避難指示地域住民の保険料・医療費一部負担の無料化措置継続の課題・動き

 2011年5月の復興基本方針に、「・・・今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。」と明記されています。
 しかし政府は「国の責任による被害者補償の法制化」をせず、「復興・創生」期間終了後は「無料化見直し」を進めています。
 4月8日、政府は医療費等無料化措置の見直し内容を決定し、各都道府県、関係団体等に通知しました。
 無料化措置見直しを阻止し、無料化措置を継続させ、「国の責任による被害者補償の法制化」を求める広範な取り組みが必要です。

【2022年4月8日】政府は医療費等無料化措置の見直し内容を決定し、各都道府県、関係団体等に通知

1.西銘復興大臣記者会見(4月8日9:30~9:53)  記者発表資料
発言要旨<抜粋>
 復興関連で4点あります。
<1点目省略>
 2点目、本日、原子力災害被災地域における医療・介護保険料等減免措置の見直しについて決定し、厚生労働省と連名で正式に通知を発出しましたので、御報告いたします。
 この減免措置については、令和3年3月の「復興の基本方針」においても、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行っていくと記載されており、これを踏まえて関係自治体のご意見を丁寧に伺ってきました。
 こうしたご意見を十分に踏まえ、資料のとおり、
 1、避難指示解除から10年程度で特例措置を終了する。
 2、避難指示解除の時期にきめ細かく配慮し、対象地域を4グループに分けて施行時期をずらす。
 3、急激な負担増とならないよう、保険料2分の1免除の段階を含め、複数年かけて段階的に見直す
 等の見直し内容を決定いたしました。詳細については、事務方にお問合せいただきますようお願いします。
<3点目、4点目省略>
記者会見資料には「関係市町村の主な意見」が記載されている。しかし、見直しが前提であり、最も大切な「住民からの意見聴取・質疑」は行われていない。3月15日に浪江町議会が「継続を求める意見書」を満場一致で採択したことも無視されている。

2.令和4年4月8日厚生労働省老健局長通知
 通知された文書は4月8日付けの「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示区域等における被保険者等の一部負担金、利用者負担及び保険料(税)の減免措置対する令和5年度以降の財政支援の取扱いについて」です。
 発出は復興庁と厚生労働省の担当部局で、通知先は各都道府県知事、関係市町村、関係団体です。
 通知された見直し内容・・・通知文書をもとに整理しました。
見直し手順
 ・初年度  保険料半額免除に移行
 ・次年度  保険料免除なしに移行
 ・次々年度 医療費一部負担の免除無しに移行
2022年度は周知期間
①2023年4月実施開始・・・平成26年までに避難指示区域等の指定が解除された旧避難指示区域等
 ・広野町、楢葉町の一部、南相馬市の一部(旧緊急時避難準備区域)
 ・川内村の一部、田村市(旧緊急時避難準備区域及び旧避難指示解除準備区域)
 ・特定避難勧奨地点
②2024年4月実施開始・・・平成27 年に避難指示区域等の指定が解除された旧避難指示区域等
 ・楢葉町の残り全域(旧避難指示解除準備区域)
③2025年4月実施開始・・・平成28 年に避難指示区域等の指定が解除された旧避難指示区域等
 ・葛尾村の一部、南相馬市の一部(旧避難指示解除準備区域及び旧居住制限区域)
 ・川内村の残り全域(旧居住制限区域)
④2026年4月実施開始・・・平成29 年に避難指示区域等の指定が解除された旧避難指示区域等
 ・飯舘村の一部、浪江町の一部、川俣町、富岡町の一部(旧避難指示解除準備区域及び旧居住制限区域)

