被爆68周年原水禁世界大会「ひろば」
ヒバクを許さない集い-Part14
フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び
国の責任による福島事故被災者への健康手帳交付を求める運動を全国に広めよう
2013年8月5日 広島 ホテルチューリッヒ(東方2001)
概要
ヒバクを許さない集い Part14は、「フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び 国の責任による福島事故被災者への健康手帳交付を求める運動を全国に広めよう」をテーマに、約80名の参加で開催しました。
主催者あいさつに続いて、事務局から、これまで、原水禁や原子力資料情報室、全国の市民団体で取り組んだ、政府行動などの報告が行われました。
続いて、福島県浪江町住民の大倉満さんが「福島の現状と課題-浪江町から」と題して報告。事故直後からこれまでも続いている、政府や東京電力の住民無視の対応、ヒバクから生じている差別や偏見、そして住民間に生じている亀裂について話されました。また浪江町が独自に発行している「健康管理手帳」についても報告され、将来に亘って抱え続けなければならない、健康不安や心配、生活保障のために、健康管理手帳の交付を求める運動の必要性を訴えました。
次に、広島県原水禁常任理事の金子哲夫さんが「原爆被爆者運動を被災者救済にどう活かすか」と題して報告。自らが、原爆被爆者援護法の制定運動に長く関わっている中で感じた経験を話しました。放射線障害は、「悪性腫瘍」だけではなく、免疫力の低下から生じると思われる様々な病気が有ることを報告。長期間にわたって健康への影響を危惧しなければならないことを話しました。そして、なんとしても「被災者としての証明」を得ることが、健康手帳交付を求める運動の出発点になると強調しました。
この度の集いは、パネルディスカッション形式で行うこととし、参加者から被災者差別の問題や原爆被爆者援護法制定運動について、二人の報告者に質問がされている最中に、浪江町長の馬場有さんと、健康保険課長の紺野則夫さんに駆けつけていただき、二人からの話を聞くことになりました。
馬場有町長は、政府や東京電力の原発事故情報隠し、ごまかしなどを話された後、浪江町住民約2万1千人の内、1万6千人が避難生活をしている状況、原発事故関連死が浪江町民だけでも、285人となっていること、子どもたちは全国699校の小中学校に分かれて学校生活を行っている現状を話され、「いつまで流浪の旅が続くか分からない」と、結ばれました。
紺野課長は、健康管理手帳発行についての実務的な仕事に関わった立場から、手帳の中味に心掛けたこと、健康管理手帳を拡大していく必要性を報告。
ディスカッションの後、「国は、国策で原発を推進し重大事故を招いた責任、そして多くの人々を被ばくさせた責任を認め、国の責任で福島県民、及び年1ミリシーベルト以上の追加被ばくをさせられた地域の被災者には法的根拠のある『健康手帳』を交付し健康保障・生活保障を行うべきである。そのために、一大国民運動を巻き起こしていこう」という趣旨のアピールを確認しあい、様々な課題や困難な問題も予想されるが、原子爆弾被爆国の市民としての責務として、この運動を進めていくことを参加者全員で確認しあいました。
プログラム
主催者あいさつ 木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会)
1.基調報告:被災者への健康手帳の交付を求める闘いを広げよう 建部 暹(集い事務局)
2.報告:福島の現状と課題-浪江町から 大倉 満(浪江町住民)
3.報告:被爆者運動を被災者支援にどう活かすか 金子哲夫(広島県原水禁常任理事)
4.パネルディスカッション形式の参加者も含めた全体討論 / アピール採択
案内ビラより
フクシマ事故から2年4か月が経ちましたが、事故は収束していません。事故原因も究明されていません。しかし、電力会社と政府は各地の原発再稼働を狙っています。政府は「脱原発」を否定し、重大事故は起こらないとする従来の立場を転換させ、フクシマのように原子炉が破損する重大事故が起きることをも想定に含める「新規制基準」を決定しました。これは、住民と労働者に重大事故の被ばくを強要してまでも、あくまで原発の延命を図るものです。早速電力4社が再稼働申請しました。政府は原発輸出の動きも強めています。
事故2周年行動を軸に脱原発を求め、再稼働に反対する大規模な行動が首都圏、関西など全国で継続して闘われています。
フクシマの現状は2年を経てもなお15万人が避難生活を強いられている等、深刻さは変わっていません。政府は「100ミリシーベルト以下なら放射線被ばくの健康影響を示す証拠はない」との基本見解に立ち、国の責任による支援はなく、被災者は今も放置されています。昨年6月に成立した子ども被災者支援法の基本方針策定は年内を目途のレベルに先延ばしされています。
私たち下記の主催5団体と脱原発福島県民会議、原水爆禁止日本国民会議、全国被爆2世団体連絡協議会は被災者の要求を基本に、フクシマ事故後7回にわたって対政府交渉を重ねてきましたが、政府は「国の責任で被災者、原発事故処理労働者に健康手帳を交付し健康保障を行え」という私たちの要求を受け付けようとしません。運動の力で国の責任によるフクシマの被災者、事故処理労働者への健康手帳交付を実現する事が今重要な課題となっています。
今回の「集い」では、浪江町の大倉満さんから「福島の現状と課題-浪江町から」というテーマで避難時の状況、その後の避難生活の苦しみ、昨年浪江町が独自に作成した健康手帳を全住民に配布し政府に法的根拠のある健康手帳の発行・被爆者なみの健康保障や手当支給などの法整備を求めたこと、その要求が双葉町村会に拡大していることなど、自らの体験をふまえて語っていただきます。続いて、広島で反核平和運動を闘ってこられ、被爆者運動を支援してこられた金子哲夫さんに「被爆者運動を福島事故被災者の救済にいかに活かしていくか」というテーマで話して頂きます。
これらの報告を受けて、被災者と連帯して、脱原発の運動と車の両輪として、いかに「国の責任による健康手帳交付と医療保障・手当支給」を政府に迫る運動を全国に広めるかなど、被災者支援に向けて何ができるか考え話し合いましょう。
「ヒバクを許さない集いーPart14」アピール
国の責任で被災者住民・フクシマ事故被曝労働者に健康手帳を交付し、健康保障・生活保障を行わせよう!
