核も戦争もない平和な21世紀に 被爆58周年原水爆禁止世界大会 ひろば
広島・長崎・東海村を結んで
ヒバクを許さない集い-Part4(2003年8月5日)
概要
6月にイラク現地を訪れた森滝春子さんから被害の実体解明に向けた調査活動の報告と、緊急の救済・援助の訴えがありました。イラクから来日中のアル・アリ医師とジョナン医師からは、子供たちに白血病や今まで医学教科書で見たこともない先天障害などが発生しているとの実態報告がありました。大泉昭一さんは、4年を経て一見静かになった東海村でこの1年裁判を闘ってきた経過を話され、全国からの裁判支援を力強く訴えられました。反原子力茨城共同行動の根本がんさんは、長年現地で運動をひっぱてこられた経験を踏まえ、運動の側が克服すべき点、また、健康記録運動など、住民の健康不安に基礎を置いた現地での取り組みを話されました。「集い」事務局からは、25万5千名となった「」など、この1年の取り組みと今後の課題についての報告がありました。木原省治さんはこれ以上ヒバクシャを生み出さないとの思いで取り組んできた世界のヒバクシャとの交流の経験をもとに、原爆被害者がこれまでに勝ち取った成果を世界のヒバクシャの運動が連帯して未だ補償されない世界のヒバクシャに広げようと話されました。石丸小四郎さんは原発被曝労働者が何段階もの搾取を重ねる多重構造の労働環境に置かれていること、健康診断の偽造などの実情、全国で最も深刻な福島原発被曝労働者の状況、これまでの労災補償の取り組みと申請中の長尾光明さんの多発性骨髄腫労災認定の課題を話されました。原発で息子を失った母の叫びがテープから会場に流れました。「集い」事務局から「長尾光明さんの労災補償請求(多発性骨髄腫)の早期認定を求める要望書」が提起され、全国に広めることが確認されました。以上の報告と議論をアピールとして確認しました。
プログラム
報告・問題提起
・劣化ウラン弾被害の実態調査報告 森滝 春子 核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
イラク戦争で、先制攻撃の名の下に、無差別大量殺戮の兵器が大量に使用され、多数の住民が犠牲になりました。不発弾は地雷と化し被害を増大させています。湾岸戦争やコソボ紛争等で住民や帰還兵士に被害を出している「劣化ウラン弾」がイラク戦争で更に大量に使用されました。アメリカの一方的な軍事力の下で、核兵器が先制攻撃に使用される危険性が高まっており、イラク戦争では核兵器の使用が検討され、小型核兵器の開発研究や核実験再会の準備などが進められています。これらを阻止することとあわせて、無差別大量殺戮兵器の開発・製造・使用を禁止することが緊急に必要となっています。森滝春子さんの報告を受け、どのように運動を作っていくのか、議論しましょう。
・臨界事故・健康補償裁判の支援を訴える 大泉昭一 JCO臨界事故住民健康被害裁判原告
臨界事故の現場から130メートルの近距離でヒバクした大泉夫妻は、その後体調を崩し、汗の結晶である自動車部品工場も閉鎖に追い込まれました。夫妻は周辺住民と協力して「臨界事故被害者の会」を結成し、事故を起こしたJCOに対して誠実な回答を求めて事故後3年間粘り強く交渉してきました。住民の健康被害に対する補償を拒否し続けたJCOを相手に2002年9月、健康被害その他に対する補償を要求する裁判を起こしました。この裁判は、「臨界事故による健康への影響は検出されない」とする国の見解に真っ向から対決するものです。また、様々な理由で裁判に加われなかった多くの住民の声を代表する裁判でもあるのです。大泉昭一さんの報告を受け、裁判支援、地元での運動拡大、全国署名の拡大などこの1年間の総括と今後の取り組みを議論しましょう。
・未だ補償されない世界のヒバクシャ 木原 省治 原発はごめんだヒロシマ市民の会
世界にはヒバクさせられ、未だ補償されずに放置されている数多くの人々がいます。核実験場周辺および風下住民、実験に参加した兵士。核兵器生産施設の労働者、周辺住民。原発事故による広範囲の被曝住民。ウラン採掘から廃棄物処分にいたる原発・核サイクル施設の労働者、周辺住民。...絶えずこの人々と連帯することが、2度と再びヒバクシャを生み出さない運動の世界的な規模の広がりに欠かせません。世界の各地でヒバクシャと交流を重ねてきた木原省治さんの報告を受け議論しましょう。
・福島原発被曝労働の実態と労災認定 石丸 小四郎 福島県双葉地方原発反対同盟
福島県双葉地方原発反対同盟は30年前から先進的に原発ヒバク労働者の実態調査、「駆け込み寺」による相談活動などを通して、被曝労働の存在、ピンハネや差別構造などの原発労働者の訴えを明らかにするとともに、白血病に対する労災認定を勝ち取ってきました。現地で長年中心となって闘ってきた石丸小四郎さんから、原発労働体制の問題点、原発労働者の遺族の声、労働現場から離れて17年後に発症した多発性骨髄腫で苦しんでいる元原発労働者が現在申請中の労災の問題等について報告を受け課題を共有しましょう。
