被爆69周年原水禁世界大会「ひろば」
フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び ヒバクを許さない集い-Part15
国の責任による福島事故被災者への健康手帳交付を求める運動を全国に広めよう
2014年8月5日 広島 ホテルチューリッヒ(東方2001)
概要
ヒバクを許さない集い Part15は、「フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び、国の責任による福島事故被害者への健康手帳交付を求める運動を全国的に広めよう」をテーマに4名によるシンポジウムを行いました。
1.最初に、4人のパネリストから報告を受けました。
☆社民党福島県連合副幹事長の佐藤龍彦さん:「3・11原発事故から3年半―現状と課題」
3年半、あたかも事故がなかったかのような再稼働の動きがあるが、事故も収束しておらず、誰も責任をとっていない。未だに13万人が先の見えない避難生活を余儀なくされ、汚染地域では放射能の恐怖に怯えながら暮らしている。「原発事故さえなかったら」「原発はたくさんだ」「元の暮らしに戻せ」との思いから、フクシマの苦しみを再び繰り返してはならないためにも川内原発の再稼働を許さない闘いを福島から発信していくことの重要性が強調されました。
☆元広島県原水禁事務局長の横原由紀夫さん:「被爆者援護法制定運動からフクシマへ」
福島の人が今後同じ歩みになるのではとの前置きをし、「放射能による健康被害・不安」と原爆によってもたらされた「生活破壊に対する援護」の要求がきっかけで取り組まれた原爆被爆者の援護法制定運動を中心に話されました。また、原発についても、憲法違反で訴えていきたいとの考えも示されました。
☆原水爆禁止日本国民会議・議長の川野浩一さん:「福島事故被災者に健康手帳を」
被爆者5団体で一緒に政府への要望を行っており、脱原発をはじめ、被爆者健康手帳の交付、健康被害への対策、ヒバクシャへの差別対策などを取り上げています。また、最近食道がんが見つかり、孫に隔世遺伝するのではないかと心配したことも打ち明けられました。
☆集い事務局の建部暹さん:「甲状腺医療無料化を求める取組み」
福島県の「県民健康調査」で約30万人(事故当時18歳以下の子ども)の甲状腺超音波検査が行われ、1000名以上が通常診療での経過観察が必要とされ、90名の子どもたちが甲状腺腫瘍「悪性(ガン)または悪性疑い」で51名がすでに手術を受けていること、それらの医療費が19歳以上で個人負担となっているとの報告と併せて、福島の19歳以上の甲状腺医療費無料化の要請書賛同署名の要請もありました。
2.質疑では、福島から京都や関東へ移住した若い人からの質問が多く出され、報告を補強する形でさらに討論を深めることができました。
3.しめくくりとして、4人のパネリストが今後の取り組みについて述べました。
☆建部さん:「甲状腺医療費の無料化など具体的課題で勝ち取っていきたい。それを健康手帳交付・被爆者援護法に準じた法整備の運動につなげたい(後半の部分は報告の中で、運動の位置づけとして説明済み)。再稼動も戦争を出来る国作りも平和的生存権を否定しているので、被災者支援、再稼動反対、憲法を守る運動がつながり協力することを訴えたい。」
☆川野さん:「どこまでを被爆者とするのか線引きが69年経った今でも決まっていないことから、福島の場合どうしていくのか今後の課題。」
☆横原さん:「独自行動の必要性と共同闘争では原水禁が中心になる必要がある。」
☆佐藤さん:「一つひとつ解決していくナショナルセンターが必要であり、原水禁がもっと前にでることが大きな支えになる。」
4.最後に、「政府は、全ての被災住民と被ばく労働者の健康と命を守り、生活を支援する具体的施策として、『原爆被爆者援護法』に準じた法整備を行い、国の責任・ナ『健康手帳』交付、無料の検診と医療支援、生活支援等包括的施策を行うべきです。そのためにも、原発被災者支援を政府に迫る全国運動へと前進していこう」との集会アピールを採択するとともに、要求実現にむけ、本気で取組みを進めていくことを参加者全員で確認しあいました。
