGOを受け入れ、会議が継続された。核兵器の様な,けた違いの非人道兵器を廃絶することは凄いことで、国連でのシビアな闘いとなる。2014年のオーストリアでの会議に森滝さんは参加され、その厳しい核兵器国と非核兵器国とのシビアな応酬(本格的なヤジや議論)を目の当たりにされた。オーストリア政府、外相の努力が大きく、国際会議最後のオーストリア外相のまとめ演説に感動し、その本気度が伝わって来たと強調された。
 「広島で活動してきた者として、2017年国連で採択されたあと、本格的に動いてきた。今が頑張り時だと広島の仲間に呼びかけ、27団体の賛同で実行委員会を結成し、13回にわたる共同行動を行った。国連や海外に広島から発信すると私たちが思う以上に反応があった。若者との連携、その力が大きかった。ICANなど国際的なNGOが台頭し動いていった。広島―日本―世界のネットワークの連帯した力といった、この様な運動を目標にせねばならないと思う。」と語られた。
 また、森瀧さんは、核兵器を作る過程で、ウラン採掘から始まり、核燃サイクル全体の過程で生み出される核被害者、環境汚染、核汚染について映像で紹介された。  最後に広島として訴える必要があることとして、日本政府が核兵器禁止条約に反対し、批准しないことは特に問題であり、広島市長宣言(8・6の市長による広島宣言)として条約への署名・批准を明記するように、被爆者等、23団体として申し入れをしていることを述べられた。「残念だが、広島市としてではなく広島の被爆者が要請しているとの旨で記載されるという情報を得ている。世界に対して、日本は足を引っ張っているが、今日の集会に参加された広島の仲間、全国の皆さんと連帯して頑張りたい」と締めくくられた。

「戦いの成果と今後の課題」 角田政志さんの報告
 福島事故から8年を経て、国と東電の責任を問い、福島全県、全国の運動が結実し、福島のすべての原発を廃炉とする正式決定が闘い取られたこと、山積する多くの深刻な実態・課題が話された。
 ①事故被災者の生活再建の課題、賠償・補償の問題、原発事故関連死は19年3月末で2272人に上っていること。
 ②未来を担う子供の避難、被災地の学校の問題。
 ③低線量被ばくの中での生活、健康問題。
 ④除染廃棄物の問題、トリチウム汚染水の処分問題(国は海洋放出を含む処分案を提出)
 等々である。

ヒバクを許さない集いーPart20 アピール
 今年で20回目を迎えた「ヒバクを許さない集い」では、広島から核兵器禁止条約の批准・発効を求める二人の報告を受け、今後の運動をいかに強めていくのか等の議論を深めることができました。さらに2011年の福島原発事故以降、継続して「集い」でも取り組んできた福島事故被害の課題について現地からの報告を受け、事故被害の切り捨てを許さない、今後の運動の課題など討論を深めることができました。
 ・米国など核五大国による新たな核軍拡に反対し、核軍縮義務を果たさせよう!
 ・2020年NPT再検討会議に向けて核軍縮を進め、核兵器禁止条約を発効させる運動を強めよう!
 ・日本政府に核兵器禁止条約の批准を迫ろう!
 今年8月、原爆投下から74年を迎え、来年はヒロシマ・ナガサキから75年、NPT(核不拡散条約)発効から50年の節目の年となります。しかし、米ロの破棄によるINF全廃条約の失効や宇宙軍拡など、世界で新たな核軍拡の動きが強まっています。また、来年のNPT再検討会議に向けた今年の準備委員会では「勧告」が採択できないまま閉幕しました。「条約に基づいた核軍縮構造が損なわれている事への懸念の表明」や「核兵器を禁止する法的拘束力のある規範の必要性の認識」を巡り、核保有国や日本等その同盟国と、核兵器禁止条約推進国との対立が鮮明になり、両者の決裂が懸念されています。
 さらに、タンカーへの攻撃に端を発して、米国がイラン包囲の「ホルムズ海峡」有志連合の結成を呼びかけ、中東での新たな戦争の危険が高まっています。米国が「イラン核合意」を守り、中東の非核化交渉に乗り出してはじめて、中東の緊張緩和も可能です。このことは来年のNPT再検討会議の成功のためにも不可欠の条件です。
 被爆地広島に集まった「集い」参加者は、核兵器は人道上許されない「絶対悪」の兵器であること、「核抑止力」では平和は守られないことを強調しました。そして、核兵器禁止条約を批准し、条約の早期発効に向けて国際社会に働きかけることこそが「被爆国」・日本の政府の責務であることを確認しました。核兵器禁止条約の発効は、あらゆる核兵器の禁止から廃絶への一歩となるものです。条約の発効は、長年にわたる被爆者の思いや核兵器禁止・廃絶の運動を前へ進めます。2020年のNPT再検討会議に向けて、被爆者の核廃絶の思いや、核軍縮と核禁止をめざす国内外の運動を草の根からさらに拡げ、また次世代へと繋ぎ、核兵器禁止条約の発効から核廃絶へと前進しましょう。
 ・福島原発事故から9年目を迎え、被害の切捨てを許さない!
 ・国・東電に事故被害者の健康・生活の補償を行なわせよう!
 今年、東電は福島第二原発の廃炉を決断しました。昨年6月の東電の廃炉検討表明以降も全基廃炉の即時決定を求めてきた運動の成果です。重大事故を起こした国と東電の責任を問い、被害者支援・賠償の切捨てを許さず、被害者の人権の確立と補償を求める取り組みが進められています。
 福島原発事故の被害はなかったことにする「安全宣言」、「復興宣伝」のための「放射線のホント」や「放射線副読本」の撤回を求めましょう。さらに「ALPS処理水の海洋放出計画」撤回を求め、モニタリングポストの撤去方針を白紙撤回させ、被害者の補償を求める運動を拡大・強化していきましょう。
           2019年8月5日
           ヒバクを許さない集い Part20 参加者一同

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