厚労省検討会で論議終了(2015/4/17)・・・今秋までに法令改定めざす
4月17日、厚労省の検討会で、提示された「報告書第2次案」に沿って、検討が進められました。
意見が出尽くしたとして、必要な修正を施すこと、完成判断は座長預かりとすることが確認されました。
その他の会議資料は、第5回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会からダウンロードできます。
土屋安全衛生部長の挨拶
「検討会では当初なかった緊急時作業の問題もとりあげた。今後関係省庁との連携を図りながら、関係法令や指針などの改正作業を行いたいと思っている。その作業の中ではパブリックコメントであるとかあるいは審議会でご議論いただく、各方面からご意見伺いながら進めて行きたいと思っている。その上で今年の秋ごろまでには関係法令の制定をできるように作業を進めて行きたい。」
主な検討結果・・・緊急時作業に関する部分の抜粋
1.緊急被ばく限度
(1)正当化
・国際基準で規定されている 100 ミリシーベルトを超える緊急被ばく限度が適用される緊急作業の内容を踏まえると、緊急作業における一般作業者に最も的確に当てはまるものは、「破滅的な状況」の回避である。
・このような被ばく限度の適用は、原子力施設が破滅的な状況に至ることを回避することを主たる目的とする作業のために必要な知識・経験を有する者のみを対象とし、原則として原子力事業者の労働者に限るべきである。
・複数の原子炉の炉心が溶融する過酷事故であった東電福島第一原発事故においても、緊急被ばく限度250ミリシーベルトで緊急対応が可能であった経験を踏まえると、今後、仮に、緊急作業を実施する際に、これを超える線量を受けて作業をする必要性は現時点では見いだしがたい。
・ヒトに関する急性被ばくによる健康影響に関する文献からは、リンパ球数減少のしきい値は 250mGy 程度から 500~600mGy 程度の間にあると考えられるが、この間のデータ数が少ないため、しきい値を明確に決めることは難しい。このため、緊急作業中のリンパ球数の減少による免疫機能の低下を確実に予防するという観点から、東電福島第一原発事故時に、250mSv を緊急被ばく限度として採用したことは、保守的ではあるが妥当といえる。
(2)最適化
・被ばく線量の最適化の観点から、作業の進捗状況、作業員の被ばく線量の推移等に応じて、速やかな適用作業の限定、ある時点以降の入場者に対する線量限度の段階的な引下げ等を実施する。
・さらに、原子力緊急事態宣言の解除前であっても、原子炉の安定性が確保された時点(福島第一原発事故でのステップ2の完了時に相当する時点を想定)で速やかに廃止する。
2.原子力災害の危機管理
・原子力発電所での「破滅的な状況」発生の判断基準として、原子力災害対策特別措置法において、原子力緊急事態又はそれに至るおそれの高い事態が発生した場合が定められており、原子力災害に対する危機管理の観点から、直ちに必要な対応を実施する必要がある。
3.緊急作業期間中の被ばく線量管理
(1)特例緊急被ばく限度
・厚生労働大臣は、事故の規模、周囲への影響その他の事情を勘案し、緊急作業において 100 ミリシーベルトの線量限度によることが困難であると認めるときは、250 ミリシーベルトを超えない範囲内で、線量限度(以下「特例緊急被ばく限度」という。)を別に定めることができる。
・原子力災害対策特別措置法第 15 条第1項に定める原子力緊急事態が発生した場合又はそれに至るおそれの高い事態が発生した場合は、厚生労働大臣は、直ちに 250 ミリシーベルトを特例緊急被ばく限度として定める。
(2)特例緊急作業従事者
・特例緊急被ばく限度が適用される作業に従事する労働者は、原子力事業者により、原子力防災業務計画で定める原子力防災組織の要員として指定されている者に限る。
・原子力防災要員は、原則として原子力事業者の労働者であるが、法令に基づき、原子力事業者が原子力事業所における原子力災害の発生又は拡大を防止するために必要な原子力防災組織の業務の一部を委託する場合は、当該委託事業者の労働者も、原子力防災要員に含まれる。委託業務の決定に当たっては、東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ、必要十分な範囲とする必要がある。
・原子力防災要員の選定に当たっては、事業者は、特例緊急作業に係る労働条件を明示した上で双方合意の上で労働契約を締結するとともに、人事異動に当たっては、労働者の意向に可能な限り配慮すべきである。
4.事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理
・事業者は、緊急被ばく線量と通常被ばく線量を合算した線量が通常被ばく限度である5年 100 ミリシーベルトを超える者について、原子力施設の安全な運転等を担保するために必要不可欠な基幹要員に限り、追加的に、年間5ミリシーベルトを超えない範囲で通常の放射線業務に従事させることができる。
・上記の取扱いにより、通常被ばく線量のみの累計が通常被ばく限度(1年 50 ミリシーベルトかつ5年 100 ミリシーベルト)を超えることは認められない。
5.事故発生時の次の線量管理期間以降の放射線管理
・生涯線量を1000ミリシーベルトとし、それを超えないように線量管理期間5年あたりの線量限度を設定して管理する。
・事業者は、生涯線量から累積線量(緊急線量と通常線量の合算)を減じた残余の線量を全就労期間(18 歳から 50 年間)から年齢を減じた残余の期間で除することで、5年当たりの線量限度を労働者ごとに個別に設定する。
・線量管理期間5年あたりの線量限度は、5年ごとに、上記により再計算する。
・事業者は5年当たりの線量限度を当該労働者に通知するとともに、当該労働者が放射線業務に従事する際に、その限度を超えないように管理するとともに、被ばく線量をできるだけ少なくするように努める。
6.特例緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方(詳細は省略)