被爆70周年原水禁世界大会「ひろば」
フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び ヒバクを許さない集い-Part16
被爆70周年を迎え、被爆体験を継承、共有し、
国の責任であらゆるヒバクシャの健康・生活保障を行わせ、被害の補償をさせよう
2015年8月5日 広島 カレントコスモ
概要
原爆が投下され70年を迎えた今年の「集い」では以下の4つのテーマを取り上げました。
①原爆を語り継ぐ会の畠山裕子さんに「死と背中合わせに生きる被爆者―原爆後障害について」話して頂きました。
池田さんは、小学校1年生の時に学校で爆心地から3.5km地点で被爆したこと、多くの親戚が、被爆による直接被害や後障害で亡くなっていった被爆当時のことを話されました。
続いて、被爆者援護法制定を求め、一丸となって戦争責任に基づく国家補償の一点で闘い続け、長崎・広島から何度も国会行き、座り込み、政府交渉、国会議員への請願行動など、あらゆることに取り組んだこと、しかし「戦争の被害は一般の犠牲として、すべての国民が等しく受忍しなければならない」という受忍論の壁は崩すことができず、国家補償は実現できていないこと、など今日までを語られました。
更に、安倍政権の戦争への道を阻止し、戦争法案を廃案にしていくために一緒に頑張って行きたいとの思いを訴えられました。
②長崎原爆の被爆者でありながら被爆者とは認められず、被爆者手帳を交付されていない「被爆体験者」の裁判闘争を支える、相談役の平野伸人さんが、「被爆体験者」の現状と裁判の状況を報告されました。
③福島と全国を結んだ「19歳以上の甲状腺医療費無料化」運動の勝利を今後の闘いに繋いでいく課題について、集い事務局の建部暹さんと福島現地で闘われている角田政志さんが報告されました。
④「原発作業労働者の緊急時被ばく限度の250ミリシーベルトへの引き上げを許さない闘いを全国にひろげよう」との内容で集い事務局の建部暹さんが報告されました。
盛り沢山の内容でしたが、①のテーマが根底となって、ヒバクの問題は人権問題であり、すべての人が自分の問題として考えていく重要性について議論が深められました。討論に参加された福島、北海道、広島等の参加者からは安倍政権の戦争法制定に対する危機感を基に、ヒバクの問題は人権、憲法改悪問題と共通性があることを認識し、今後の闘いを担っていきたいとの意見が多く述べられました。今後の闘いに向けた取り組みの強化に向けて、アピール、特別決議を採択、確認し、来年の集い集会ではそれらの成果を持ち寄った討論へと発展させられるようにと誓い合った。
参加者は約50名、初参加者は約3分の1でした。
プログラム
主催者あいさつ 木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会)
報告 死と背中合わせに生きる被爆者―原爆後障害について 畠山裕子(被爆を語り継ぐ会、会員)
被爆体験者裁判 平野伸人(「被爆体験者訴訟」原告団相談役)
甲状腺医療費無料化の取組み 建部暹(集い事務局)、角田政志(脱原発福島県民会議共同代表)
緊急時作業被ばく限度の250ミリシーベルトへの引き上げ反対の闘いを全国へ 建部暹(集い事務局)
全体討論 / アピール採択
案内ビラより
今年は被爆70周年の節目の年を迎えます。被爆体験と被爆者運動が原水爆禁止運動の基礎となってきました。あらためて原爆被害の壊滅的で悲惨な実態や、被爆者が「被爆者援護法」を求めて闘ってきた歴史をふりかえることは、原水禁運動を継承し発展させ、核被害者の補償を求めていく上で大切なことです。
広島・長崎では20万を超える人々が被爆直後、苛酷で悲惨な原爆死に追いやられました。そして生き残った被爆者も、生命と健康、暮らし全般にわたって生涯苦しめられてきました。被爆者への償いとして行われるべき国家補償は戦後70年を経た今なお行われていません。被爆を招いた侵略戦争を起こした国の責任を問い、一刻も早く国家補償に基づく被爆者援護を行わせていく必要があります。
さらに、今なお、被爆者健康手帳が交付されずに援護の対象外におかれている被爆者も数多く残されています。現在、被爆者健康手帳の交付を求めて、長崎では「被爆体験者」の控訴審が闘われています。
