被爆73周年原水禁世界大会「ひろば」
フクシマ、ヒロシマ、ナガサキを結んでヒバクを許さない集い-Part19
今考えてほしい福島事故
2018年8月5日 広島 RCC文化センター7F

概要
 今年の「ヒバクを許さない集い」は「今考えてほしい福島事故」をテーマに開催し、浪江町の避難校に勤務されている柴口正武さんを迎え、「避難校から見た原発震災」の報告を受けました。
 特に福島県東部が放射線管理区域レベルの放射能汚染が今後も長期に継続すること、その状況で生活するか故郷を離れて生活するか個人に選択が迫られていることを話されました。
 続いて、事故発生から現在に至るまで浪江町の子供たちが置かれた状況や避難指示が解除された地域のこどもをとりまく状況、子どもの教育権が失われた中での避難校での取り組みを報告されました。
 福島県平和フォーラムの角田さんから、東電が第2原発廃炉の方針を検討すると表明したこと、政府がトリチウム水の海洋放出を決めたこと、政府のモニタリングポスト削減反対の取り組み、甲状腺検査に係る医療費無料化に関して県が検討している「受給者証」を健康手帳につなげたい、など報告されました。
 復興庁の「放射線のホント」は福島原発事故の被害がなかったことにするもので撤回させるべきとの意見がありました。
 今原水禁世界大会に招聘されたベラルーシのジャンナさんが参加され、家族が病気や早い死の被害を被ったこと、賠償では補えない故郷を失った悲しみや苦しみ、子供が故郷の作文が書けなく差別感をもったことなどを話されました。
 主催者から、被災者の尊厳が失われた形で事故がなかったかのように進めることは許されない、政府は反転攻勢をかけている、もっと知ってもらいたい、との「まとめ」がありました。
 福島の被害を共有し、事故がなかったことにする政府の方針は許さないとするアピールを採択しました。
 豪雨災害の影響もあり参加者は昨年の70名からは少ない50名で、初参加者は約5分の1でした。

プログラム
主催者あいさつ                木原 省治 (原発はごめんだヒロシマ市民の会)
報告 避難校から見た原発震災         柴口 正武 (福島県教組双葉支部長)
質問/論議/アピール採択

柴口正武さん(福島県教組双葉支部長)の報告
 柴口正武さんは特に福島県東部が放射線管理区域レベルの放射能汚染が今後も長期に継続すること、その状況で生活するか故郷を離れて生活するか個人に選択が迫られていることを話されました。
 次に、浪江町の子供たちが福島県各地に、さらには全国に散らばって避難している状況、子供たちの一部は避難した学校で学び、最近は避難指示解除に伴って再開・新設された地元の学校で学んでいるがその数が事故前とは激減し、朝の学級活動、授業、給食、清掃、その他諸活動、帰りの学級活動などの日常生活。スポーツ大会「パワーアップ大会」 、水泳学習、体育大会(福島では「中体連」と呼んでいる)前の壮行会、文化祭、入学式や卒業式などの行事、などの活動それぞれに、工夫をこらして運営していきながらも、その姿は通常のものとは言えない、子どもは学習権を奪われていると話されました。
 一世帯の構成人数が減ったこと、震災前に近くに住んでいた親戚とは遠く離れたこと、近くに親しい人がいなくなったこと、避難先での近所付き合いも負担感があること、そうした中で子どもたちの多くが他人とのコミュニケーションを苦手とし生活体験も乏しいこと、これらのことは、「避難」、それにともなう「転校」を複数回繰り返してきたことが、大きな原因と考えられること、避難校ではたらく私たち教職員、とりわけ同じ避難者である教職員には、そんな子どもたちを特別な思いで支えていく義務があるとの思いと取り組みのいくつかを紹介されました。
 次に、「ふるさと学習」について、保護者から「避難先にせっかくなじもうとしているのに里心を抱かせるようなことはしないでほしい」「戻ることがかなわないのに意味がないのではないか」という意見が寄せられる一方で、「ふるさとに戻らないと決めたが、子どもが本来のふるさとのことを学ぶ機会を学校が設けてくれることはありがたい。」という声もあり、ふるさとをテーマに教育実践している私たちにとっては力強いエールとなっていると話されました。
ふるさとに入れない中でのふるさと学習についての工夫と、例えば浪江町を訪れても人との触れ合いはなく、短時間の滞在で、宿泊は遠く離れた地を選ばざるを得ないなどで様々な困難があったことを話されました。
 職場体験は避難校所在地の二本松市針道の企業や商店のお世話になったことを紹介されました。
 さらに、「補償金はいくらもらっているの」という言葉で学校に行けなくなった事例、「出身地は?」といった言葉が子供たちには差別と感じられること、地元の高校がなくなったことによる進路指導の困難さ、共に助け合って生きることを子供たちが学んだこと、原発事故を公害ととらえ教育現場で原発事故がなかったことにさせないと「教材ふたば」を残していること、など報告は具体的で多岐にわたりました。
 ジャンナさんの話を聞かれた柴口先生は、チェルノブイリ事故で同じようなことがあったと改めて知った、福島の地を薄めたいと転校を繰り返す子供がいるので近くにそのような子供がいたら支援していただきたいとしめくくられました。