参加者は約50名、初参加者は約3分の1でした。
プログラム
主催者あいさつ 木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会)
報告 福島における健康手帳交付、健康・生活保障の取り組み 佐藤龍彦(社民党福島県連合 副幹事長)
被爆者援護法制定運動の教訓 横原由紀夫(元広島県原水禁事務局長)
福島事故被災者に健康手帳を 川野浩一(原水爆禁止日本国民会議 議長)
甲状腺医療費無料化を求める取組み 建部 暹(集い事務局 ヒバク反対キャンペーン共同代表)
全体討論 / アピール採択
案内ビラより
福島第一原発事故はいまだ収束していません。発熱し続ける溶融燃料塊は冷却し続けねばならず、放射能の地下水、海水、大気への漏洩が続き、「汚染水問題」の対策のメドもたっていません。
福島第一原発では毎日その多くが事故被災者でもある5千人もの労働者が動員され、除染にも多数の労働者が駆り出され、多重構造の無権利状態の下で過酷な被ばく労働に従事させられ、被ばくが蓄積し、使い捨てされています。
放射能汚染地域は福島県にとどまらず周辺県にも広がり、「放射線管理区域」レベルの汚染地に約400万人(2011年8月末)もの人々が放射能と向き合いながらの生活を強いられています。約13万人(2014年5月)が福島県内外で先の見えない避難生活を余儀なくされ、心身の健康悪化、生活困難など深刻になっています。被災者は基本的人権を踏みにじられています。
政府は「100ミリシーベルト以下なら放射線被ばくの健康影響は他の要因による変動の範囲内」との見解に立ち、福島事故の健康被害を事実上否定しています。主催5団体と脱原発福島県民会議、原水爆禁止日本国民会議、全国被爆2世団体連絡協議会は被災者の要求を基本に、福島事故後10回にわたり対政府交渉を重ねてきましたが、政府は「国の責任で被災者、原発事故処理労働者に健康手帳を交付し健康・生活を保障せよ」という私たちの要求を受け付けようとしません。全国の運動の力で実現する事が今重要な課題です。
福島では、「健康・生活保障」の取組みがこの1年で大きく前進しています。3月の県民大集会の要求事項に「健康の確保」が盛り込まれました。自治体独自の健康手帳は双葉・中通りの6市町村に広がっています。19歳以上の甲状腺医療費無料化の運動や健康手帳学習会が取り組まれています。
今回の「ヒバクを許さない集い」はここをベースに、「福島事故被災者への健康手帳交付を求める運動を全国に広めよう。事故被災者に健康手帳交付を!国の責任による被爆者援護法に準じた法整備を!19歳以上の甲状腺に係わる医療費の無料化を!」をテーマとして報告・討論を行います。
福島の佐藤龍彦さんに、全国の原発再稼動反対」、「損害賠償」とともに「健康・生活保障」を重要な課題と位置づけ進めきたこの1年の取組みを報告していただきます。
長年原水禁運動に携わってこられている広島の横原由紀夫さんと長崎の川野浩一さんから、「被爆者援護法制定運動の教訓」、「福島原発事故被災者に健康手帳交付を」のテーマで報告を受けます。
「国の責任による福島県の19歳以上の甲状腺に係わる医療費無料化」の運動は、甲状腺医療費の保障が早急に求められていることに加え、被爆者援護法に準じる法整備につながる点でも重要です。取り組みを「集い」事務局から報告します。
安倍政権は「原発推進」に回帰し、再稼動、原発輸出を進めようとしています。その下では福島原発事故のような過酷事故も受け入れることも迫られており認めることはできません。原発事故で踏みにじられた基本的人権を回復することと、新たな原発重大事故による被災者の基本的人権の蹂躙を許さないことは一体です。国の責任による福島事故被災者の救済を、「脱原発・再稼動反対」の運動と両輪で進めるために討論を深めましょう。
「ヒバクを許さない集いーPart15」アピール
国の責任で被災者住民・フクシマ事故被曝労働者に健康手帳を交付し、
健康保障・生活保障を行わせよう! 政府は被爆者援護法に準じた法整備を行え!
