「医療費等の減免措置継続、補償法の制定」2023年2月9日政府交渉の報告

 私たち、脱原発福島県民会議をはじめ10団体は2月9日午前と午後に分けて、「医療・介護保険等の保険料・窓口負担の減免措置見直し政策」の撤回および「トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出方針」の撤回を求め、対政府交渉をもちました。福島をはじめ、関西、関東などから25名が交渉に参加しました。
交渉の詳細は、分量が多いので、下記資料をご覧ください。
    午前の部    質問書    議事録    交渉報告
    午後の部    質問書    議事録    交渉報告
1.厚生労働省、環境省、復興庁との交渉
(1)「医療費の減免措置見直し政策」の撤回
 前回に続き、2023年度から政府が開始しようとしている「医療費等減免措置」の段階的削減の撤回を強く求めました。
福島の避難指示区域住民及び県内外の避難者たちは、「医療費無料化」は事故被害者にとって「命綱」であると切実に訴え、措置削減の政府方針に「怒りの声」をぶつけて撤回を迫りました。
 しかし、「社会保険制度の被保険者間の公平性をはかる必要がある」、「10年やってきたからもういいだろう」などと、2021年3月9日「閣議決定」に基づく「方針ありき」での答弁が続きました。
今回の交渉でも「政府方針ありきの姿勢」を突き崩すことができず、「医療費等、減免措置」の段階的削減の2023年度開始を阻むための言質を引き出すことは叶いませんでした。  それどころか、事故被害者の生活と心身の健康や介護の実態を把握せずに、住民の声を無視して、当該市町村首長のみの「了解」で事故被害者への支援策の打ち切りが強行されようとしていることがますます明らかになりました。
 このような事故被害者支援の切り捨ては、これまでの政府交渉でも繰り返し確認した「基本原則」に真っ向から反するものであることは明らかです。
基本原則」:原子力災害対策本部方針、2011年5月17日
原発事故被害者は「国策による被害者」であり「最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応」する  2023年4月から政府が進めようとしている支援切り捨てを許してはなりません。引き続き、福島原発事故被害者と連帯し、全国の皆さんとも協力して運動を拡げ強め、「医療費等の減免措置」見直し・削減方針の撤回と、措置継続・拡大を求めていきましょう。さらに、全ての原発事故被害者に国の責任で「健康手帳」を交付させ、医療・健康保障を生涯にわたって行なわせる「新たな法整備」(「被爆者援護法」に準じた法整備)を求める運動に繋いで行きましょう。
(2)「原爆被爆者援護法」に準じた、福島原発事故被害者のための「新たな法整備」
 2022年11月29日の交渉では、私たちが「国の責任で全ての福島原発事故被害者に生涯にわたる医療・健康保障を行うべき、そのために、『原爆被爆者援護法』に準じた、福島原発事故被害者のための『新たな法整備』」を求めたのに対し、「強い要望があったことを受け止め、共有し、厚労省・復興庁・環境省連携して(「長期にわたる医療保障」は厚労省が中心となって)、担当部署を決めて対応できるように、『しっかりと上の方には報告して検討する』」との回答があり、また、厚労省の担当者の欠席で回答のなかったこの課題について、「後日、文書回答する」との確認をしました。しかし、その後、政府側からの文書回答がなく、今回の交渉で改めてその検討状況を尋ね、質問への回答を求めました。
環境省:被害者への健康・医療保障の「新たな法整備」は考えていない。
(3)被害者の実態を把握し、当事者の意思を施策に反映するための「公聴会」
復興庁:公聴会は開催しない。
(4)「放射線の健康影響に関する統一的基礎資料」の大幅改訂
 放射線被ばくのがん等の健康影響について、低線量でも「閾値なし直線関係」を示す大規模で信頼性の高い疫学調査が増えている。この事実はICRPも認めている。環境省の「放射線の健康影響に関する統一的基礎資料」を大幅改訂すべきではないかと質問しました。
環境省:今後の「統一的な基礎資料」の編集に反映したい。
詳しい交渉内容は質問書と交渉報告をご覧ください。
 2023年度からの支援削減開始を目前に控え、政府の頑なな姿勢を突き崩すための交渉が主になり、項目(2)〜(4)については追及しきれませんでした。4つは全て関連した重要な課題です。次回以降の交渉では、さらに内容を議論し、引き続き政府を追及していきたいと思います。

