被爆67周年原水禁世界大会「ひろば」
ヒバクを許さない集い-Part13
フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び
国の責任による被災者の補償を求めて
2012年8月5日 広島 ホテルチューリッヒ(東方2001)
概要
約70人が参加し、「フクシマとヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び 国の責任による被災者の補償を求めて」をテーマに、福島から双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さん、原水禁議長の川野浩一さんを講師に集いを行いました。
まず「原発はごめんだヒロシマ市民の会」の木原省治さんが主催者の挨拶として、原爆被爆者が長年求めつづけてきた援護法は、今でも完全なものとは言えない。福島原発事故の被曝者への援護法を求める運動は、長くて多くの困難が伴うと思われるが、福島原発事故のヒバクシャに対しても国家補償の精神を究極の目標として求めることが必要だと話しました。
続いて、石丸小四郎さんは、ゴーストタウンと化した双葉町駅前通りに「原子力 明るい未来のエネルギー」という看板がかかっている写真の紹介、現地の生々しい報告をしました。そして福島原発事故は現在進行形であり、未だに収束していないこと、事故を風化させてはならないこと、原発推進集団は無責任集団であること、東京電力の体質は問題の隠ぺい・過小評価・先送りというものである。このままでは東京電力はかなりの確率で、収束・廃炉作業を放棄することが想定されることなどを話しました。
次に川野浩一さんは、被爆者としての自らの経験を話しながら、国家補償とは、原爆被害の補償(過去の補償)・被爆者の生活と健康を守る(現在の保障)・再びヒバクシャをつくらない(未来の保証)という3つの柱に基づいていると話しました。しかし、原爆被爆者に対する国の姿勢は「これ以上、被爆者に金を出さない、被爆地域を拡大してくれるな、被爆者を増やしてくれるな、被爆者に要求を出させるな」というものだったと話し、運動の厳しさも訴えました。ヒロシマ、ナガサキではあえて問題に取り上げられなかった内部被曝や低線量被曝の問題が、福島では大きな問題として存在していることを話し、核兵器も原発もない社会を共につくって行こうと訴えました。
続いて、ヒバク反対キャンペーンの建部暹さんから、現状の福島事故被災者への国や自治体が行っている施策や要求内容の報告、今後目指すべき課題として、「原発を推進した国の加害責任を追及し、国の責任による健康手帳の交付と健康保障を求めよう」との提起がありました。
質疑討論では、福島原発事故による被曝者に健康手帳を交付させる運動を起こすこと。「既にヒロシマやナガサキで、どんなに低線量でもガン・白血病、それ以外の病気も含めてリスクはあるという科学的データは出ている。被爆者をモルモットにした放射影響研究所ですら閾値はないと発表している。ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャの苦しみの中から出てきたデータを、フクシマでも活かして行く、そういう具体的な要求を国に問い詰めて行くことが必要」。「この集いで出た話を、国会議員、政府、厚労省の役人は皆知らない。継続した働きかけをして欲しい」といった意見が出ました。まとめとしてヒロシマ・ナガサキ・JCOを結び、連帯して福島の被災者への国の責任による健康手帳の交付と健康保障を求めていく運動に取り組み、「フクシマ事故被害者へ国の責任で行う国家補償に基づく「原発事故被災者援護法」の制定を目指して(求めて)いこうとのアピールで、運動をすすめていくことになりました。
プログラム
主催者あいさつ 木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会)
1.講演:福島の現状 石丸小四郎(双葉地方原発反対同盟)
2.講演:被爆者の運動からフクシマ事故を考える
川野浩一(原水爆禁止日本国民会議議長)
報告:被災者と事故処理被曝労働者への健康手帳の交付と健康保障を求める闘いを広げよう
事務局(ヒバク反対キャンペーン 建部暹)
全体討論 /アピール採択
案内ビラより
クシマ事故から1年5ケ月を経ようとしています。しかし事故はいまだに収束していません。原発政策を推し進めてきた政府は事故の原因も明らかにできないまま、大飯3・4号炉を再稼働させました。
さらに驚いたことに、「脱原発」を目指すのではなく、今年6月20日に成立させられた「原子力規制委員会設置法」の目的では、「原子力利用における事故の発生を常に想定し」とされ、重大事故が再び起こることを常に想定して原子力政策を推進するとしています。
同時に「原子力基本法」も改訂されました。原子力利用の安全の確保について、「…わが国の安全保障に資することを目的とする」が追加されました。これは日本の核武装準備のために核開発が継続される危険性をはらんでいることを意味します。反核平和・脱原発、国の戦争責任を認めた「被爆者援護法」の制定を求めて闘い続けてきた原水爆禁止の闘いを、私たちはさらに強めて行かねばなりません。
長崎の「被爆体験者」は被爆者と認めて健康手帳を支給せよの闘いを継続するため、7月2日福岡高裁に控訴しました。私たちもこの闘いを支援していきましょう。
フクシマの現状は1年を経てもなお16万人が避難生活を強いられる等、深刻さは変わっていません。今年の「集い」では福島現地で反原発を粘り強く闘われ、今も避難生活を余儀なくされている石丸さんから福島の現状について語って頂きます。
