核も戦争もない平和な21世紀に! 被爆61周年原水爆禁止世界大会 ひろば
ヒバクを許さない集い Part7(2006年8月5日)
チェルノブイリ・ヒバク20年
              チェルノブイリ事故被害者、原爆被害者、JCO事故被害者、原発被曝労働者を結んで
新たなヒバクシャを作り出さない運動をさらに強めよう
すべてのヒバクシャに補償を! ヒバクシャ手帳をあらゆるヒバクシャに!

概要
 7回目を迎える「ヒバクを許さない集い」が開催される前日の8月4日、原爆症不認定取り消し裁判の広島地裁判決で、今まで認められてこなかった遠距離被爆者、入市被爆者の訴えが認められ、被爆者41名全員が原爆症と認められた。この集いでもその重要な意義について討論・確認し、政府が控訴することに抗議する「要請文」を採択した。

1.講演「20年を経たチェルノブイリ・ヒバクシャの現状:原発推進派による被害の過小評価を暴く」
京都大学原子炉実験所の今中哲二さんは、当時の事故の具体的内容、周辺住民の避難状況、事故の3年後から明らかになってきた放射能汚染の実態、甲状腺がんの増加などの健康被害の実態が示しながら、国際原子力機関(IAEA)などによる事故の評価があまりに過小であることを結論付けられた。
 チェルノブイリ原発事故は原発が爆発・炎上し、中にたまっていた大量の放射能がそのまま大気中にばらまかれ、北半球全域を汚染した。「原発がどかん!といったら大変な事になる」と思ってもらえれば、私の今日の役割は成功である。IAEAは「チェルノブイリ事故後、汚染はあるが、結果として大したことはなかった」と宣伝しているが、そんな馬鹿なことはない。だからこそ私達は調べていかなければならない。IAEAを始めとする国連8機関にウクライナ、ベラルーシ、ロシアの代表が加わった「チェルノブイリ・フォーラム」はこの20年間の事故影響の研究のまとめとして「放射線被曝に伴う死者の数は将来ガンで亡くなる人を含めて4000人である」と結論づけた。この数字は過小評価であり、事故の被曝による全世界の死者数は2万~6万人、間接的な死者数を含めて10万~20万人の死者数に及ぶであろう。
 次いで、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援に取り組む若者から、原発から200~300km離れたベラルーシのモギリョフ州、クラスノポーリ工の子供たちの健康悪化の実態など、が報告された。

2.「原爆被爆二世の援護を求める署名」を全国で取り組もう。:全国被爆二世団体連絡協議会会長の山崎幸治さんの報告
 山崎さんは、署名活動の呼びかけと二世問題の解決に向けて、どのような活動を行なっているのかを報告された。二世は①健康に対する不安を持ち続けている。②遺伝的影響が不明で2,3世に対する偏見、差別が現存する。その中で現在、国の施策として不安の解消を目的として健診が行われている。この改善を求めている。③援護法制定運動:これは今まで労組中心の運動であったが今後は地域の運動として連携していくことが課題である。④親の被爆体験を継承し、ヒバクの実相を失わさせない運動:これは難しい課題であるが行っていく。
 報告を受けて、会場からの発言が相次いで出された。
長崎から:二世の会の組織は全国的にどのくらい広げられているのか?現在長崎で高校生が1万人署名運動などに取り組んでいるが、(この署名は戦争も核兵器もない平和な世界の実現を戒めるもので、すべて高校生の自主性と創意によって進められている)これらの運動を共通化して出来ないか?
広島から:親の被爆体験の話を聞くことと合わせて二世としての取り組みとして、丸木さんの原爆の図の展示会を行った。このような企画を含めて署名運動を拡げていきたい。
質問:施策の充実とは?①健診にガン検診を追加 ②健診結果に応じた医療補償 ③被爆二世の実態調査など。--健康手帳の発行をめざす。

3.JCO臨界事故の被害の切捨てを許すな。「健康裁判」の支援を訴える。健康診断の継続・充実・法制化を要求する:反原子力茨城共同行動の根本がんさんからの報告
 臨界事故後7年を迎える今年9月6日には第18回の公判が水戸地裁で行われる。事故の責任を問うこの裁判は多くの支援・協力を必要とする。
 同時に今年、茨城県から健診の打ち切り問題が出てきた。それは希望者だけに健診を行ったらよいのでは?という意図でアンケート用紙が健診受診者(過去、健診を受けている人)に郵送された。ところが90%の人が継続を望んでいるという結果が示された。さらに事故直後、健診を受けた人の数は10km圏内で7万人に及んでいることが明らかにされた(実際公式にヒバクした人の数は644人とされ、ここでも如何に事故を小さく見せかけようとしているか明らかである。今後の課題としてこの600余名しか被害者として認定していない実態を打開し裁判、健診の継続を通じて粘り強く闘って行きたい。
質問と討論:被爆二世の健診、JCO事故被災者の健診の同一性に着目し、今後の健診内容の充実をどの様に図っていくのかなど課題を明らかにする討論がなされた。