2.原子力規制庁、経産省、外務省との交渉
原子力規制庁は、「ALPS処理水に『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、ALPS処理水は海洋放出できない」と認め、6.5万トンの所在調査・回答を確約!経産省は文書回答のみで、意見交換を拒否!外務省は、ALPS処理水放出用海底トンネルが「人工海洋構築物」ではないとする根拠を明示できず!
 年初の1月13日に開かれた「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実に向けた関係閣僚等会議」(議長は松野官房長官)が、「ALPS処理水の放出開始は今年春から夏ごろを見込む」と打ち出したことから、交渉は緊迫したものとなりました。2021年4月の海洋放出方針決定から2年経っても「関係者の理解」が得られるどころか、福島県漁連・全漁連など福島県内外で「断固反対」の声は揺るがず、太平洋諸国フォーラム等が放出中止を求める中、私たちは昨年4月19日の対政府交渉で暴き出した成果の上に、新たな主張と根拠を積み上げて追い詰め、放出撤回を求めました。恐れをなした経産省は出席を拒否し、ありきたりの文書回答のみに留まりましたが、原子力規制庁からはALPS処理水の放出を阻止できる重大な言質を引き出しました。今回の成果をさらに踏み固め、ALPS処理水の海洋放出を断固阻止しましょう。
(1)原子力規制庁との交渉
(1)ALPS処理水の海洋放出について
 経産省は『サブドレン及び地下水ドレン』の水が混在していれば、海洋放出できないと認めました。 これまでの経緯
 ALPS処理水は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」との経産大臣の文書確約と「多核種除去設備ALPSで処理した水は発電所敷地内タンクに貯蔵いたします」との東京電力社長の文書確約を受けて、福島県漁連は2015年8月末に苦渋の判断で、「サブドレン及び地下水ドレンの運用方針」に同意しました。この運用方針の内容は、原子力規制委員会の認可を受けた東京電力の実施計画にも記載されています。
今回の交渉
 私たちは、ALPS処理水の海洋放出は、文書確約に反し、運用方針にも反すると主張したところ、原子力規制庁は初めて、「ALPS処理水にサブドレン及び地下水ドレンの水が混在していたら、ALPS処理水は放出できない」と認めました。そのうえで、規制庁としては「混在」はないものと認識している。1500Bq/Lを超える「サブドレン及び地下水ドレン」の水は6.5万トン程度になると指摘されているが、それが「タンク等に移送して原因精査」された後、実際に、どこに、どのような状態で存在しているのか、ちゃんと調べて、福島みずほ議員事務所を経由して文書で回答すると付け加えました。
「サブドレン及び地下水ドレンの水が混在したALPS処理水は海洋放出できない」との原子力規制庁担当者の断言は極めて重大であり、その確実な履行を原子力規制委員会に強く求め、ALPS処理水の海洋放出を中止に追い込みましょう。
(2)線量告示の1ミリシーベルト/年について
敷地境界線量が線量告示の1ミリシーベルト/年を大きく超えている状態で、追加ヒバクの海洋放出は法令違反との指摘に、「原子炉等規制法関係の法令では事故由来の放射性物質を含んだ基準にはなっていない」と根拠のない回答をしました。
 福島第一原発は、事故直後、公衆の被爆線量限度1mSv/年を担保するための「線量告示」を満たせない違法状態でした。そのため、原子力規制委員会は、線量引き下げのため、「措置を講ずべき事項」で「発災以降発生した瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を2013年3月末までにmSv/年未満とすること」を東京電力に求めたのです。
 福島第一原発は今でも敷地境界の空間線量が2.8~9.8mSv/年と高線量で、線量告示を満たせない違法状態にあります。しかし、原子力規制庁は、前回認めたこの明確な事実認定を否定し、「原子炉等規制法関係の法令では事故由来の放射性物質を含んだ基準にはなっていない」と開き直りました。しかし、法令の線量限度から除外できるのは「自然由来と医療被ばくの線量」だけであり、事故由来の放射性物質や放射線量は除外できません。そのため、原子力規制委員会は、原子力規制委員会は、2年前の放射能分析施設設置審査に際し、特例で事故由来の線量を除外する法令改定(科技庁時代の「数量告示」の改定)を行おうとしましたが、放射線審議会に拒否された経緯があります。原子力規制庁担当者はその経緯も法令のその経緯も法令の常識常識も全く知らず、「法令も全く知らず、「法令ででは事故由来の線量は除外では事故由来の線量は除外できる」と主張したのです。きる」と主張したのです。その認識は誤っていると、時間をかけて詳しく説明しても、全く理解できなかったため、「そんな状態でここへ来られては困ります。勉強してきて下さい。」と議論を打ち切らざるを得ませんでした。 (3)年22兆ベクレルを守るとは確約せず
 原子力規制庁がトリチウムの放出について年50マイクロシーベルトを持ち出していることに関して、年22兆ベクレルを守るのか質問しました。 年50マイクロシーベルトを基準とした場合は放出量の制限が年3.7京ベクレルになります。1年間でALPS処理水全量放出を認めるというとんでもないことです。
(2)経産省との交渉
 ALPS処理水を海洋放出しなければならない「3つの理由」に固執するなど、これまでの主張を繰り返す文書回答で、交渉に出席しませんでした。
(3)外務省との交渉
 ALPS処理水は、放出立坑と海底トンネルを介して海洋放出されようとしています。これは、ロンドン条約/議定書で禁止された「その他の人工海洋構築物からの故意の海洋処分」に該当するとの観点から、私たちは、ロンドン条約締約国である日本の国民として、自国の裁量として禁止するよう求めてきました。
外務省は、「何が人工海洋構築物に該当するのか、ロンドン条約締約国の間で共通認識がない。締約国の裁量で決めることはできるが、義務ではない」、「海底トンネルは人工海洋構築物ではない」と主張しました。しかし、その根拠については全く説明できませんでした。
 国民への説明も全くできていないのです。こんな状況で、この春から夏にかけてALPS処理水の海洋放出を開始することなど断じて許されません。
今回の対政府交渉の成果を広く伝え、福島との連帯、太平洋島嶼国・地域との連帯を強め、すべての反対勢力の総力を結集して、福島県漁連との文書確約違反、線量告示等法令違反、ロンドン条約違反で、関係者の理解も得られていない、ALPS処理水の海洋放出をなんとしても止めましょう

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