被爆66周年原水禁世界大会「ひろば」
踏みだそう脱原発
フクシマ・ヒロシマ・ナガサキ・JCOを結んで
ヒバクを許さない集い-Part12
2011年8月5日 広島 ホテルチューリッヒ(東方2001)
概要
福島第1原発事故後5ヶ月を過ぎた8月、「集い」は12回目を迎えたが、改めて「ヒバクを許してはならない」との思いを共有し、講演・討論がなされた。
主催者挨拶
木原省治さんは、広島で反核・反原発運動に取り組まれて来られた立場から、また「もしかしたらあの被爆のせい?」と心配しながら生きてこられた立場から、「フクシマ」と同じ痛みを知るものとして、痛みの共有を感じていると語られた。
国民運動として取り組まれ、盛り上がった被爆者援護法が持つ3つの補償(過去、現在、未来)のうち、二度と被爆者を作らないという未来の補償は「フクシマ」につながるものだと強調され、そして原発を一時も早く廃止していくことを強く訴えられた。
「フクシマ」現地報告
双葉地方原発反対同盟で長年活動されてきた佐藤龍彦さんは、次の点を強調された。
①200万人が住む福島は全域が一般の人のヒバク許容線量である1ミリシーベルトを越え、半数の100万人が暮らす地域が放射線の管理区域と化してしまったこと。
②第一次産業はすべて崩壊し、避難を強いられた地域はゴーストタウンと化し、この地では生活できないのではないか?と感じていること。
③何よりも原発を即時廃止すること、郷里フクシマを返せ、核と人類は共存できない!であり、皆さんと共に闘うことを誓うと力強く訴えられた。
フクシマ事故によるヒバクの押しつけを跳ね返すために
チェルノブイリ・ヒバクシャ救援に取り組まれてこられた講師の振津かつみさんは、世界の「フクシマ」となってしまった原発事故を防ぐことができなかったことは非常に残念で、くやしいことであり、二度と繰り返してはならないと訴えられた。
「フクシマ」の事故の汚染とヒバクはチェルノブイリ事故に並ぶ規模であり、チェルノブイリ事故を契機に大幅に規制緩和し、導入した「国際放射線防護委員会」(ICRP)による「緊急時ヒバク」の「基準と勧告」を日本政府は取り入れ、ヒバクによる健康リスクを過小に評価して労働者、住民に被ばくを押し付けている。
被ばくの押し付けと原発の推進は表裏一体のものであり、それを跳ね返すために脱原発をめざし、あらゆるヒバクシャ=核被害者と連帯して行く必要があると語られた。
課題と取り組み
事務局を代表してヒバク反対キャンペーンの建部暹から、福島県民、被曝労働者に対して国の責任による長期的な健康管理、健康補償を行わせていくための課題と、政府に向けた行動提起がなされた。
総合討論とアピール採択
会場からは、原発の交付金について、被災者の被ばくによる差別の問題をどのように受け止めたらよいのか?避難をするとき国、東電は何もしなかったのか?原水禁運動の伝統である、いかなる放射能汚染にも反対していくことの重要性、国・東電の責任を問い原発を止める運動が大切等、原水禁運動の基礎に立ち返って闘う重要性など多くの質問、意見が出された。
プログラム
1.主催者挨拶 フクシマ事故に際して広島からのメッセージ
木原省冶 (原発はごめんだヒロシマ市民の会)
2.フクシマ現地報告 佐藤龍彦 (福島県警戒地域避難民、双葉地方原発反対同盟)
3.フクシマ事故によるヒバクの押しつけを跳ね返すために
振津かつみ (チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西)
4.課題と取り組み 建部暹 (集い事務局 ヒバク反対キャンペーン)
5.総合討論とアピール採択
案内ビラより
今年3月11日に引き起こされた東電福島第一原発事故は未だに収束していません。日本の原爆被爆者は半世紀以上にわたりヒバクの苦しみ、悲惨を経験し、繰り返してはならないとの強い思いで国家補償による被爆者援護法を求め、被爆者運動を展開してきました。しかしまたもや、「平和利用」の原発の重大事故により、被災地住民や原発労働者をはじめ、多くの人々に深刻な放射能被害がもたらされています。放出された放射能は日本のみならず世界を汚染し、放出は今なお、継続しています。私達は脱原発に向かって力を結集し、運動を強めて行かねばなりません。
集いでは、福島現地より被災者を迎えて現状報告、脱原発に向けた思いを訴えて頂きます。さらに、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援運動に長年取り組まれ、福島現地の方々と交流してこられた振津医師に、原発事故が引き起こされても原発を継続・推進させていくために押し付けられるヒバク基準に対する問題、それをいかに跳ね返していくのかなどを報告して頂きます。