今年の「集い」では、第一に広島被爆者から、戦争、核に反対し、健康や生活の保障を求めて闘ってきたことをふりかえり、今なお続く原爆後障害について話して頂きます。
第二に、被爆の後障害に苦しみながらも「被爆者」として認められず、援護法による支援を今なお受けられない長崎の「被爆体験者」に、健康手帳の交付をさせるために裁判に取り組まれている闘いの報告を受けます。
2011年福島原発事故以降、私達は事故が国の原発推進の結果、起きたことを明確に問い、被害者の健康と生活を保障する健康手帳を要求する運動に取り組んできました。そして「国の責任による福島県の19歳以上の甲状腺医療費無料化」を求めて全国署名運動と対政府交渉を進めてきました。その運動の力で、甲状腺医療費の初めての公的支援を勝ち取ることができました。
第三に、この運動の報告を受けます。今後さらに健康手帳などによる健康・生活保障を求めていくために、被爆者運動の経験に学び、共に被爆者や「被爆体験者」の継続する闘いを支援し、交流・討論を深めます。
第四に、原発の再稼働・維持に向け、政府は労働者を犠牲に原発の緊急時作業被ばく限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトへ引き上げ、生涯線量1000ミリシーベルトの導入を強行しようとしていますが、このことを報告します。労働者の安全と健康を守り、フクシマを繰り返さないために、労働者の緊急時被曝基準緩和反対運動を全国に広げる特別決議を発します。
「ヒバクを許さない集いーPart16」アピール
国の責任で被災者住民・フクシマ事故被曝労働者に健康手帳を交付し、
健康保障・生活保障を行わせよう! 政府は被爆者援護法に準じた法整備を行え!
福島の19歳以上の甲状腺医療費無料化を広範な運動の力で早期に実現させよう。
1.被爆70周年を迎え被爆者運動から学び・連帯し、被爆体験を共有し、若い世代に継承していきましょう!
悲惨な戦争・被爆体験を繰り返さないため、安倍政権による憲法違反の戦争法案を廃案に追い込みましょう!
今年は被爆70周年を迎えます。原爆投下によって、被爆者は壊滅的で、悲惨な被爆体験を強いられました。最も苦しかった被爆後約10年間はプレスコード(原爆報道規制)が敷かれ、「原爆」を口にすることさえ難しい状況でした。その間も、その後も長年にわたって被爆者は健康、生活全体に渡る保障を求めて闘ってきました。粘り強い被爆者運動を通じて、「医療法」(1957年)、「特別措置法」(1968年)「被爆者援護法」(1994年)を勝ち取ってきました。しかし、国は侵略戦争を行った責任、原爆投下の責任を認めず、被爆者に謝罪せず、死没者への補償も行っていません。国は被爆者が平和で、健康に生きる権利を求めてきた要求とはほど遠い、限定された健康・生活保障を進めてきたにすぎません。
被爆直後から、70年を経た今日まで原爆症、被爆後障害に苦しんでこられた被爆体験と被爆者運動について、本日、広島の被爆者に語って頂きました。無差別大量虐殺を引き起こす非人道兵器の禁止を求める、被爆者運動の重要性については、今年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議で初めて国際的に理解され、確認されたところです。被爆者運動と連帯し、被爆体験を共有し、多くの人々、とりわけ若い世代に継承して行きましょう。
長崎では70年経った今も、原爆後障害に苦しんでいるにも拘らず、原爆被爆者とは認められない「被爆体験者」が被爆者健康手帳を求めて裁判で闘っています。この闘いを支援し、すべての「被爆体験者」に被爆者健康手帳を即刻交付させましょう。
そして今、高齢化した被爆者には切実な問題が残されています。①被爆者の数%しか認められない原爆症認定制度の見直し。②被爆体験者・黒い雨地域などの被爆地域の拡大。③被爆2,3世への援護法適用。④在外被爆者への国内被爆者と同等の援護の実現です。これらの闘いを支援していきましょう。二度とふたたび被爆者をつくらせないために、国に侵略戦争の責任を認めさせ、謝罪させ、国家補償を明記した被爆者援護法に改正させるよう求めていきましょう!