福島事故から2年5か月、事故は収束していない。そればかりか福島第一原発の観測井戸の地下水から高濃度の放射性物質が検出され、その一部は海に放出されている。福島第一原発1~3号炉内には大気放出量の数十倍の放射能が融け落ちて固まった核燃料の塊となって存在し続けている。これを冷やし損なえば、セシウムなどが蒸発し再度放出される恐れがある。この燃料塊の冷却水は極めて高濃度の放射能汚染水となり、十数万トンが建屋や配管の中に滞留し、その一部が地下水へ漏れ出ている。フクシマ事故の原因が明らかにさせられないまま、電力会社、政府は原発を再稼働させる準備を推し進め、海外への原発輸出を行おうとしている。私たちは、原発再稼働と海外輸出を許すことはできない。「新原子力規制基準」は、原発の重大事故が再び起こるリスクを国民に受忍させるものである。フクシマを繰り返してはならない。
福島第一原発事故後2年5ケ月経た現在も15万人が汚染地からの避難生活を余儀なくされ、数百万の人々が放射能で汚染された環境の中での生活を強いられている。事故当初、政府は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)の予測結果を公表せず、多くの住民は避けられたはずの被ばくをさせられた。なかでも浪江町の住民は放射線量の高い所に避難を余儀なくされ、子供達は被ばくを受けながらグランドで遊んだ。この様な事態はほんの一例に過ぎない。政府の責任は重大である。国は福島県の「県民健康管理調査」を支援するのみで、主体となって健康調査を行おうとしていない。昨年6月に成立した「子ども被災者支援法」も、国は未だ「基本方針」も策定せず、具体的な施策を引き延ばしている。浪江・双葉町さらに二本松市でも、「行動(被ばく)と健康の記録」のための「健康手帳」が町・市により住民に配布されている。また、浪江町をはじめとする双葉町村会は、政府に原爆被爆者と同等の法律に基づく「放射線健康管理手帳」の交付と医療費の無料化などを求めている。私達はこれら被災地の切実な要求を支持し、その実現を強く求めるとともに「子ども被災者支援法」の「基本方針」とその施策の早期実現を求める福島と周辺県の被災住民の運動とも連帯する。
国は被災地住民に対して「100ミリシーベルト以下の放射線被ばくが健康に影響を及ぼす明確な証拠はない」として健康被害を切り捨て、被災者を放置したままである。しかしどんな低線量の被ばくでも、線量に応じたガン死のリクスをもたらすとする広島・長崎の被爆者の寿命調査報告(LSS第14報)は健康被害の切り捨てが間違いであることを明らかにした。
国は、国策で原発を推進し重大事故を招いた責任、そして多くの人々を被ばくさせた責任を認め、国の責任で福島県民、及び年1ミリシーベルト以上の追加被ばくをさせられた地域の被災者には法的根拠のある「健康手帳」を交付し健康保障・生活保障を行なうべきである。
被災住民に止まらず、事故原発の過酷な労働現場で高線量被曝を強いられている原発事故処理労働者に対する健康保障も原発推進を行ってきた国の責任である。また、汚染地の除染作業労働者の被ばく管理と健康保障もなされなければならない。労災保険の枠内で扱われる問題では決してありえない。事故による全ての被ばく労働者に一人残らず「健康手帳」を交付し、健康保障をすべきである。
広島・長崎の被爆者対策も一度の要求で勝ち取られたものではない。健康保障に留まらず、政府の原発推進政策の結果招いた今回の福島原発事故による加害責任を明確に問い、謝罪させ、健康補償制度へと向かわせることが求められている。
原発事故被災者、被曝労働者の援護を求める運動は被災者支援を通じて二度とヒバクシャを生まない運動である。脱原発を求める運動と被災者支援の運動を車の両輪として闘おう。全国各地で闘われている脱原発運動と結んで、一大国民運動を巻き起こし、原発事故被災者・被曝労働者の健康保障を求め共に闘い抜こう。
さらに「国家補償の精神」に基づく全般的な原発被災者支援を政府に迫る全国運動へと前進しましょう。
2013年8月5日
ヒバクを許さない集い Part14 参加者一同