「集い」事務局より、福島県民、被曝労働者に対して国の責任による長期的な健康管理、健康補償を行わせていくための今後の課題等を報告します。フクシマ、ヒロシマ・ナガサキの原爆被爆者、JCO臨界事故被曝者、チェルノブイリ事故被害者、あらゆる核によるヒバクシャを結んで連帯した運動を強め、脱原発をめざし、ヒバクを許さない取り組みの前進、健康手帳の発行と補償の実現などをめざして、全国各地で運動の輪を広げていくために討論を深めましょう。
踏み出そう脱原発
フクシマ・ヒロシマ・ナガサキ・JCOを結んで
ヒバクを許さない集い-Part12 決議
チェルノブイリ事故に次ぐ重大なフクシマ事故を招き、本日私たちは、住民と労働者が被曝させられ今も被曝を強要され生活を破壊され続けていることへの憤りと、このような事故を繰り返してはならない、核と人類は共存できない、脱原発を実現したい、核のない世界を実現したいとの思いを持ってここに結集しました。
スリーマイル、チェルノブイリによっても原発は国策として推進され続け、ついに福島第一原発の炉心溶融事故を招きました。事故は今も収束していません。
これまでにチェルノブイリ事故の5分の1規模の放射能が大気中に放出され、福島県のほとんど全域が放射線管理区域のレベル以上に汚染され、関東・東北一帯さらには中部地方の一部の広大な土地が汚染されました。同規模の放射能が冷却水に溶け出て原発の地下に4万トンの高濃度汚染水となって溜まっています。放射能雲から降下した放射能と故意の汚染水放出や漏れ出た汚染水で海洋が汚染されました。緊急作業労働者・住民が被曝させられ、それは今も増加しています。高汚染地域の人々は生活と生産活動の場を奪われ着の身着のままで避難を余儀なくされ、家も職も失い、塗炭の苦しみを嘗めさせられています。農畜産物・海産物の汚染が後を絶たず様々な形で広がりを見せています。
事故は国策として原発を推進してきた結果です。私たちは、原発の推進を支えてきた国、電力会社と原子力関連産業、研究機関および研究者、県の責任を問います。
本日の集いで福島現地からの脱原発の思いを聞き、私たちはその思いを共有しました。原発が推進される限り多くの被曝被害者が生み出されます。福島事故は核と人類は共存できないことを改めて私たちに突き付けています。福島事故から脱原発に踏み出しましょう。政府にエネルギー政策の転換を迫り、今こそ脱原発を実現させましょう。福島現地と交流し、連帯して、1000万人署名など脱原発に向けた全国的な取り組みを各地で展開しましよう。
政府は住民と労働者に事故による放射線被曝を押しつけ、放射能汚染と被曝の中で生きることを強いています。私たちはそれに抗して、現地の人々と連帯して政府に人々の命と健康を守ることを求め、放射能の危険が高い妊婦や子供をはじめ住民と労働者に被曝を強要する基準の撤回、汚染の除去、被曝の低減、被害の補償を要求します。消費者もまた事故の被害者です。ともに連帯して取り組みの輪を全国に広げましょう。
①政府は3月21日のICRP声明を受け入れ、事故による住民の被曝の限度を年20ミリシーベルトとする基準を導入しました。ICRPはチェルノブイリ事故によっても原発を推進する立場から重大事故への対応を検討し、1990年勧告、2007年勧告を出してきました。政府はまた、原発被曝労働者に対して、これまで100ミリシーベルトであった緊急作業の被曝限度を250ミリシーベルトに引き上げました。また、福島第一原発の緊急作業従事者に対しては他の原発での通常作業に対する年50ミリシーベルトの限度を取り払いました。住民の20ミリシーベルト基準の撤回を求めます。原発労働者の250ミリシーベルト基準の撤回、取り払われた年限度50ミリシーベルトを元に戻すことを求めます。
②住民と労働者の被曝は今も続いています。対策が講じられなければ住民はこれからも被曝し続け、被曝量は何倍にもなります。基準の撤回と合わせて、生活環境のきめ細かな放射能汚染調査・除染・被曝の低減を要求します。50ミリシーベルト限度を超えた労働者に対する放射線業務以外への就労保証を含む生活保障を求めます。
③被曝による住民の健康影響が懸念されます。被爆者援護法を参考に、国の責任で住民と労働者の健康補償を行うことを求めます。国の責任で、福島県の全住民に健康手帳を発行し、被曝調査、長期的な健康管理と治療を含めた健康補償を行うことを求めます。国の責任で、緊急作業従事者に健康管理手帳を発行し離職後を含めた長期的な健康管理・健康補償を行うこと、終息作業に従事した自治体職員等、さらに放射線管理区域の作業環境に置かれている焼却場、下水処理場、がれき処理の作業者にも同様の対応をとることを求めます。
私たちはフクシマ事故に際して改めて、すべてのヒバクシャの運動を支援すること、連帯することの重要性を再確認しました。原爆ヒバクシャ、被爆2世、3世、核実験被害者、チェルノブイリ事故被害者、フクシマ事故被害者、ウラン採掘から廃棄物処理まであらゆる世界の核被害者と連帯して、原子力発電によってヒバクシャが生み出されることのない脱原発、非核の世界を実現しましょう。全てのヒバク被害者に健康手帳を実現しましょう。
2011年8月5日 ヒバクを許さない集い-Part12 参加者一同