【2022年3月15日】浪江町は令和4年3月定例会最終日に「東京電力福島第一原子力発電所事故による避難者の医療・介護費用の減免措置継続を求める意見書」を全員起立で可決
浪江町令和4年3月定例会最終日の録画
 意見書の本文(録画の提案読み上げで確認)
 東京電力福島第一原子力発電所事故による避難者の医療・介護費用の減免措置継続を求める意見書(案)
 本文
 東京電力第一原子力発電所事故から11年が経過した。当町においては、平成30年3月31日に帰還困難地域を除く一部地域で避難指示が解除されたものの、町民の帰還が順調に進んでいるとは言い難い。避難生活が長期化し居住環境が荒廃していること、生活インフラや就労環境等の回復が十分でないことなどの複合的な理由から、原発事故以前と同様の生活が成り立つ状況にはなく、今もって浪江町民の大分部は避難生活を強いられたままである。
 しかしながら政府は、原発事故避難者に対し、医療、介護費用の負担を軽減してきた支援策について、2023年度にも見直すとしている。避難中にある町民は、肉体的、精神的苦痛をこれからも抱えて避難生活を送らなければならない現実があることを十分理解した上での見直しなのかはなはだ疑問である。国は、原発事故の加害者として被害者である浪江町民に対し、恒久的に医療費・介護費の無料化を継続するための財政支援をすることが責務である。
 したがって、医療、介護費用の負担を軽減してきた支援策の縮小、廃止の検討を中止し、減免措置の継続を要求するものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 令和4年3月15日
 福島県浪江町議会
 意見書と同様の内容の請願書も採択されました。
【2022年3月1日】
西銘復興大臣合同インタビュー
【3月2日福島民友報道抜粋】―医療費などの減免措置について、早ければ2023年度からの段階的な縮小を検討しているが、地元の理解を得られると思うか。
厚生労働省と連携して具体案を検討中だ。見直し案を作成後、市町村に再度相談する。医療や介護など住民の生活に密接に関わる措置であり、激変緩和など市町村の声も十分に踏まえ地元の理解を得られるよう引き続き丁寧に対応する」
【2022年2月22日】
避難指示地域住民の保険料・医療費一部負担の無料化措置が1年延長。
 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示区域等における被保険者等の一部負担金及び保険料(税)の免除措置等に対する財政支援の延長について
【2021年11月26日】
避難指示地域住民の医療費一部負担及び保険料の無料化措置の見直しについて政府が自治体との協議に入ったと報じられた。
【朝日新聞報道抜粋】復興庁は11月に入り、関係自治体に支援策の見直し方針案を示し、協議を開始。方針案によると、見直しの対象は、避難指示が17年4月までに解除された福島県内の11市町村。1年間の周知期間の後、減免の割合を段階的に縮小、複数年かけて最後は廃止する。
【2021年6月】
福島県が要望書を国に提出し、避難指示地域住民の医療費減免策について、「被災者が安心して生活できるよう財政支援の継続に配慮してほしい」と訴えた。
 ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望【50ページ抜粋】
(6)被災者に係る国民健康保険、介護保険、障害福祉サービス等の支援制度の継続
 避難指示区域等対象地域における医療費一部負担金、介護保険に係る利用者負担、国民健康保険税・後期高齢者医療制度保険料・介護保険料及び障害福祉サービス等に係る利用者負担の全額減免に対する国の特別の財政支援については、第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針において、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行うこととされているが、引き続き、被災者が安心して生活できるよう、市町村の意向を踏まえた財政支援の継続に配慮すること。
【2021年3月9日】
 「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」が閣議決定された。
避難指示地域住民の医療費一部負担と保険料の無料化措置については、「適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行う。」と前回2019年の基本方針より踏み込んだ記載。
【2021年2月18日】
避難指示地域住民の保険料・医療費一部負担の無料化措置が1年延長。
 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示区域等における被保険者等の一部負担金及び保険料(税)の免除措置等に対する財政支援の延長について
【2019年12月20日】
政府が「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」で、避難指示地域住民の保険料・医療費一部負担の無料化措置の「適切な見直しを行う」と明記。
 2019年12月20日閣議決定の基本方針【26ページ抜粋】

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