案内ビラより
 福島第一原発事故によって、福島県と東北・関東の広範な地域が高濃度に放射能汚染され、福島県だけでも最大16万5000人が避難を余儀なくされました。人格権など住民の人権は踏みにじられ、住民は分断され、様々な形の避難生活を余儀なくされ、避難は長期に及び、住民票を移した人も多数います。福島第一原発では事故発生以降、緊急時作業に続き、汚染水対策・事故収束・廃炉に向けた作業に多数の被ばく労働者が従事しています。ここ数年、その中から、白血病や甲状腺がんなどの労災認定が相次いでいます。
 2014年4月以降、「年間20ミリシーベルト以下となることが確実」とする放射線規準によって徐々に避難指示解除が進められ、2017年3月には、帰還困難区域以外で残っていた、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、南相馬市の一部区域の避難解除がされました。しかし、帰還率は数%~数十%に留まり、未だに5万人近い住民が避難生活を余儀なくされています。帰還した人々の多くは高齢者で、家族離散の状況にあり、事故前と同じ生業は営めず、医療・介護設備も整わない中、元の生活にはほど遠い状況です。
 福島第一原発事故は大量の放射性物質をまき散らし、様々な形の深刻な被害をもたらしています。しかし政府は、オリンピック誘致の際の安倍首相の「アンダーコントロール」発言をはじめ、できるだけ事故を小さく見せようとしています。更に、原発事故被害の切り捨てを進めています。その一方で、全国の原発の再稼働を進めています。
 今年の「ヒバクを許さない集い」では、原発事故から今まで避難校に勤務されてきた柴口正武先生から「避難校から見た原発震災」の報告を受けます。
 先生は昨年夏の東京での集会で、原発事故がもたらした被害がなかったことにされることは許さないと訴えておられます。直面された諸問題、それに向き合い取り組んでこられたこと、今後の問題など、避難校から見た原発震災の実相を共有したいと思います。そして福島原発事故とは何であったのかを共に考え、原発事故被害の切り捨てを許さず、東電損害賠償の継続、国の責任による健康補償、原発のない社会の実現に生かしていきたいと考えます。皆様、ぜひご参加ください

ヒバクを許さない集いーPart19 アピール

 福島第一原発事故によって、福島県と東北・関東の広範な地域が高濃度に放射能汚染され、福島県だけでも最大16万5000人が避難を余儀なくされました。人格権など住民の人権は踏みにじられ、住民は分断され、様々な形の避難生活を余儀なくされ、避難は長期に及び、住民票を移した人も多数います。福島第一原発では事故発生以降、緊急時作業に続き、汚染水対策・事故収束・廃炉に向けた作業に1日5000人規模の多数の被ばく労働者が従事しています。これらの被ばく労働者もまた福島原発事故の被害者です。ここ数年、その中から、白血病や甲状腺がんなどの労災認定が相次いでいます。
 「年間20ミリシーベルト(公衆の被ばく限度の20倍)以下となることが確実」を放射線基準として、2014年4月以降徐々に避難指示解除が進められ、2017年3月と4月に、帰還困難区域以外で残っていた避難指示区域のうち、浪江町、富岡町、飯舘村、川俣町、南相馬市で避難指示が解除されました。しかし、帰還率は数%から数十%に留まり、未だに5万人近い住民が避難生活を余儀なくされています。帰還した人々の多くは高齢者で、家族離散の状況にあり、事故前と同じ生業は営めず、医療・介護設備も整わない中、元の生活にはほど遠い状況を強いられています。
 福島第一原発事故は大量の放射性物質をまき散らし、様々な形の深刻な被害をもたらしています。しかし政府は、オリンピック誘致演説の「(福島第一原発の)状況はコントロール下にある」との安倍首相発言をはじめ、できるだけ事故を小さく見せかけようとしてきました。2017年3月の「自主避難者」への住宅支援の打ち切り、2018年3月の東電の「精神的賠償」の打ち切り、と続いています。原発事故がもたらした被害がなかったことにされることは許されません。
 今年の「ヒバクを許さない集いPart19」では「避難校から見た原発震災」の報告を受け、福島原発重大事故の被害の実相を共有し、原発重大事故を繰り返してはならないことを再確認しました。
 原発事故被害の切り捨てを許さず、東電賠償の継続、国の責任による健康手帳交付、医療・生活保障を求めましょう。
 フクシマの被害をないがしろにし、新たな核被害につながる原発再稼働に反対し、脱原発を目指しましょう。

           2019年8月5日
           ヒバクを許さない集い Part19 参加者一同

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