福島の19歳以上の甲状腺医療費無料化を広範な運動の力で早期に実現させよう。
福島原発事故は収束していません。発熱し続ける溶融燃料の塊りを冷却し続けねばならず、放射能の漏洩が続き、「汚染水問題」の対策のメドもたっていません。福島原発では毎日、4~5 千人もの労働者が汚染された過酷な現場に動員され、除染作業にも多数の労働者が駆り出されています。その圧倒的多数を占める下請け労働者は、無権利状態の下で被ばく労働に従事させられ、被ばく量が蓄積し、使い捨てされています。
事故による放射能は福島県にとどまらず周辺県にも広がり、「放射線管理区域」レベルの汚染地には何百 万人もの人々(2011 年8 月末で約400 万人)が放射能と向き合いながらの生活を強いられています。2014 年5月現在、約13 万人が福島県内外で先の見えない避難生活を余儀なくされ、健康は日々悪化し、「心の傷」 も進行し、日々の生活も困難な事態が進行しています。「人格権」(憲法13条、25 条)をはじめ被災者の基本的人権が奪われています。原子力政策を推進し、重大事故を招き、被災者の基本的人権を奪った国の責任は重大であり、厳しく問わなければなりません。
政府は「100 ミリシーベルト以下なら放射線被ばくの健康影響は他の要因による変動の範囲内」との見解から、福島事故の健康被害を事実上否定し、被災者支援を切り捨てようとしています。しかし、どんな低線量の被ばくでも被ばく量に応じた健康リスクがあり、被ばくの健康影響にはこの線量以下では影響が見られないという「しきい値」がないことは、広島・長崎の被爆者の健康調査などから明らかです。また、被ばくによって起こる健康被害は甲状腺ガンにとどまらず、ガン以外の疾患も起こることも明らかです。
政府は、全ての被災住民と被ばく労働者の健康と命を守り、生活を支援する具体的施策として、「原爆被爆者援護法」に準じた法整備を行い、国の責任で「健康手帳」交付、無料の検診と医療支援、生活支援等包括的施策を行うべきです。これら健康と生活に関する要求は事故被災者が生きぬくための基本的権利です。浪江町・双葉町は政府に健康手帳交付・被爆者援護法に準じた法整備を要求し、浪江町、双葉町、富岡町、二本松市、桑折町、飯舘村は独自に健康手帳を作成し市民に配布しています。
福島県の「県民健康調査」で事故当時18歳以下の子どもたちの甲状腺検査が行われ、90 名の子どもたちが甲状腺腫瘍「悪性(ガン)または悪性疑い」と診断され、51名がすでに手術を受けたと報告されています。甲状腺「ガン・疑い」の診断や手術を受けた人々以外にも、1000名以上が通常診療での経過観察が必要と診断されています。子どもたちが 19 歳以上になると福島県の「子育て支援」の対象外となり、すでに甲状腺医療費の自己負担が生じています。福島の19歳以上の甲状腺に関する国の医療支援(無料化)を求め、 広範な運動の力で早期に実現させましょう。甲状腺検査を受けた人たちの基本的な権利として医療費無料化 を要求しましょう。そしてこの運動を、「健康手帳」交付等、より包括的な国の施策につなげていきましょう。
さらに国の責任による全般的な原発被災者支援を政府に迫る全国運動へと前進していきましょう。
安倍政権は「原発推進」に回帰し、再稼動、原発輸出を進めようとしています。福島原発事故のような過酷事故を受け入れることも迫っており、緊急時作業被ばく限度の引き上げに向けても動き出しています。断じて許すことはできません。福島原発事故被災者の人権回復を求めて行くことと、新たな原発重大事故による被災者の人権蹂躙を許さないことは一体です。原発再稼動・原発輸出に反対する運動と結んで、福島原発 事故被災者の命・健康・生活を保障させる全国的な運動を作っていきましょう。
原発推進への回帰も、戦争をできる国にすることも憲法の「平和的生存権」を否定するものです。原爆被爆者の闘いを教訓とし、フクシマとヒロシマ・ナガサキを結び、原水禁の運動を拡大・強化し、脱原発、反核平和、憲法擁護の運動と連帯していきましょう。
2014年8月5日
ヒバクを許さない集い Part15 参加者一同