そして長崎で反核平和運動を闘ってこられ被爆者運動を担ってこられた現在、原水禁国民会議の議長である川野さんから、フクシマ事故、被災者の保障を求める運動への思いなどを話して頂きます。
フクシマ事故後、私たちは政府と4回にわたって交渉してきましたが、国は自らの責任で被災者、原発事故処理労働者の健康保障を行おうとはしていません。フクシマの現状についての認識をさらに深め、被爆者の体験とフクシマの被災者の体験をつないで、今後私たちはフクシマ事故被災者の運動を支援し、どのように全国で闘いを進めていくのか、議論を進めていきましょう。
ヒバクを許さない集い-Part13 アピール
・ 3.11から1年5ケ月が経とうとしている。フクシマ事故は収束せず、余震等でチェルノブイリ事故の10倍もの放射能が放出される危険も去っていない。事故原因も究明されていない。それにもかかわらず脱原発を求める世論と運動を無視し、野田政権は大飯3,4号炉を再稼働させた。「決してフクシマを繰り返させてはならない」と脱原発の闘いは、首都圏から、福井をはじめ各地にうねりとなって拡がった。7月16日、「さようなら原発10万人集会」が繰り広げられ再稼働に反対し脱原発を求める17万人が東京に結集した。このうねりを力強いものとして発展させ全国に拡げていこう。
7月23日出された政府事故調査・検討委員会の最終報告は、事故被災者に対する政府・東電の謝罪を求めることもなく、責任も問うていない。原発を推進してきた国、電力会社の責任を具体的に問い詰め、謝罪させる闘いが急務となっている。これらの闘いと結んで「原発さえなかったら奪われなかった命」を避難のために亡くした高齢者や自殺者に対する補償、避難を強いられた被災者、放射能汚染に曝されながらの生活を余儀なくされている被災地住民の健康と生活の保障、今も増え続ける事故処理作業被曝労働者の健康と生活の補償を求めていこう。
・ フクシマ事故は福島県と周辺の東北、北関東の広大な土地を放射能で汚染し、その結果、放射線管理区域レベルに汚染された土地に400万人が居住している。政府は「100ミリシーベルト以下の被ばくでは、明らかな健康影響の証拠はない」と、被ばくの危険を過小評価し、被災者に低線量被ばくの受忍を強要している。さらに「年間20ミリシーベルト以下であれば人が住める」とし、避難区域の解除再編を進めている。
福島県の18歳以下の子供たちに対する医療費の無料化は、国は自らの責任で実施することを拒否し、福島県の施策とさせた。しかし国に対する批判の高まりの中で国に基金の充足が義務付けられたが、県外に住民票を移した避難者は無料化の対象外となっている。国は3月成立させた福島復興特措法の基本方針を7月13日閣議決定した。しかし同法では健康への影響に対する取り組みはあくまでも不安解消が主目的である。福島、宮城をはじめとする被災地住民の健康保障を求める運動を支援し、浪江町等の「健康手帳」と成人を含めた医療費の無料化などの法的措置を求める被災自治体の要求を支持し、「原発事故子ども・被災者支援法」の具体的な実施を求める闘い等を支援していこう。
国の責任による被災住民に対する健康管理手帳の交付、健康診断、医療費の無料化、被ばく低減のための居住区の除染や食品汚染の徹底管理、避難・保養の支援や、生活保障等の実施を迫っていこう。
・ 福島第一原発の緊急作業にはこれまで2万2千人が動員され、多くの「ヒバクシャ」が生み出され続けている。事故処理作業なくして事故は収束され得ない。ところが手帳交付され離職後を含めた健康管理の対象となる労働者は50ミリシーベルトを超えた約860人に限定している。
高線量の被ばくを強いられる被曝労働者の被ばく量をごまかすために線量計を鉛で覆う悪徳業者が摘発された。これまでも原発被曝労働者の杜撰な被ばく管理、「被ばくの二重帳簿」が行われ、告発されてきた。事故処理作業の実態を明らかにし、労働環境の整備及び線量管理の徹底などを通して、被曝労働者の健康を保障させることは急務である。
3.11以降の事故処理作業や除染作業のすべての労働者に対し、「手帳」を交付し、健康診断や健康被害を補償させることが重要である。
同時に、これまで大量の被ばくを強制され、健康被害を放置されてきた全ての原発被曝労働者に対しても、離職後の健康診断や健康被害をも保障させることが不可欠である。
・ 増え続ける震災関連死者、避難生活の疲労と先が見えない不安、要介護認定される人々の増加、妊婦の避難に伴う福島県内の出産の激減、食品の放射能汚染を心配する消費者、土地、川、海など生活基盤である生産の場を放射能で汚染され苦しんでいる生産者、地域共同体の結びつきや家族の崩壊、等々、多岐にわたる多くの苦しみをフクシマ被災者は強いられている。20数万人に及ぶ児童たちは、事故から1年経って「復興」の名の下に、屋外活動の制限が解除され「無防備に」汚染に曝されている。
原爆被爆者は、被爆者ゆえに健康・生活・労働、社会的差別の苦しみを強いられてきた。被爆者は健康・生活の補償を求めて半世紀以上にもわたって被爆者援護法制定を求めて闘ってきた。「原爆被爆者の苦しみをフクシマで繰り返してはならない」という思いを重く受けとめ、被爆体験と事故の被災体験をつなぎ、ヒロシマ・ナガサキとフクシマを結んで交流・連帯を深め、いっさいの核の廃絶をめざす闘いを強めよう。国の戦争責任、原爆被害の放置責任を明確にさせ、死没者への弔意を示し、ヒバクを二度と繰り返させないことを求めた国家補償に基づく「被爆者援護法」制定を求める闘いに学ぼう。そしてフクシマ事故被災者への健康・生活等の諸施策を国の責任で行う国家補償に基づく「原発事故被災者援護法(仮称)」の制定をめざしていこう。
2012年8月5日
ヒバクを許さない集いーPart13 参加者一同