ICRP(国際放射線防護委員会)2007年勧告の概要

 ICRPの「放射線防護」の本質は、コスト-ベネフィット論を基礎とし、原子力発電などの諸活動を正当化し、被ばくを強要する側が、それを強制される側に被ばくがやむを得ないもので、受忍すべきものと思わせるための社会的な基準です。
 ICRP2007年勧告は、チェルノブイリ原発重大事故のあともなお原発を推進するために、国際的原発推進機関のICRPが作成したものです。
 ICRP2007年勧告では、「通常被ばく(計画ひばく)」に加えて、原発重大事故発生時の「緊急時被ばく」、その後の「現存被ばく」が導入されました。
ICRP(国際放射線防護委員会)2007年勧告の放射線防護の3つの基本原則
(正当化、最適化、線量限度の適用)

・正当化の原則
 放射線被ばくの状況を変化させるようなあらゆる決定は、害よりも便益が大となるべきである。
 しかし、「放射線被ばくの状況を変化させる決定」以前に、そもそも原発重大事故による被ばくは正当化されません。
・防護の最適化の原則
 被ばくの生じる可能性、被ばくする人の数及び彼らの個人線量の大きさは、すべての経済的及び社会的要因を考慮に入れながら、合理的に達成できる限り低く保つべきである。
 経済的及び社会的な要因によって住民や労働者が被ばくを強要され、人権がじゅうりんされる事態が起こることは、福島原発事故が示しています。
・線量限度の適用の原則
 患者の医療被ばく以外の、計画被ばく状況における規制された線源のいかなる個人の総線量は、委員会が特定する適切な限度を超えるべきではない。
 原発重大事故による「緊急時被ばく」、「現存被ばく」については、線量限度ではなく「参考レベル」が設定されます。参考レベルは線量限度のように守ることは義務付けられません。

電離放射線の健康影響
・低線量における直線反応を仮定すると、過剰のがんと遺伝的影響による損害は、1990 年勧告に引き続き 1 シーベルト当たり約 5%としている。
・固形がんに対する線量・線量率効果係数(DDREF)を、1990 年勧告に引き続き、 2 としている。
・がん以外の疾患におけるデータについては、リスクに関する情報を提供するには不十分であると判断している。

被ばく状況
・計画被ばく状況
線源の意図的な導入、その運用を伴う状況であり、通常の被ばくと潜在被ばくの両方を生じされることがある
・緊急時被ばく状況
計画された状況において、悪意のある行動及び予測しない状況から発生する好ましくない結果を回避又は減少するための緊急の対策を必要とする状況
・現存被ばく状況
被ばく管理に関する決定が必要となる時に、既に存在する被ばく状況であり、事故後に長期間受ける被ばくも含む

参考レベル
・参考レベルは、緊急時被ばく状況及び現存の制御可能な被ばく状況に適用され、そのレベルより上では、最適化すべきと判断されるような線量及びリスクのレベルを示す
・その値は、被ばく状況をとりまく事情に依存

緊急時被ばく状況が適応される作業と線量基準
  作業                   参考レベル
・救命活動(情報を知らされた志願者)  救命者のリスクより利益があれば、制限なし
・緊急救助活動             500mSv 又は 1000mSv
・救助活動               100mSv 以下

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