4.長尾さんに続け。すべての原発被曝労働者に「健康管理手帳」の交付を要求する:双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さんからの報告
 今年7月19日には白血病の労災申請しているという事実の情報提供を受け、早速、情報開示を求める闘いを開始した。今年2月15日に受理したが情報開示は出来ないと言うことであった。過去労災申請されたのは15件であり、そのうち7件が福島であり、その4件が福島第一原発の被曝労働者である。これは氷山の一角である。これらの影には沢山の悲劇・悲しみがある。思いを新たにして被曝労働者の補償を求めていかなければならない。福島原発が稼動して30余年、コバルト、プルトニウムなどが検出されている。福島原発6基分だけで全国の被曝労働者の総被曝線量の39%を占めている。定検短縮で利益が最優先され、被曝労働がさらにひどくなり、安全・安心が大きく脅かされている。働く人達の悲鳴にも近い声が聞こえてくる。原子力産業はこの被曝労働者の犠牲の上に成り立っており、まさしく犯罪である。私達の要求としては被曝労働者に労働安全衛生法を適用し、健康管理手帳を発行し長年にわたって健康を管理し、健康補償させることである。今年は関係省庁に闘いを挑んでいく決意である。

 総合討論では、原発いらん!山口ネットワークの方から祝島の原発を立てさせない粘り強い闘いが報告された。また、ヒバク反対キャンペーンの方から「原発被曝労働者への健康管理手帳の発行、東海村JCO臨界事故住民健康診断の長期継続」等を求める政府への申し入れ(案)が提案され、秋から共に闘っていこうとの呼びかけが発せられた。
 最後に集会アピールを採択して集いを終えた。

プログラム
Ⅰ 講演・報告
  1.20年を経たチェルノブイリ・ヒバクシャの現状:原発推進派による被害の過小評価を暴く
      今中哲二  京都大学原子炉実験所
  2.原爆被爆二世の援護を求める署名 を全国で取り組もう。
      山崎幸治  全国被爆二世団体連絡協議会会長
  3.JCO臨界事故の被害の切捨てを許すな。健康裁判の支援を訴える。健康診断の継続・充実・法制化を要求する
      根本がん  反原子力茨城共同行動
  4.長尾さんに続け。すべての原発被曝労働者に「健康管理手帳」の交付を要求する
      石丸小四郎  双葉地方原発反対同盟
Ⅱ 総合討論とアピール採択

抗議ならびに要請文
内閣総理大臣 小泉純一郎様
厚生労働大臣  川崎二郎様
 原爆は人類史上類を見ない残虐な原爆死をもたらしました。生き残った被爆者は生涯にわたってガンをはじめとする様々な放射線後障害で苦しめられてきた。この原爆症不認定取り消し訴訟・大阪地裁判決では遠距離被爆者、入市被爆者の訴えを原爆症と認めた。この判決は原爆被害者の救済を前進させるものである。私たちは国が控訴したことに満身の怒りを込めて抗議し、取り下げることを要求する。さらに8月4日広島地裁判決では、原告41名全員の請求を認める判決が下された。この判決を国は厳粛に受け止め、控訴しないことを要請する。
 私たちは国の戦争責任をあくまでも追及し、被爆者認定制度は国家補償制度として行われることを要求する。この要求は新たなヒバクシャを作り出さないためにここに集まった私たち自身の要求でもある。日本政府は現在の「被爆者援護法」を国家補償に基づく被爆者援護法へと改正すること、その被爆二・三世、在外被爆者への完全適用を要求する。
     2006年8月5日
     ヒバク61周年原水爆禁止世界大会ひろば「ヒバクを許さない集い Part7」参加者一同