アピール
本日、イラクから現地医師らを迎え、被爆地広島に集った私達は、二度と再びヒバクシャを生み出さないとの決意を新たに討論を行った。
アメリカの先制攻撃で始まったイラク戦争で、再び大量の劣化ウラン弾が投下された。劣化ウランは市街地にも大量に散在し、市民にはその危険性も知らされないまま放置されている。今日、森滝さん、現地医師らの報告を受け、再びヒバクシャを生み出さない為に劣化ウラン弾を禁止することが新たな課題であることが確認された。
アメリカブッシュ大統領は核も先制攻撃の選択肢の1つとして位置づけたブッシュドクトリンを昨年9月発表し、先制攻撃能力を高めるために新たに小型核兵器の研究・開発を進めている。これを許さない取り組みを強めよう。世界の1600万人以上にものぼるヒバクシャは未だその被害に対して殆どが補償されていない。木原さんは広島・長崎の被爆者、二世、三世の被爆者、核実験被爆者、東海村ヒバクシャ、原発ヒバクシャ、チェルノブイリ・ヒバクシャ、等の補償を求める運動を連帯して取り組み、「ヒバクシャの補償を勝ち取ることが、核を無くする大きな力となる」と力説された。
今年で4周年を迎えようとしているJCO臨界事故の被害者の大泉昭一さんは、昨年9月、JCOとその親会社である住友金属鉱山に対して損害賠償を求める裁判を提訴された。臨界事故ヒバク住民の意思を代表して大泉さんは健康補償、損害賠償を求める決意を語られ、支援を強く訴えられた。JCO被害者の健康補償を要求する署名は25万5000筆を現在越えている。住民の健康補償を求める闘いが粘り強く行われ、周辺住民の健康診断の拡大・充実を求める運動、被害者住民自らが取り組んでいる健康記録運動が報告された。
長尾光明さんは1998年に多発性骨髄腫を発症し、昨年11月福島県の富岡労働基準監督署に「多発性骨髄腫の発症は原発内の被曝労働に起因する」として労災認定を申請された。長尾さんの労災認定を勝ち取るための運動の取り組み、強化が報告された。福島の原発被曝労働者の問題に長年取り組んでこられた石丸小四朗さんより、原発労働の仕組みとその問題点、原発汚染とヒバクの実態、原発遺族労働者の声等が紹介され、全国の原発労働者の健康補償を求める運動の提案等が行われた。これらの討論を踏まえ、以下を決議する。
1.劣化ウラン弾の開発・製造・使用を国際的に禁止せよ
・国連など「第三者機関」による劣化ウラン弾の環境汚染、被害地域の健康疫学調査を行わせ、被害の実態を国際的に明らかにさせよう。
・劣化ウラン弾使用地域、使用量などを明らかにさせ、即刻、汚染除去を行わせよう。
・劣化ウラン弾被害者住民・兵士に対し補償・救済を行わせよう。
・国際的、国内的に連帯した運動で、劣化ウラン弾を禁止させよう。
2.日本政府にイラクの劣化ウラン弾をはじめとする無差別大量破壊兵器による被害の実態究明、その補償・救済を行うよう申し入れよう
・イラクへの自衛隊の派遣をやめよ
・自衛隊のクラスター爆弾を廃棄せよ
3.JCO臨界事故健康補償裁判を支援し、勝利を勝ち取ろう
・「国はJCO事故の責任を認め、住民・労働者の健康被害を補償せよ」の全国署名をさらに拡大させよう
・住民の健康診断をさらに充実させ、健康補償を行わせよう
4.長尾光明さんの多発性骨髄腫を早急に労災認定させよう
・全国の原発被曝労働者の健康補償を行わせよう
具体的には
・放射線被曝労働を労働安全衛生法の有害業務に加えよ
・健康管理手帳を交付し、国の責任で健康管理を行え
・放射線管理手帳を現行の5年保存から永久保存にせよ
・放射線障害に対し適切な診断・治療の行える医療機関を充実させること
・原発汚染とヒバク労働の実態を明らかにせよ
5.ブッシュの核軍拡に反対し、戦争反対、NO DU(劣化ウラン弾を禁止せよ)の闘いを押し広げ、核軍縮の闘いをさらに強化しよう
・米・英軍はイラク人民、兵士の虐殺を止め、撤退せよ。
・アメリカをはじめとする核保有国はNPT条約(核拡散防止条約)の「核軍縮の約束」を履行し、核軍縮を行え
・アメリカは包括的核実験禁止条約(CTBT)を即刻批准し、早期発効させよ、臨界前核実験を即刻停止せよ、核実験準備をやめよ
・アメリカは小型核兵器の研究、開発、配備、使用を止めよ
・劣化ウラン弾、バンカーバスター、クラスター爆弾、気化爆弾等、無差別大量破壊兵器の使用を禁止せよ
・日本の核武装を許さない
6.世界のヒバクシャと連帯してヒバクシャへの補償とヒバクを許さない取り組みを強めよう
2003年8月5日
被爆58周年原水禁世界大会 ひろば
広島・長崎・東海村を結んで、ヒバクを許さない集い(Part4) 参加者一同