安倍政権は、被爆者を生み出した日本の侵略戦争の責任を認めず、日本国憲法の真髄である国民の平和に生きる権利を踏みにじり、解釈改憲で集団的自衛権行使へ突き進もうとしています。被爆者の願いである核戦争のない「未来の保証」を顧みない、憲法違反の戦争法案を廃案に追い込みましょう。
2.福島と全国を結んだ「19歳以上の甲状腺医療費無料化」運動の勝利をさらに拡大させ、国の責任ですべての被害住民(福島県と周辺県の汚染地域住民、「自主避難者」を含む避難者、被ばく労働者)に(注)「健康手帳」の交付、健康・生活保障を行わせましょう!
私たちは昨年来、福島と全国を結び、「国の責任による福島県の19歳以上の甲状腺医療費無料化」を求めて署名運動を広げ、政府交渉に取り組んできました。その結果、国は今年2月末に「当面の施策の方向性」の中で「県民健康調査の甲状腺検査の結果、引き続き治療が必要である場合の支援を行う」と発表しました。7月10日、福島県の「県民健康調査甲状腺検査サポート事業」がスタートしました。この国の支援を具体化させ、福島県は生じた医療費負担について県外移住者も含めて全額支援(発生時にさかのぼり支給)を決めました。福島と全国を結んだ運動の力で国の支援を引き出すことができたのです。運動が勝利したことを確認しましょう。
しかし現在、政府は「子供被災者支援法」の基本方針の改訂を進めています。立法過程の論議からは、福島県全体と年1㍉シーベルト以上の汚染が生じた近隣県の住民を支援対象地域とすべきところを、政府は福島県の一部の33市町村に限定してきました。さらに「1㍉シーベルト以下になった」とみなす地域への支援を切り捨てようとしています。
これまでの被ばくに対して、これからの被ばくに対して、すべてのフクシマ事故被災者に対する支援の拡大が求められています。19歳以上甲状腺医療費無料化運動の成果を踏まえ、さらに国の施策として、生涯にわたる医療費の保障、「健康手帳」の交付、近隣県で行われている甲状腺自主検査への支援と検査の拡大を行わせていきましょう。原発を推進してきた国の責任を明確に問い、福島だけではなく、周辺県も含め、福島事故被害者全員への「健康手帳」の交付、恒常的な健康・生活保障を求めて行きましょう。
3.緊急時作業被ばく限度の250㍉シーベルトへの引き上げ反対!
250㍉シーベルト超の被ばくを容認する「運用」を許さない!
生涯1000㍉シーベルトの大量被ばく容認を許さない!
重大事故を前提とした原発の再稼働反対!
再稼働中止の運動と結んだ、法令改定中止の全国署名運動を全国へ拡げましょう!
政府は原発再稼働のために、フクシマ事故を省みず、原発重大事故を前提として原発再稼働を進めています。それと並行して、原発重大事故時には「破滅的な状況を回避し住民の安全、財産を守るためには労働者の高線量被ばくは正当化される」として、緊急時被ばく限度を250ミリシーベルトに引き上げる法令改定作業を進めています。
250㍉シーベルトは広島原爆の爆心から1.7kmでの遮へいなし直接被爆の被ばく量に相当します。被爆者が経験してきた健康障害、多くの自覚症状に基づけば、急性症状を発症し、その後、ガン、白血病はじめ様々な、一般疾病など多くの後障害に苦しまざるを得ません。政府は被爆者が経験してきた健康障害、被ばく事故から得られた事実を無視しています。
さらに、緊急時作業被ばく限度は参考レベルとの考えを考慮した「運用」による250ミリシーベルト超えの「容認」、生涯線量1000mSvを導入し大量被ばくを容認する「事後の被ばく線量管理」などを持ち込んでいます。
これらは労働者の人権を無視し、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第3条を無視・蹂躙し、労働安全衛生法に違反し、労働者保護の法体系を破壊するものです。
原発の再稼働を中止すればこのような緊急時被ばく限度引き上げなど不必要です。フクシマを繰り返さないために、川内1・2号をはじめ原発再稼働を中止させましょう。緊急時被ばく限度引き上げ反対の署名運動を全国津々浦々に拡大し、引き上げを中止させましょう。
(注):現在、闘われている「甲状腺医療にかかわる」と限定して、今は運動を進めていく必要があると会場から意見が出されました。
2015年8月5日
ヒバクを許さない集い Part16 参加者一同