集会アピール
 本日私たちは、チェルノブイリ事故被害者、原爆被爆者、JCO臨界事故被害者、原発被曝労働者を結んで、「すべてのヒバクシャに補償を!、ヒバクシャ手帳をあらゆるヒバクシャへ!」をかかげ、新たなヒバクシャを作り出さない運動を更に強めようとの思いでこの被爆地ヒロシマに結集しました。
 今年は史上最悪のチェルノブイリ原発から20年目を迎えています。事故で放出された放射能はウクライナ、ベラルーシ、ロシアの被災3国、さらにはヨーロッパのほぼ全域を高濃度に汚染するなど、地球規模の放射能汚染をもたらしました。それは「核戦争を想起させる」ものでした。
 セシウム137などの半減期の長い放射性物質による汚染は現在も事故直後の汚染とほとんど変わらない規模であり、これにより住民の被曝は増加し続け、食物や環境から放射性物質が体内に入り放射線被曝をもたらしています。事故により数百キロ以上はなれた地域にも原発周辺と同じレベルの高汚染地域が生じました。多数の住民が汚染地からの移住で、仕事や生活環境の変化の下で、周囲からの差別なども受けながら、しかも移住先でも被曝が避けられないという生活を余儀なくされています。被災3国では甲状腺がんの被害が深刻で、甲状腺がんの発生率が年とともに増加しています。事故処理に動員された兵士など80万人の作業者は被災3国のみならず旧ソ連邦の全域から動員され、まともな被曝管理も防護もない状態で大量に被曝させられ、急性死亡だけでなく、ガンの発生率も高まっています。被災3国以外のヨーロッパでもガンや小児白血病の増加などが報告されています。チェルノブイリヒバクシャの間には、急性障害、ガン・白血病だけでなく、新生児の流死産、事故処理作業者の循環器疾患の増大をはじめ、さまざまな健康状態の悪化が進行しています。
 昨年9月、国際原子力機関(IAEA)主催のチェルノブイリフォーラムが「放射線被曝にともなう死者は、これまでに確認された死者と予測されるガン死を合わせて最終的に4000人になる」との報告を発表しました。この報告は、被災住民や除染作業者の一部の人々についての「確認された」死亡と被害推定にすぎません。事故処理作業者の死をほとんど無視し、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの「汚染地域」住民680万人を評価対象から除外し、チェルノブイリ10周年でWHOが推定していた被災3国の汚染地域での5000人のガン死さえも含めていません。ガン・白血病以外の疾病による死亡についてはまったく評価せず、実際に被災者の間で見られる様々な健康被害については被曝の影響を無視して「放射線によるものではなくストレス、貧困、アルコール依存などの社会的な問題である」と決めつけました。これに対して現地や現地に連帯する世界の諸グループから批判が集中しています。チェルノブイリ20周年にはIAEAとは異なる様々な評価が発表されています。今年4月、WHOの下部機関の「国際ガン研究機関」の研究者らは被災3国だけでなくヨーロッパ全域の被害を推定し、「2065年までに14000人がガンで、1700人が白血病で死亡するだろう」と発表しました。今年4月、チェルノブイリフォーラムはやむなく昨年の報告から被害者数を削除した改訂版を出しました。
 ヒロシマ・ナガサキで時と共に増大する被爆の被害はチェルノブイリ事故による被害もまた今後長期に及ぶことを示しています。最近、原子力施設労働者の被害調査により、被曝線量当たりのガン死の危険性がこれまで考えられていたよりも高いこと、低線量領域においても実際にガン死の被害が現れていることが明らかになってきました。このことは、チェルノブイリの放射能が襲った世界の広範囲の人々にこれまでの予測を超える深刻な被害が避けられないことを示しています。また、ヒロシマ・ナガサキの被爆の被害はチェルノブイリ事故の被害が、ガン・白血病にとどまらず様々な健康被害として現れることを示しています。さらに、事故による被曝量は過小に評価されており、これらの点を総合すれば、チェルノブイリ事故による被害はこれまでの諸報告をはるかに超えた深刻なものです。チェルノブイリ事故被害の過小評価を厳しく批判していきましょう。
 チェルノブイリ事故の被害者の救援など現地との連帯を強め、被災者の補償を目指しましょう。被災者が亡くなってからでは償うことはできません。ヒロシマ・ナガサキの被爆者が味わった苦しみを繰り返させてはなりません。
 チェルノブイリ事故は核の軍事利用のみならず平和利用もまた多くのヒバクシャを生み出すことを示しました。しかし現在、チェルノブイリ事故の過小評価とあわせて原発推進への巻き返しの動きが国内外で起きています。日本の政府は「原子力立国」をスローガンにかかげ、原子炉輸出をはじめ原発推進を強行しようとしています。人口密度の高い日本でチェルノブイリ級の重大事故が起きれば、その結果は想像を絶する深刻なものとなります。チェルノブイリを繰り返してはなりません。これ以上のヒバクシャを生み出してはなりません。ヒロシマ・ナガサキ・チェルノブイリを結んで、被害者の救援など現地との連帯強化とあわせて脱原発運動をより一層強めましょう。

2006年8月5日
ヒバク61周年原水爆禁止世界大会ひろば「ヒバクを許さない集い(Part7)」参加者一同

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